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大きな船を降りて、小さなボートに乗り換える




個人のホームページではなく
ウェブマガジンを作ろうと思った動機。
それは同時多発的に心の内外で
起きた様々なコトが影響しあって…
ということになるんだけど、
ひとつハッキリ言えるのは
会社を辞めたことが、
大きなキッカケなんだろうなぁ。

というわけで今回は
そのあたりの話から始めてみます。

今年の3月、僕は会社を辞めた。
ある週刊情報誌の編集部に
約10年勤めていたのだ。
21才でアルバイトとして入社し、
その後、契約社員、正社員と
雇用形態は変わったが、同じ本を作り続けた。
仕事は面白かった。

では、なんで辞めたのか?
半年以上経過した今、
実はあまりよく思い出せない。
本当に記憶力には自信がない。
でも、ひとつ確実に言えるのは、
「僕は作る仕事をしたい“だけ”だった」
ということだった。

他の会社のことは
よくわからないんだけど、
僕のいた会社では、
30才をすぎたくらいになると
そこそこ偉くなることが通例だった。
僕にせよ10年近くもいたたため
現場のリーダー的存在になっていた。
副編集長にリーチといった立場である。

で、偉くなってしまうと
現場の仕事は直接タッチしにくくなり、
中間管理職的な任務が主になってくる。
…それがイヤだった。
一言でまとめてしまうと
そういうことだ。
子供じみてるかもしれないけど。

とはいえ、すでにある程度、
そういう役割も与えられていたので、
実際にやってもいた。
けど、それをずっと続けていくことは
気が重かった。
僕は「作ること」には興味があったし、
その雑誌自体に愛着もあったけど、
「会社」には全然興味がなかった。

また「アウトソーシング」の波が
やってきたことも
理由のひとつだったと思う。
景気が悪くなり、経費削減!効率重視!
と盛んに言われるようになったのだ。
編集記事も編集部員が直接作るよりも、
できるだけ外部の人に任せてしまおう!
という波である。

なんだかそっちの方が
金はかかりそうな気がするのだが、
固定費の変動費化の方が
経費削減になるという話だった。

いいものを作ろう、
とすれば当然時間がかかる。
今までにないものを作ろう!
なんて意気込むとブレストだけでも
相当な時間が必要になったりもする。
だからそれまで、
徹夜など当たり前だった。
しかし、そうなると
残業代が高くつく。
そりゃいかん!ということだ。

残業時間も制限され、
効率よく作れる記事が求められた。
「クリエイティブって
 そういうもんじゃないんじゃないか?」
とは思ったが、
実際、景気も悪かったし、
何よりもその雑誌は
広告収入がメインの媒体だった。
金ばかりかかる
編集記事なんてものはなくていい!
という意見を何年間も
他部署から言われ続けていたので、
「なくならないだけマシか」
と納得せざるを得なかった。

だから、僕も
それを実行するためのプランを考え、
後輩たちに伝える役割を担った。

会社では上司の意見は絶対である。
反論したいことがあれば
するけれど、それでも
最終的な上司の決定には従うべきだ。
だから、上司に言われたことは
自分なりに納得した上で、
自分の言葉に置き変えて
後輩達にも伝えようと考えていた。

自分では納得できないことでも、
「会社がこう言ってるからさ、
 仕方ないんだ」
という言い方ではなく、
「これこれこうした方が
 こういう点がよくなるので、
 そうしようぜ」
という伝え方にする、
会社の動機を
自分の動機に変換するというか、
それが自分なりのこだわりだった。

たとえ上司から納得できない
オーダーがあったとしても、
なんとか面白い記事に
作りあげてみせよう!
それが編集者としての自分の課題だ!
とも思っていた。
そしてできるだけ
楽しそうにふるまってみせることを
心がけた。

しかし、会社の変化とともに
そのポリシーを
守っていく自信がなくなっていった。
船にたとえると、
会社が進もうとしている航路と
自分が進んでいきたい航路が
大きく違ってきてしまった、
ということだろうか。

会社側のオーダーを、
自分の言葉
自分の動機
に変換することが難しくなってきたのだ。
ならば、僕はその船を降りるしかない。

それでも、
その雑誌自体は好きだったので、
僕がアウトソーシングを
「される側」になればすむことだ。
そうすれば作ることにも専念できる。
納得できない仕事ならば
断わることもできる。

大きな船を降りて、
小さなボートに乗り換えよう。
それなら一緒に進むことも
別の方向に進むことも自由になる。

そんなわけで僕は辞めることを決心した。

うーん、しかし、
こういう書き方をすると
「会社に不満があったから辞めた」
というだけの伝わり方に
なってしまうかもしれない。

それはちょっと違うんだよなぁ。
「自分の今後が不安になったから」
というのもデカい理由だったんだよな。
えーとそのへんはまた次回にします。

ちょっと個人的すぎる話に
なってしまってますが
どうもこのへんから書いていかないと
自分でもうまく整理ができないのです。
ご勘弁を。

ではまたよろしかったら次回に。
               (つづく)


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