タイトル■もう鳥しか愛せない
書き手 ■タッキー

鳥大好き人間(♀)による、とり日記。
本人いわく「鳥に対する熱すぎて
誰にも理解できないような想い」
を綴ってくれます。

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第2羽「うちの庭の餌付け日記(その1)〜鳥が来た!?〜」

うちの庭には
ときどき鳥がやってきます。
というか、正確にはうちの庭の前の庭、
ようするに隣の家の庭ですが
まあうちの庭のようなもんでしょう。

…しかし、わたしは嫉妬します。
となりの庭ばかりずるい!
うちだって来てほしいのに!
隣の人より絶対わたしのほうが鳥を好きなのに!と。
でもうちの庭は狭く、
畳にすれば3畳くらいです。
鳥だってべつに、来たくもないでしょう。
そんな面白くもない庭に。
それにくらべて隣の庭は、木がたくさん植えてあり
広さもうちの庭の7倍はあります。
そりゃあそっちのがいいでしょう。どう考えても。
うちは鉢植えしかないし。
しかも隣は3階建ての豪邸です。
それに比べてうちは平家です。
まあそれは関係ないですが。

そこで考えました。
「エサで釣ろう…」と。
言い方はイヤらしいですが
いってみれば「餌付け」です!

隣の庭にやってくる鳥の種類は
「メジロ」「ヒヨドリ」「スズメ」「シジュウカラ」の、
今のところ4種類です。
わたしはとりあえず試しに
餌付けの定番、ミカンを置いてみました。
メジロ狙いです。
スズメやシジュウカラはミカンは食べません。

包丁で半分に切って、
なるべくメジロの目につきやすそうな
高い場所に置いてみました。
でも数日はメジロの来た形跡がありませんでした。
ところが何日かたったある日、
見ると、ミカンに可愛い小さなクチバシのあとが
ついているではありませんか!
わたしは確信しました!
「このクチバシの小ささからいって絶対メジロだ!」と。
なんて愛らしいクチバシのあと!
わたしは、わたしのミカンに
メジロがとまって食べてる所を想像して
胸がいっぱいになりました。

しかしその翌日、
今度はミカンにでっかいクチバシのあとが
ついているではありませんか!
そのクチバシのでっかさから言って
絶対ヒヨドリです…。
「ヒヨドリめ…。これはメジロのミカンなのに!」
何だかヒヨドリに横取りされたみたいで
ちょっとムカッときました。
ヒヨドリにはどうも愛情が沸かないのです。
なんだかギャーギャーうるさいし
綺麗でもないし、でっかいし。
ミカンに「メジロ用!」とフダを付けようかと思いました。
でもヒヨドリは読めないでしょう。
読めたところで無視でしょう。

そしてそれからも毎日ミカンには
小さいクチバシの跡と
でっかいクチバシの跡がついていました。
相変わらずヒヨドリの横取りは続いたのです。

そんなある日、
ミカンの周辺にいくつかのフンを見つけました。
小指の先くらいある、でっかいフン!
大きさからいって、絶対ヒヨドリのフンです!
「ヒヨドリめ!フンまでしていって!憎たらしい!」
と憎悪を感じつつ、掃除をしようとすると
なんだかフンが面白いことに気づいたのです。
植物の種が丸ごと入っていたり、
妙に紫がかったものがあったり…。
「へー……。ヒヨドリって木の実を丸飲みするんだぁ…」
「ああ、このヒヨドリはなんか紫色の実をたべたんだな!」
「こうやって鳥が種を遠くに運んでるんだなあ…」
などと、そんなことを思ったら
なんだかジーンときてしまい、
ついさっきまで汚いと思っていたフンが
愛おしく思えてきたのです。
考えてみたら、鳥の体を通りぬけて出てきたフンです。
愛おしいではないですか!
いいなあ!
わたしも鳥の体を通りぬけてみたい!

そしてその日からわたしの中の
ヒヨドリを憎む気持ちはきれいさっぱり消えました。
私は心の中であやまりました。
ヒヨドリごめん。
同じ鳥なのにね。
ちょっとギャーギャーうるさかったり
見た目に地味だったり
バクバク食べたり
珍しくないからといって嫌ったりして。
これからは君も愛すよ。

そしてその日からわたしは
「ヒヨドリ用ミカン」として
バラしたミカンを器に盛って置いています。
ヒヨドリはクチバシも大きいから、
こんなの丸飲みです。(たぶん)
このほうが食べごたえもあるでしょう。
実際庭に出すと、
見にいくたびにどんどん減っていて
一日で確実に器はからっぽになります。
ヒヨドリも大喜びのようです。

しかし問題がひとつあります。
鳥がきて食べている姿を
まだ一度も私が目撃していないことです。
……。
いくらクチバシの跡があるとはいえ
本当に鳥なんでしょうか?
ぜんぶ私の思い込みなのでは?
実は鳥ではないのでは?
…だったら、何?
小さな不安を抱えつつも、
ミカンを設置する日々はつづきました。

つづく。






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