タイトル■特集:∀〜新しい夜明ケ〜
書き手 ■谷田俊太郎

1999年春から2000年にかけての約1年間、
「∀ガンダム」というアニメーション作品が
ひっそりと放送された。それは「まったくガ
ンダムらしくない、まったく新しいガンダム」
だった。我々はかつてない感動を味わった。

そして今年2002年、待望の映画化!2月9日
から劇場版∀ガンダム「地球光」「月光蝶」と
いう2本の映画が同時公開される。

だが一般的にはあまり知られていないこの作品。
正直、観客動員が非常に心配…。ということも
あり、我々は勝手に立ち上がったのだった!
「一人でもいい!この機会に多くの人に見てほ
しい!」そんな願いを込めて。

ちなみに「∀」は「ターンエー」と読みます。

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<公開直前企画>

映画版を見る前にTV版を見るべきか?
〜ガンダムと小沢健二の相似性〜

「∀ガンダム」は「LIFE」だった!

いよいよ明日公開です!
映画「∀ガンダム 地球光/月光蝶」!

この2〜3週間
少しでもこの映画を盛り上げようと
暴走気味に特集を組んできた我々も
あとはもう明日を待つばかりです。

さて、公開前日となった今日
何を書こうかなと思っていたんですが
昨夜、友達S(♀)からのメールに
こんな質問が書いてあったので
それに答える形で
話を始めたいと思います。

***

そうそう、ガンダムは、
実は私はハマらなかったクチなんですが
(一番最初のヤツは通しで観ましたけども)
今度の映画はみたくなりました。

昔のガンダムのビデオを借りてきて見ようと思うのですが
全部を見るのって、けっこうタイヘンですよね?
そこで質問。
∀のビデオだけを見ても楽しめるものですか?
映画を観る前に、やっぱ観といた方がいいかなと。
それとも順を追って、すべてを観るのがベスト?

***

えーと、まず
昔のガンダムを見なくちゃ
わからないということは
全然ありません。

ストーリー的に
まったく無関係とはいえないんですが
「昔、ガンダムってあったなぁ」
という認識があればもう十分。

たとえば今月、
小沢健二のニューアルバムが
出ますよね?

それを聴く時に
フリッパーズギターまで
遡らないと聴けないか?
っていうと
答はノーでしょ?

まだどんな音なのか
聴いてないのでわからないけど
どう考えてもフリッパーズの
影も形もない音楽だと思うんですよね。

だから
小沢健二がそもそもは
フリッパーズギターだった
…なんて認識すらなく
聴いても
十分楽しめると思うんです。

ただ、小沢健二は
元フリッパーズギターのメンバーで、
最初はネオアコ路線で
毒舌家で皮肉屋でオシャレさん、
けど「ヘッド博士」で一転、
オリーブ少女を置いてけぼりにして
ダークネス&ヘビーネスを極め、
突然解散。
ソロになったら過去をすべて否定して
“王子様オザケン”に変身、
ハッピネスの伝導者になって紅白にまで出場!
そして数年の沈黙を経て、復活!

…というストーリーを知っていると
より深く聴けるってのは
あると思うんですよね。

小沢健二に限らず
アーティストの変遷も含めて
作品を楽しむってことはあると思うので
そういう意味では
昔のガンダムシリーズを見ておくと
より深く味わえるとは思うんですけど、
でも今から全部見るのは
どう考えても不可能だし、
実際ストーリー的には
ほぼ関係ないので
見なくて大丈夫。

たとえついでに
小沢健二と富野監督の作品を強引に符合させると

●1stや「カメラトーク」に当たるのが、最初のガンダム、
 それから「Zガンダム」や「逆襲のシャア」といった直接の続編。
●「ヘッド博士」は「Vガンダム」。(フリッパーズ殺しとガンダム殺しつながり)
●「犬」が、「ブレンパワード」(ガンダムじゃないですが、富野監督の新境地。作風的にも近い)
●そして「LIFE」が「∀」になると思います。

※「ヘッド博士」=「ヘッド博士の世界塔」
 「犬」=「犬は吠えるがキャラバンは進む」

 
うっ、フリッパーズとガンダムを知らない人には
全然わからんたとえだな〜
まあいいや、続けよう!

だからフリッパーズが好きだった人は、
まだ内省的だった「犬」までは許容できても
「LIFE」以降の完全ポジティブ路線(?)
「ラブリー」や「痛快ウキウキ通り」とかになると
「ゲッ!なんじゃこりゃ〜!ついていけん!」
と去っていきましたよね。

昔のガンダムと「∀」の関係は
作風的にも、ファンとの関係という意味でも
この構図によく似ています。

書きながら気づいたんですけど、
そっくりですよぉ〜!

ガンダム(富野監督)と小沢健二は
作風の流れや、向っていくベクトルが
実に似ている!

もっとも、ものを深く考えている人間は
時代時代で同じような方向に
思考が進むのかもしれませんが。

ですから、ニヒリズムに決別し
生きる喜びの表現に向かった
希望の作品ということで
「∀」は、まさに「LIFE」ですよ〜!

(時代性を考えると「LIFE」より
 新作の方にもっと似ているかもしれませんが
 まだ聴いてないので、とりあえず)

このたとえ
伝わるかなぁ
伝わるといいなぁ

ただ混乱を招いただけだったらすいません。
忘れてください。

映画はTVシリーズのベスト盤!

で、もうひとつの質問

「∀」のTV版ビデオを
事前に見た方がいいかどうか?

うーん、この質問は難しい…。

というのも、映画は
基本的にはTVのダイジェスト版に
なっていると思うので
どっちとも言えないんですよね〜。

いきなり映画を見た方が
もしかしたら楽しめるかもしれません。

けれどTVを見た方が
絶対に深く楽しむことはできる。

実際、僕もまだ見てないので
TV版のどのへんが映画になっているのかが
わかんないんですよ。

単純に時間的な意味でいうと
TV版「∀」が全50曲のアルバムだったすると
映画版は曲を半分以下に絞って
メドレーにしたリミックス・ベスト盤
ではないかと想像してます

ベスト盤だから、
いい曲を集めてるはずなんですが
必ずしも自分の好きな路線の曲を
選んでくれてるかはわかりません。

もし僕がバラード好きだったとして
でもベスト版はロックンロール調の曲ばかりを
集めたものだったら「うーん、ちょっと違う」
となるじゃないですか?

TV版∀は実に様々な物語を含んでいたので。

そういう意味で
僕も正直、見るのが怖いという
気持ちもあったりするんですが、
(好きな部分と、そうでもない部分があったので)
結論を言うと、
TV版も最初に見ておかなくて大丈夫でしょう。

映画を見て
もしも気に入ったのなら
その後に、TV版を見て欲しいなと思います。
映画には出てこなかった
いい曲(話)がたくさんあると思うので。

ただ、基本的に
富野監督の作品は
最初になじむのに時間がかかります。

というのは
耳なれない言葉が
あまり説明もなくどんどん飛び交い
「これって人名?国の名前?ロボの名前?」
と、とまどってるうちに
ストーリーがどんどん進んでいってしまう、
ということがよくあるからです。

TVなら次の放映までの間に
ビデオを巻き戻して予習復習すれば
なんとかついていけるのですが
映画となるとそうはいきません。

しかも映画版「∀」は話によると
むちゃむちゃ早いスピードで
物語が進んでいくらしいです。
(TVはやたらのんびりしてましたが)

そのへん初めて見る人でも
本当に大丈夫なのかなぁ…と
煽った手前、心配でもあるんですが、
もともと「∀」は
そんなにわかりにくい話ではないので
たぶん大丈夫でしょう。

…そう願ってます。

でも少々心配なので
ごく簡単に説明しておきます。
余計なお世話だったら、ごめんなさい。

人類が宇宙に移民するようになり
ガンダムやザクがスペースコロニーを舞台に
何度も戦争を繰り返していた時代があった…。
けれどそれは大昔のお話。

「∀」の舞台は、もっとはるかな未来。
なぜか産業革命まっただ中の地球。
地球の人々は、人類が昔、月に行けたことさえ忘れている。
ましてや月に移り住んだ人達がいることなんて。
そこへ、地球帰還を求めて
月の軍隊が地球に降りてくる…。

この基本設定さえ
わかっていればスムーズに物語に
入っていけると思います。

サイマル・ロードショーにご注意!

で、映画を見に行く際の
注意事項なんですが、
今回「∀」は、「サイマル・ロードショー」
という変わった方式で公開されます。

前編と後編を日替わりで上映するのです。

火・木・土が、第1部「地球光」
月・水・金・日が、第2部「月光蝶」

くれぐれも順番を間違えないように
ご注意くださいませ。

すっかり長くなってしまいました。

最後に一言だけ。

去年の9.11テロ事件を筆頭に
今回の雪印事件もそうですし、
それ以前の狂牛病騒ぎや、
突然の小泉バッシングにせよ
今、何かを信じることができにくい時代に
なってきていると感じます。

オウムなどカルトの愚行や
イスラム原理主義者のテロによって
本来、人が安心して生きるために
あったはずの宗教も不信の対象です。

僕らは何を信じればいいのか?
どう生きていっていいのか?
どこへ向っていくべきなのか?

「∀ガンダム」はそんな時代に、
人が安心して生きていくために必要なことは何か?
を問いかけた、
“願い”のような物語だと
僕は思ってます。

まあ、これは個人的意見ですので
それぞれの見方で
楽しんでもらえばいいと思いますが。

ともかく、いよいよ明日。

僕もドキドキしながら
楽しみにしてます。






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