」」」 長い前書き<O5> 」」」
置いておくという発想


今年の8月11日に
「リングス10周年記念大会」
というものがありました。
これがホームページを作ろうと思った
最初のキッカケでした。

「リングス」というのは
前田日明が主宰する格闘技団体です。
僕にとって最も思い入れのある団体で、
ロシア・エカテリンブルグまで試合を
見に行ったこともあるほどです。

しかし残念ながら
この10周年記念大会が始まる前、
ファンはまったく盛り上がってませんでした。
この頃、リングスが求心力を失っていたことや、
発表されたカードが期待外れだったこと、
またメディアでもあまり宣伝されていなかったこと、
いい選手を次々と「プライド」に引き抜かれたこと、
などなどいくつもの要因が重なり、
僕を含めて、いつも一緒に見に行く
仲間の間でさえ、話題にもならず、
「まあファンの義務としていかなくちゃね…」
という状態だったのです。

で、ある時、
僕はヒマにまかせて、
この大会のことをいろいろ考えていたのですが、
今まで見えてなかった、
この大会の意義や各試合の見どころ、
ファンとしての心を鼓舞する方法などが
次々とひらめいてきたのです。
「よし、これをみんなに伝えられれば、
 一緒に盛り上がることができる!
 みんなの冷めた気持ちに火をつけるんだ!
 ファイヤー・ウォーク・ウィズ・ミー!!」
すっかり興奮してきたわけなんですが、
ではどうやって伝えるのか?
それが問題でした。

リングス仲間は5〜6人います。
ひとりひとりに電話するのも面倒くさいし、
そもそも忙しい最中にそんな電話があっても、
迷惑がられるだけでしょう。
メールを送るという方法もありますが、
突然、やたら一人で盛り上がったメールが
届いても、引かれるだけ。
「あ〜あ、自分のメディアがあればなぁ…」
そう思いました。

そこで思いついたのが
ホームページでした。

ホームページに自分の考えを
アップしておけば、
それぞれ時間のある時にでも
読んでもらえばいいわけです。
考えを置いておくだけですから、
押しつけにもならない。
これなら仲間以外の人にも
伝えることもできるかもしれない。

この方法がベストだ。
そう思いました。
が、思っただけで日々はすぎてしまい、
10周年記念大会も終わってしまいました。
(大会自体も予想を下回る散々な結果に…)

しかし、
自分の考えをどこかに置いておき、
誰かに読んでもらえるようにする、
そういう場や機会を持ちたい、
という気持ちは強く残ったのです。

ともあれホームページを作ってみよう。
そう考え始め、まずは手っ取り早く、
プロレスに関するホームページを
作ろうかと思ったわけですが、
よく考えれば、
さすがに僕も年がら年中
プロレスのことばかり
考えているわけではありません。
(比較的その分量は多いにせよ)
またそれではプロレスファンしか
見てくれないでしょう。
僕の理想は、ファン以外の人にも
興味を持ってもらうことでした。
それに、プロレス以外にも
書きたいことはいろいろ浮かんできそうです。

では、プロレスに限らず
いろんな趣味を反映したものにするか?
そうも思ったのですが、
考えてみると、たいがいの
個人のホームページというのは
そういうものだけれど、
僕自身、友達のもの以外は
あまり見なかったりします。

どうせやるからには
いろいろなコンテンツがあって
自己満足だけに終わらない
多くの人に見てもらえるものにしたい。
…野望はだんだん
膨らんできます。

んじゃ、どういうものが理想か?

様々な人が作り手として参加する、
ひとつのジャンルにとらわれない、
雑誌みたいなもの…
それがベストな気がしました。

そこで浮かんできたのは
自分が好きで毎日見ている
「ほぼ日刊イトイ新聞」でした。

「ほぼ日」は
糸井さん個人の魅力だけでなく
多くの人が参加している、
その「かたまり」としての面白さ、
「にぎわい」の楽しさが魅力です。
またタダだけど作りはプロのスタンス。
だからこそ、とんでもない人数のファンが
毎日見ているわけでしょう。

これだ!と思いました。

俺個人のホームページではなく、
多くの人が参加できる
ウェブマガジンにしよう。

会社を辞めて以来、
フリーの編集・ライターということで
仕事はしていたものの、
古巣以外に仕事のフィールドを広げよう
という意欲もあまりなく、
ライターとして名前を売っていこう、
という気持ちもなぜか沸かず、
ぜひ仕事したいと思うメディアも
まだ見つけられませんでした。
今後何をしていくかという目標が
見つからない時期だったのです。

編集経験者としては
企画作りから参加できない
“書く”だけのシゴトは
もうひとつエクスタシーが感じられず、
また“編集”するだけの仕事にも
物足りなさ、つまらなさを
感じるようになっていました。
何より媒体を持ってない編集者には
決定権がないので、実にひ弱な存在です。

そんな様々なジレンマを解消するのが
ウェブマガジンという発想でした。

自分の媒体が持てれば
決定権は自分にあります。
自分が面白いと思ったことを
遠慮せずにできるわけです。
編集者としても
ライターとしても
これは面白い。

紙媒体ではお金もかかりすぎるし、
リスクも大きい。
また買ってもらわなければ
読んでもらえない。
買ってもらうことを目的にすると
保守的になり、
思いきったことがしにくい。
それは今の出版界の現状を見ていると
痛いほどよくわかります。

しかしインターネットなら
印刷代も紙代もかからず、
量も気にしなくてもいい。
タダで作れるし、
タダで読んでもらえる。
タダなら挑戦も失敗も
作り手の思うようにできる。
思いついたことはすぐ実行できるし、
ホカホカの状態でお届けできる。

ひとりだけで仕事するより、
誰かと一緒に何かをしたいな〜
という欲求も満たすこともできる。

考えれば考えるほど
いいことづくめでした。
「これが俺のしたいことだった!」
そう確信しました。

遅れてきたIT革命?

問題は、お金にならないことと
参加してくれる人がいるのかどうか?
この2点でした。

             (つづく)



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