タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ

これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!

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第19回 名作の予感

前回の更新から、
あっという間に2ヶ月が経ってしまいました。

前回ご案内した上映会のうち、
アテネ・フランセ文化センターで行われた
ピンク映画の上映会『日本映画考vol.1』に行ってきました。
すぐレポせねば、と思いつつ今日に至ってしまってます。
・・・反省。

で、このとき見た
今岡信治監督の最新作 『お弁当』 が、
渋谷のユーロスペースで上映されます!!
一般映画(?)としての上映にあたり、
この映画には3つめのタイトルがつきました。

「お弁当」 改め 『たまもの』 でございます。

11月20日(土)よりレイトショーですので
ぜひぜひ、よろしくどうぞ。
11月29日(月)を除く毎日21時から
12月3日(金)までやってます!

そして、私がこの原稿を書いている
11月18日(木)の今現在、
ユーロスペースでは 『たまもの』公開記念として
今岡監督の初期三部作が上映されています。
周囲の皆さんが揃って誉める
噂の名作 『彗星まち』 が上映されるとありまして、
11月13日(土)に行ってまいりました。

その時の様子や、『彗星まち』 の感想は次回にするとして、
とりあえず、20日からの宣伝も兼ねて
「お弁当」 改め 『たまもの』 の感想を以下に。
ちなみに、これは8月28日(土)に見て
すぐに書いたものであります。
読み返すと、あまりまとまってなくてすいません。
あと、ネタバレしてますので、念のため・・・。

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『お弁当』 2004/66分
(熟女・発情 タマしゃぶり) 

 監督・脚本:いまおかしんじ 
 出演:林由美香 吉岡睦雄 華沢レモン 
  ボーリング場で働く無口な女と
  郵便局員の男の出会いと別れ。
  もはや若くはない女が突き進む狂気の愛を、
  圧倒的な描写力で描き出す。


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この映画は、
今年(平成16年)の2月頃にロケをしてました。
この作品で、ひろしは助監督ではなく、
林由美香さん演じる女性の部屋の飾り付けや
小道具づくりなどを手伝いに行っていたそうです。
銚子は魚がおいしかった、と言って帰ってきました。
感想は、というと
舞台である銚子の、いい具合な寂れっぷりと
「もはや若くはない女」の行き場のない感じに
もはや若くはない女になりつつある私としても
非常に身につまされるものがありましたです。(涙)
銚子には大きな風力発電の風車があって、
(後で調べたら、近くの茨城県波崎町というところでした)
この風車と砂浜の風景が
非常に切なくてよいのですが、
フィルムの粒子の粗い映像によって、
さらに切なく、美しい映像になっていました。
主演の林由美香さんは、
AVにもたくさん出ていらっしゃるので
男性諸氏の方がお詳しいかもしれません。
女優生活ももうかなり長いのに全然おかわりなく、
なんというか、無垢な少女のような方でして。

この映画の中では「無口な女」という役柄で、
ほとんどセリフはないのだけれど
無邪気な表情、コミカルな動き、
パタパタ走る姿や、砂浜で走り回って転んだり
そういうのが全部かわいい。
映画の中では多分すっぴんなので
林由美香さんが持っている「かわいらしさ」の
純度が増しているのかもしれないです。
年上の女性と年下の男の子、という設定から思い描くような
オトナの色香で男子を惑わせるような女性でもなければ
枯れた色気の「スゴミ」で男を縛るような女性でもない。
なんていうか、
かわいらしさの中に男っぽい潔さもあり、
達観したような感じと執着心、
少女っぽさと包み込むような母性、
そういう相反するものを抱えているリアルな女性で
男性より年上という関係性以上に
「もはや若くはない女」を描いているように思えました。

子供の頃思っていたほど、大人になっても
いろんなことが整理できてるわけじゃないけど
昔みたいに単純にもなれない。
大人になるって、やっかいだし、孤独ですね。

ここから先は、ちょっとネタバレですが・・・。
過去の今岡作品では
殺人を犯すってほとんどないんです。
でも、今回は、普通の人がふと人を殺してしまう感覚が
なんとなくわかるような気がして、書いてみた、
と監督自身が言っていました。
自分で思っているよりも
こっち側とあっち側の境界線なんていうのは、
頼りないものなのかもしれないなー。

正直、ラストシーンは違ってもいいかな、と思ったけど
それでも、今岡さんが考えていたであろう前向きさや
いつも言っている「救いのある感じ」っていうのは、
伝わってきたように思います。

ひょっとして、
・・・名作の予感?

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(ここからは11月18日に書いてます)

今まで見たピンク映画の中で
林由美香さんのことはしょっちゅう見てるはずなんだけど
こんなに、しっかり、「芝居」が求められるような役を
演じている姿を見たことがなかったので
かわいらしさ、ステキさ、女優としての底力みたいなものを
わたしは全然知らなかったんだなー、と思いました。
生意気ですが
いろんな監督さんに女優として愛されて
長くやってらっしゃる理由みたいなものが
とてもよくわかる気がしました。

上では、リアルな女性、なんて書いてますが
これって林由美香さんだからできた
キャラクターなのかもしれないな、
と、時間が経ってみた今は、思います。
ちなみに、
11月13日に『彗星まち』の舞台挨拶にいらした
本物の林由美香さんは、細くて、キレイで
スクリーンで見るよりもずーっと色っぽかったです!
それから、これは8月の時も11月の時も
聞いたことなんですが、
この映画はピンク映画でありながら
絡みのシーンは、なんと全部本番だそうです。

「前バリはピンク映画の良心だ」と言ったのは
田尻祐司監督だそうですが、
良心かどうかはわからないけど、
少なくとも 「本番ではない」 ところに
芝居の持つ凄さみたいなものを感じていた私としては、
やっぱり、ちょっと驚きでした。
本番だったからこそ映った何か、
本番でなければ映らなかったはずの何かがあったのか、
あったとしたらどんなものだったのか、
私にはよくわからなかった・・・。

ってことで、私も
もう一回見に行ってみようかなと思います。
みなさんも、ぜひ、
名作の誕生を目撃しちゃってください!





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