タイトル■雪と先生 〜ある豪雪の村より〜
書き手 ■市川先生

市川先生は、信州の山奥にある小学校に勤務して
います。とんでもなく雪が降るこの村。そんな豪
雪地帯での生活とは一体どんなものなのでしょう?
このコラムでは、異次元空間のような雪国におけ
る先生達の活躍を中心に、雪と暮らす人々の様子
を伝えてもらいます。では、いざ豪雪の世界へ!


>これまでの「雪と先生」




さんにんめ ● 雪国の教材を「開拓する」教師たち(Vol.2)

案の定、
つるべ先生、山おくの村中学校1年目の
クロスカントリースキーの学習は
困難を極めた。

まず、最大の課題とされていた「圧雪」。
つるべ先生はアルペンスキーを持ち出した。

注:「アルペンスキー」→スキーと一言で申しますが、その発祥はアルプス山麓
と北欧に分かれます。簡単に言うと(というか、私も簡単にしか知らない!)
「山下り」を主目的としているスキーがアルペンスキー、「山歩き」を主目的と
しているスキーがノルディックスキーと区別されています。「苗場、志賀に行こ
う!」と言ってゲレンデで楽しまれるのはアルペンスキーです。対して荻原健
司、原田雅彦らがやっているのがノルディックスキーです。ノルディックスキー
をしたことがあるという人を探すのが大変なほど日本ではマイナー路線を歩んで
きたのですが、最近、「歩くスキー」20分で軽いウオーキング、ジョギングに
相当する有酸素運動になるということで、クロスカントリースキーが健康保持目
的でクローズアップされています。

社会科も体育もない空き時間は
基本的に次の時間の準備をするはずのつるべ先生。
そのほとんどを
雪踏みの時間に割いた。

1時間踏み続けても
いいところ100mから200mが
精一杯であった。

時には
一緒に体育の授業を持っていた
美術科のノッポビューティ女史先生
(注:読んでの如く。しかし本人見たら怒られるんだろうなぁ…)
も一緒に踏んでくれたのだが、
その作業効率は
たかがしれていた。

「ああ、あれが欲しい…」
…背丈ほどにも積もった雪原に
脛まで埋まりながら
つるべ先生は
いつも
思っていた…。

さらに大きな課題があった。
クラシカル走法で指導をするということで

注:「クラシカル走法」→クロスカントリースキー競技における走法には、クラ
シカルとフリー(スケーティング)の2種類があります。前者は基本的に板を揃
えた状態の時だけ滑らせてよいという昔ながらの走法。対して後者は何でもあり
の走法です。ちなみに荻原健司で有名なノルディック複合のクロスカントリース
キーではフリー走法となっています。違いがよく分からない方は五輪中継でご覧
ください。(期限付きですが)

「溝」を掘らないといけない!
ということであった。
こればかりは困った。
踏みしめた雪を
さらに削らねばならない…。
さすがのつるべ先生も、
こればかりは諦めた。

授業のはじめに
中1〜3年全員(といっても40人程度ですが)で
1列になって踏みしめることで
「なんちゃって溝」をつくった。

しかし、こんな溝で
しっかりとしたクラシカル走法が
習得することは非常に困難である。
2.3人歩けば
溝は溝でなくなってしまうのだから。

「ああ、あれが欲しい…」
…1時間だけの授業で
お見事にフラットになり
崩れてしまった「なんちゃって溝」を見ながら
つるべ先生は
いつも
思っていた。

それでも生徒たちは
例年になく見事?に整備された
校庭で
クロスカントリースキーの学習を
エンジョイしたそうだ。

「となりの雪だらけ村には、
 素晴らしい施設があって、
 そこで練習し、
 全国に名を轟かせる選手もいるというのに…」

つるべ先生の
様々なもどかしい気持ちが
爆発?したのは、
クロスカントリースキー学習の
反省を検討した職員会だった。

▲スノーモービルを購入して欲しい
▲コースカッターを購入して欲しい

スノーモービル、新品で安いものでも100数十万円、
コースカッター、 〃      100万円前後

…は、するものである。

とんでもない備品の必要性を
訴えてみたつるべ先生であったが、、、、。

いったい、
どうなってしまうのだろうか!!??

(to be continued...)





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