」」」 長い前書き<O4> 」」」
個人/孤独/そしてインターネット


ちとブルーです。
朝から天気がさえなかったから
(僕は天気に異常なほど気分が左右されやすい)
でもありますが、
前回書いた、会社を辞めた理由を
読み直したら
「なんかつまんねー」
と思ってしまったからなんです。

電話代と貴重な数分間をかけて
読んでくれた人に正直スマン!
という心境なのです。

この自己嫌悪感の理由を
自分なりに分析してみました。
(1)個人的すぎる単なる告白文に終始しているから
(2)会社批判的な内容になってしまったから
(3)ユーモアをまじえた楽しい文章ではなかったから
(4)ウェブマガジンにあまり関係なそうな文章だったから
(5)今ではもうあまりリアルな気分の内容ではないから
(5)ってゆーか単純につまらないから

急にフォローするわけではないけど
(2)の会社に関しては、ああは書いたものの
今では感謝の気持ちしかありません、いやホント。
ただのド素人の若僧を雇ってくれて
実にたくさんの経験を積ませてくれて
本当にいろいろな人々と知り合わせてくれました。
終盤たしかに窮屈な思いをすることもあったけど、
それは僕が辞めた直接の原因ではありません。

僕が辞めた直接の原因と
今回の自己嫌悪感はつながりがあります。
それからウェブマガジンにも。

僕はまだ
個人的な文章にまだ書き慣れていないのです。
読まれることにも慣れてません。

前回書いたように
僕はある編集部で約10年働いていました。
「◯◯編集部の谷田」として、
モノを考え、シゴトをしてきました。
文章を書くこともありましたが、
あくまで「◯◯編集部の谷田」としてです。
その思考パターンと
文章テクニックさえ身につければ、
これは結構ラクです。
自分の主観ではなく、媒体的な主観で
意見を書いたりするわけですから、
いわば別人格です。
「個人・谷田」として恥をかいたり、
傷つくようなことは滅多にありません。
だって、それはあくまでも
「◯◯編集部の谷田」が書いたことですから。

でも「シゴト」または「プロ」
として求められていたのは、
そういう「媒体的自我」だったと思います。
個人的な意見、主張が許されるのは
すでに「名前」のある「作家」だけでしょう。

それでも、反則かもしれない
とは思いつつ、
個人的主張も混ぜこんだ記事を
作ることを心がけてもいましたが、
数年前、ある偉い人に
「そういうことは、あなたが北野武
 のようになってから、やってください」
と言われました。
悔しいけど、それは正しい意見だったのでしょう。

そんなこともあり、
「プロ」であることを意識して
仕事を続けてきたわけですが、
それを「ヤベーな」と
思うようにもなってきました。

30才もすぎて
「いよいよ人生、本場所か?」
とか思った時に、
「◯◯編集部の谷田」は
それなりには育ってきたものの
「個人・谷田」は
全然育ってないことに気づいたんです。

「◯◯編集部」という肩書きを
外して考えた時に
個人としての感性や主張、
それを表現するためのスキル、
社会的存在意義…などなど
「個人・谷田」はカラッポの
状態にように思えました。

いずれにせよ、いつかは会社を辞めて
フリーになるつもりだったし、
また、もしいたくても
リストラされる可能性もありました。
となると、早く「個人・谷田」を
なんとかしないとマズイぞ…!
そう焦るようになってきたのです。
これが辞めた直接の理由です。

ニュアンス、伝わりますか?

説明不足な気もするけど、話を続けます。

会社を辞めてからは
素晴らしい毎日でした。
日ざしはあたたかく、風は気持ちいい、
オフィスビルにいると
まったく感じられない春を満喫できました。

大音量で音楽を聴き
平日の昼間に映画を見にいき、
時間ができるとプールで泳ぐ。
仕事もしてはいたのですが、
会議や雑務がなくなっただけで、
こんなにヒマになるんだ
と感動したもんです。

でもそんな快適な生活を続けているうちに
やっぱりこう思うわけです。

「で、俺はこれから何をしていこう?」

いきあたりばったり人間の僕は
辞めてから何をするかは
ろくすっぽ考えていなかったのです。

「私、何ができるの?」
「何をしたらいいの?」

「気狂いピエロ」のアンナ・カリーナ状態です。

僕は小説を書こうと思いました。
いや、正確には「フィクション」を
作りたいだけだったんですが、
とりあえずすぐに出来そうな方法が
「小説」だっただけです。
「個人・谷田」として
書きたいテーマもありました。

実際にぼちぼち書き始めてもいました。
が、しばらくするとこう思うわけです。

「で、書いてどうするの?」

小説家になりたいわけでもないし、
賞に応募するほど本気モードなわけでもない。
書いたものを友人に見せたりはしたかったけど、
どこの馬の骨ともわからない人間の小説を
本にしてくれるほど酔狂な出版社はありません。
コピーして渡す? 迷惑なだけでしょう。

そんな風に考え始めると
筆(正しくはキーボード)は進まなくなり
構想だけは膨らんでいくものの、
実際に書くのは滞ってきました。

また、もうひとつ
この時期に感じたことは
「孤独」です。

会社にいる頃は、
常に誰かしらが周りにいました。
それが煩わしいこともあるけれど、
話したいことがある時に
誰かがすぐそばにいるのはいいものです。
飲みに行くのだってアポなしで行けます。
同じ船に乗っているわけですから、
意見は違えど、航路は同じ。
共通の話題があります。

フリーになったら
それらはすべてなくなります。
小さなボートには
僕しか乗っていないのです。

以前に先輩のフリーライターに
こんな質問をしたことがありました。
「フリーって、どんなもんですか?」
その先輩はポツリとこう答えました。
「孤独ですよ」
その気持ちが、しみじみ
わかるようになりました。

僕は結構ヒマなので
友人を飲みに誘ったりもしましたが、
みんな忙しそうで、
なかなかつきあってもらえません。
メールを送っても
なかなか返事が来ず、
しょんぼりしたりします。
でも、まあ当然のことですね。

そうなると当然
自分と向き合うしかありません。
でもこれはこれでいい機会でした。
「自分は何をしたいのか?」
会社にいる頃は、忙しさにかまけて
サボっていた大事な宿題に
取り組むことになったのですから。

そして「半分ひきこもり状態」になった
僕は当然のように毎日
インターネットに向うようになりました。
ありがちすぎて気がひける展開ですが、
事実なのでしょうがない。

あんまりまとまってないですけど、
ウェブマガジンの発想に至るまで
もう少しのところへ辿りつきました。
つづきはまた次回にします。
            
…反省をしたにもかかわらず
今回も更に個人的すぎる文章だったなぁ。
しかも長いよな〜。
もうみんなウンザリしてしまったかしらん?
…とすぐ心配になる俺です。

しかし、個人的すぎる文を書けるのが
そもそもインターネットのよさなのだ!
お金を取ってるわけじゃないから
これを書いてる俺はアマチュアなのだ!
書きたいことを書くために
こんなことを始めたのだから、
これでいいのだ!
誰も読んでなくたって、
気にするこたーねーよ! なっ?
ゆけゆけ俺!ドンとゆけ!!
…とすぐコロッと発想転換もできる俺です。

逆ギレ発想法で
ブルーな気持ちは消えてしまいました。
天気も回復しましたね。
ではまた次回。

            (つづく)

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