Study on 10.1GHz Amateur OFDM Wireless LAN
(10.1GHzアマチュア無線OFDM LANの実験)
7L1RLL(若鳥)
2004.04.18, Version 2.25
1.Introduction(いきさつ)
デジタルテレビジョン,次世代携帯式電話,54Mbps高速無線LANなどには,
直交周波数分割多重(略称:OFDM,由来:Orthgonal Frequency Division Multiplexing)
が使われ,最大54Mbpsの速度で,かつ,多重経路による影響を軽減している。
おりしも,OFDMを応用した54Mbpsの高速無線LANの規格IEEE 802.11aに適合したチップ集合が米Atheros社から出荷され,それを組み込んだ54Mbps無線カード及びアクセスポイントが日本国内でも販売がはじまった。
その日本国での54Mbps無線LANは,5.15GHz~5.25GHzの帯域に4チャネル屋内使用に限定して許可されている[ARIB STD-T71]。
これら市販の54Mbps無線LAN機材を基に,それに局所周波数4900MHzを混合して,10.1GHzのアマチュア無線帯でOFDMの有効性の実験ができないかと考えた。
2002年7月30日付けで
10.1GHzアマチュア無線帯でのOFDM実験局の免許願い
を
日本国総務省
を提出した。その後,毎月1回,総務省に進捗状況を問い合わせしていたが,2002年11月29日にTSS(株)の保証認定の道を開設したとの連絡を受け,
2002年12月4日に
TSS(株)保証事業部
へ保証認定願いを提出した。
その結果,2002年12月24日付けで,7L1RLL及び7K4OGWの2局に対して,10.125MHz帯でのOFDM(形式記号:18M0F9)の
免許状
が交付された。
これは,アマチュア無線免許申請として日本国で最初のOFDM免許取得例となったので,同好の士のために,申請提出~免許取得までの一部始終をここに公開する。
アマチュア無線のデジタル化,特にアマチュアテレビジョンのデジタル化の推進,更には,計算機とアマチュア無線との融合によって,青少年の科学心を芽生えさせようと努力されている方々の参考になることを願っている。
なお,参考として
簡単な質疑・応答集をまとめておきます。
ここで提示している内容は,画面上部に表示した改版日付現在の状態の版であり,その後の事情によって変更があることを念頭におかれ,もし最新情報が必要ならEmailで
7L1RLL
まで問い合わせいただきたい。
2.Scope of the Studing(実験の目的)
この実験は,次の事項を目標とする。
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多媒体デジタルデータの取り扱いの容易化
文字,静止画(写真,絵画),動画などを対象にして実用水準の高速通信[54Mbps]をアマチュア無線に導入する。
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多重経路の克服
直交周波数分割多重方式[OFDM]をアマチュア無線に導入し,伝播経路での多重反射などの障害の低減を図り,実用性を実験する。
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通信用高集積半導体の応用
54Mbps無線LANに実装されている高集積半導体回路をアマチュア無線にも適用し,機器の低価格化,小形化し,ひいてはアマチュア無線への参入し易さを図る。
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アマチュア無線でのデジタル応用
アマチュア無線のアナログ主体からデジタル主体に脱却する手始めの実験とし,アマチュア無線を魅力あるものに改革していく1例とする。
3.Restrictions of the License(免許の条件)
この“免許申請願い”を総務省で検討する段階において課題となった事項とその解決方法とを次に示す。これらは,私の個人的な感触であり,申請の仕方によっては,変わるかもしれないことを念頭において,読まれたい。
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周波数帯域が18MHz以下
これは,当面の法制上の制約であり,18MHz以下であれば,現行法の範囲で早急に対応できる。ここで申請したOFDMの理論上の占有帯域は16.5625MHz(0.3125MHz * 53波)であり,18MHzの帯域内で使用することができるとした。
電波形式は,“18M0F9”とする。ここで,最初の4文字“18M0”は,帯域の18000KHzの代替表現で,WARC-79で決定された電波形式の帯域の表記方法に則っている。最後の2文字“F9”が周波数変調又は位相変調による混合形式を表す。
参考:このF9の表記は,WARC-79制定から数えて23年も,改定が遅れた日本国アマチュア無線に残る慣例[外国(例:EU諸国)へ運用申請の場合に国際標識への変換を必要とする]表示である。
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秘話性の排斥
この制約は,アマチュア無線業務と商用との一線を分ける条件である。この制約を充足するために,無線LANに組み込まれている暗号化を使用しないこと,及びシステム識別子(SSID)を“AmateurWirelessLAN”と決めて公開する約束をした。
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実験帯域の聴取手段の具備
実験電波発射の前及び途中で,実験に使用する帯域18MHz区間を聴取できることが必要である。この制約は,別途,10GHz帯のオールモード機の免許を取得しており,常時,聴取も交信も可能である。なお,無線LANは,他に電波が聞えれば,電波発射しない仕様になっているので,必す(須)条件ではない。
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識別符号の付与
実験電波発射の前後及び10分間に一度,局識別符号(俗称:呼出し符号)を送出しなければならない。この条件を充足させるために,RLLの申請では3段階の仕様を提示した。すなわち,第1段階:別途免許の10.1GHz機によって手動SSB[J3E],FM[F3E],CW[A1E],モールス音[F2E]を送出する段階,第2段階:手動・自動の混在段階[計算機制御プログラムの開発途上],第3段階:自動的に識別子を付与する段階[例:Amateur_TCP/IPプログラムの開発]である。ただし,識別符号を別の10.1GHz送信機から送出するとしても,帯域18MHzはFMでの900回線分に相当するので,900回の呼出し送出では実現性が低い。そこで,実用的には,中心周波数又は四つのパイロット信号周波数の一つ[例:副チャネル変位番号:7]での識別符号送出をなろう。
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小規模実験局である
技術習得を目的とし,商用を意図しないこと。これは,アマチュア無線局の本来の目的であり,この実験も商用網と競合したり,日本国全土を覆うアマチュア通信網の構築を意図していない。実験局として申請した装置の出力も,基本の無線LANの最大出力が10mW,それを更に混合するので,実際1μW程度の小電力である。
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実験相手局が同じ家屋にいる
通信距離が最大100m内外と想定されるので,実験相手局が家族(又は実験室に出入りできるアマチュア局)であること。これは,同時発射の電波の源を明かすために,LANカード毎に呼出し符号を付与することを求めていると解釈している。そこで,7L1RLLの申請の場合,家族である(7K4OGW)との10.1GHzの共用機として3台の送信機群を申請し,2局同時に免許された。
4.Configulations(実験構成)
4.1.保証認定
TSSへの保証認定願い書の第1ページには,親機1台,子機2台を,既存機との連番の都合で第11送信機,第12送信機及び第13送信機とし,送信機本体が5GHz無線LAN機材,付加装置が10.1GHzへのトランスバータと分類した。
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取り替え,増設,変更するトランシーバ
送信機番号,(7)変更の種別,(8)送信機名称,(9)付加装置
第11送信機, 増設, PCI GW-AP540a,1
第12送信機, 増設, PCI GW-NS540a,1
第13送信機, 増設, PCI GW-NS540a,1
(12)取替え,増設の合計台数 3台
TSSへの保証認定願いの第2ページには,付属(加)装置として,次の諸元を書く。
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名称:(26)自作OFDMトランスバータ
方式・規格
(1)方式:OFDM(BPSK,QPSK,16QAM,64QAM)
(2)占有周波数帯域:16.6MHz
(3)副チャネル数:52(データ:48,パイロット:4)
(4)電波形式: 18M0F9
(5)通信速度:6,9,12,18,24,36,48,54自動切り替え
(6)衝突回避方式:CSMA/CA
組み合わせて使用する送信機番号
(27)第11送信機,第12送信機,第13送信機
4.2.変更申請
申請の機器は親機1台,子機2台で構成し,第11送信機,第12送信機及び第13送信機の増設とした。これらは,すべて自作機扱いである。ただし,54Mbps無線LAN機器群は,すでに,日本国総務省の認可を取得している機種から選び,それぞれの認定番号及び機器識別子(MAC ID)を明記して,本体として申請した。この機器IDは,一般的にプロトコルTCP/IPによるとき,自動的に付与されている。
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第11送信機(親機)
54Mbps無線LANのアクセスポイント機の送受電波を10.1GHzアマチュア帯に周波数変換する。このアクセスポイント機には,市販のPlanex Communications Inc.社のGW-AP540aを使用した。これに4.9GHz局部発振器及び導波管フィルタを組み合わせて,10.1GHzを得ている[詳細:5.参照]。
[次の四つの事項は,(22)工事設計にも記入する。]
定格出力:本体:10mW,付加装置:-30dBm程度
最終半導体:本体:AR5110 1個,付加装置:混合ダイオードSPD221 1個
電圧:本体:3.3V,付加装置:0V(自己バイアス)
送信空中線の形式:GP,八木・宇田,パラボラ
諸元
規格:IEEE 802.11a(ARIB STD-T71)
送信周波数帯:10.080GHz~10.150GHz(全電波形式)
占有帯域:18MHz以下(0.3125MHz x 53 = 16.5625MHz)
変調形式:OFDM(BPSK,QPSK,16QAM,64QAM)
変調速度:6,9,12,18,24,36,48,54Mbps
副搬送波数:52(データ:48,パイロット:4)
副搬送波間隙:0.3125MHz
伝送手順:TCP/IP(AmateurTCP/IP仮称も開発予定)
衝突回避方式:CSMA/CA
不要輻射:局発4.9GHz及びOFDM5.23GHzの第2高調波を主信号先端から-30dB低減している[導波管フィルタによる]。
暗号化:WEPを使用しない。
SSID:AmateurWirelessLANと仮に決める。
参考:54Mbps高速無線LANのアクセスポイント
a) 製造者:米国Planex Communications Inc.
b) 型番:GW-AP540a
c) 日本国認定番号:01WYBA2038[ここは,実機の銘板から写す]
d) MAC ID:0090CC462CD8[ここは,実機の銘板から写す]
e) 製造番号:02BE05691A GW-PK540a F62JR5001001E[ここは,実機の銘板から写す]
f) 計算機接続方法:Ethernet 10/100Base
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第12送信機(第1子機)
54Mbps無線LANのLANカードの送受電波を10.1GHzアマチュア帯に周波数変換する。この無線LANカードには,市販のPlanex Communications Inc.社のGW-NS540aを使用した。これに4.9GHz局部発振器及び導波管フィルタを組み合わせて,10.1GHzを得ている[詳細:5.参照]。
[次の四つの事項は,(22)工事設計にも記入する。]
定格出力:本体:10mW,付加装置:-30dBm程度
最終半導体:本体:AR5110 1個,付加装置:混合ダイオード:SPD221 1個
電圧:本体:3.3V,付加装置:0V(自己バイアス)
送信空中線の形式:GP,八木・宇田,パラボラ
諸元
規格:IEEE 802.11a(ARIB STD-T71)
送信周波数帯:10.080GHz~10.150GHz(全電波形式)
占有帯域:18MHz以下(0.3125MHz x 53 = 16.5625MHz)
変調形式:OFDM(BPSK,QPSK,16QAM,64QAM)
変調速度:6,9,12,18,24,36,48,54Mbps
副搬送波数:52(データ:48,パイロット:4)
副搬送波間隙:0.3125MHz
伝送手順:TCP/IP(AmateurTCP/IP仮称も開発予定)
衝突回避方式:CSMA/CA
不要輻射:局発4.9GHz及びOFDM5.23GHzの第2高調波を主信号先端から-30dB低減している[導波管フィルタによる]。
暗号化:WEPを使用しない。
SSID:AmateurWirelessLANと仮に決める。
参考:54Mbps高速無線LANカード(第12送信機の一部)
a) 製造者:米国Planex Communications Inc.
b) 型番:GW-NS540a
c) 日本国認定番号:01WYBA1029[ここは,個々の実機の銘板から写す]
d) MAC ID:0090CC46263F[ここは,個々の実機の銘板から写す]
e) 製造番号:02BE05691A GW-PK540a F62JR5001001E[ここは,実機の銘板から写す]
f) 計算機接続方法:PCMCIA
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第13送信機(第2子機)
54Mbps無線LANのLANカードの送受電波を10.1GHzアマチュア帯に周波数変換する。この無線LANカードには,市販のPlanex Communications Inc.社のGW-NS540aを使用した。これに4.9GHz局部発振器及び導波管フィルタを組み合わせて,10.1GHzを得ている[詳細5.参照]。
この第2子機は,第1子機の予備又は子機同士の試験のとき,使用する。
[次の四つの事項は,(22)工事設計にも記入する。]
定格出力:本体:10mW,付加装置:-30dBm程度
最終半導体:本体:AR5110 1個,付加装置:混合ダイオード:SPD221 1個
電圧:本体:3.3V,付加装置:0V(自己バイアス)
送信空中線の形式:GP,八木・宇田,パラボラ
諸元
規格:IEEE 802.11a(ARIB STD-T71)
送信周波数帯:10.080GHz~10.150GHz(全電波形式)
占有帯域:18MHz以下(0.3125MHz x 53 = 16.5625MHz)
変調形式:OFDM(BPSK,QPSK,16QAM,64QAM)
変調速度:6,9,12,18,24,36,48,54Mbps
副搬送波数:52(データ:48,パイロット:4)
副搬送波間隙:0.3125MHz
伝送手順:TCP/IP(AmateurTCP/IP仮称も開発予定)
衝突回避方式:CSMA/CA
不要輻射:局発4.9GHz及びOFDM5.23GHzの第2高調波を主信号先端から-30dB低減している[導波管フィルタによる]。
暗号化:WEPを使用しない。
SSID:AmateurWirelessLANと仮に決める。
参考:54Mbps高速無線LANカード
a) 製造者:米国Planex Communications Inc.
b) 型番:GW-NS540a
c) 日本国認定番号:01WYBA1029[ここは,実機の銘板から写す]
d) MAC ID:0090CC461EF7[ここは,実機の銘板から写す]
e) 製造番号:02BE02340 GW-PK540a F61JR5301000E[ここは,実機の銘板から写す]
f) 計算機接続方法:PCMCIA
5.Parts List(試作部品)
5.1.局部発振器
この発振器は,実績のあるマキ電機の5600MHzトランスバータ(UTV5600BIIP)の局部発振器(4480MHz)とBPF(4480MHz)とを基本にして,水晶を61.25MHzに換え,BPFのトリマを調整して4900MHzに合わせたものである。
この局部発振器は,金属箱に入れたところがマキ電機のUTV5600BIIPの量産品と異なる。また,この調整はJH1UGF(槇岡寛幸OM)のご厄介になった。
ここは,PLL方式にしたり,MMICで簡素化したりとアマチュア無線家の改良の題材が山積するが,この実験では,計算機ソフトウエアの開発が主要な課題になるので,実績ある回路にとどめている。
5.2.周波数混合器及び導波管フィルタ
また,この周波数混合器及び不要輻射波阻止のBPFは,200mm長の方形導波管WRJ-10(長手内寸法:22.9mm)及び円形導波管(内径:20mm)に組み込んだ。混合は,ミキサーダイオードSP221を5GHzLANアンテナ端子及び4.9GHz局部発振器の入力端子の間に取り付けた。
この写真の上側三つは,方形導波管WRJ-10を使ったもので,写真の左端子が局所発振器からの入力,そのすぐ右の端子が5GHz無線LAN機のアンテナとの接続,右側の端子SMAが10.1GHz出力を想定している。この方形導波管の素材は,JA1ATI(逸見政武OM)から提供いただいた。このうち,一番上の
BPF模型V4.1
は,1波長3段から構成し,各段の仕切りは銅板を4箇所,周波数特性調整ビスが全体で3本,
更にSMA端子の取り付けビスの一つを長くしてVSWR調整できるように構成している。V3.1は,1/2波長4段の仕切りを入れたもので,試行錯誤のための隙間が切り入れてある。V4.1でも,まだ,改良の余地は大きい。このBPFの当初V2-1の調整は,スペクトラムアナライザが必要なことから,JH1UGF(槇岡寛幸OM)のご厄介になった。
写真の一番下側の見本V2-2は,JA1RON(竹村純一OM)による円形導波管利用の混合器とフィルタとの模型である。こちらは,10.1GHzの入出力が開口して電磁ホーンの役割になっており,パラボラアンテナの焦点にその開口部を取り付ければ,効率のよいアンテナで実験できる。
これらの導波管フィルタによって,局部発振周波数(4.9GHz),無線LAN送受周波数(例:5.21GHz),局部発振周波数の第2高調波(9.8GHz)及び無線LAN送受周波数の第2高調波(10.420GHz)を-30dB以上有為な信号が観測できない水準まで低減している。最初の試作器での変換損失は,約-20dBであった。この値は,50cmのパラボラアンテナを取り付ければ打ち消される程度の損失と思われる。
ただし,セミリジット同軸ケーブルを用いても,10.1GHzの電波減衰は大きいことから,10GHz混合器とアンテナとの距離を短くする工夫,局部発振器をアンテナの焦点の近くに実装するなどの改良が必要である。
改良試験中の
方形導波管V4.1の通過帯域特性
は,JARL研究所に持ち込み,ネットワークアナライザによって測定してもらった結果で,使用予定周波数10,096MHz~10,128MHzが-20dBに入り,局部発振周波数の2逓倍波(9.8GHz)及びレピータ周波数(10,150MHz以上)を遮断できている。しかし,通過帯域の能率がまだ悪いので,鋭意,改良努力中である。
5.3.親機の無線LANアクセスポイントの電磁遮蔽箱
親機の5GHz無線LANアクセスポイントは,アルミニューム製トランク(350*280*10)に入れ,電源コネクタ,Ethernetコネクタ及び10.1GHzアンテナ端子を外に出した。その外観写真を次に示す。内部には,無線LANアクセスポイント,4.9GHz局部発振器,導波管混合器が入っている。無線LANアクセスポイントは,内部で更にアルミ箔で包み,2本のアンテナ部には銅筒を被せ,その一方に5GHzアンテナ引き出しのSMAコネクタを付けている。
使用したアルミニューム製トランクでは,希望の電磁遮蔽が得られないので,内部は銅版によって更に遮蔽している。
5.4.子機の無線LANカードの電磁遮蔽箱
子機の5GHz無線LANカードには,電磁遮蔽及びアンテナ箱を薄手アルミニューム箱(Takachi YM-65)を加工して作成した。その写真を次に示す。無線LANカードの露出部を電磁遮蔽箱で覆い,写真に向かって左側にアンテナ引出しのSMAコネクタを配している。
この
電磁遮蔽箱
は,W65,H20,D50の寸法で,右側の窓は中側に折り曲げて,LANカードの口を作り,カード上下を内部に張り詰めた防振ゴムで固定している。アンテナは,ここでは,SMA端子に13mmの5GHz GPアンテナを付けただけである。
6.Early Study(初期実験の模様)
なお,
5.2GHz無線LANを10.1GHz帯に流用する場合の伝播損失試算
によって,送受合計で30dBの損失低減が必要と推定している。
OFDM免許状を入手した翌々日の2002年12月27日には,これらの試作部品を用い親機をブリキ箱の中に密封し,電磁遮蔽して,2mの距離での対向通信を試した。まだ,BPFの特性,子機での5.2GHz基本波の遮蔽
などに改良点を残すものの,平均速度:24Mbpsで通信でき,OFDM5.2GHzと4.9GHzとをヘテロダインし位相を維持できていることまで確かめた。
7.Plan for Further Study(実験計画)
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First Stage(初期実験)
混合器,導波管フィルタを対向分作成する。局識別符号は,別途,許可されている10.1GHz帯のトランシーバで手動でSSB/FM/CW/モールス音などの送出を行う。このときのデータは,WEB-siteの文字,映像など蓄積データとする。
-
Second Stage(中期実験)
無線LANカードの制御プログラムの開発を行い,識別符号の自動・手動の併用によって送出する。通信構成は,親機(無線LANアクセスポイント)と子機(無線LANカード)との間,及び子機相互との2種類を試みる。
-
Third Stage(後期実験)
識別符号の自動送出を試み,アンテナ効率を改善して屋外実験に着手する。同好の士がOFDM免許を取得すれば,パラボラアンテナを向け合っての相互接続も試みる。
8.Effects and Desires(効果及び期待)
この実験は,無線LANを題材にしているが,応用はそれにとどまらない。例えば,Linuxボードとデジタル映像カメラと組み合わせて,デジタルテレビジョン実験などにも波及しよう。開発済みの金物(hardware)及び軟件(software)の公開・配布・普及活動を行い,アマチュア無線のデジタル化にいささかでも寄与できれば幸せである。
この実験を契機に,アマチュア無線家が更なる発展を図られ,魅力あるアマチュア無線の世界を再構築されることを望むものである。
9.Acknowledgments(謝辞)
末筆ですが,この免許申請を受理できる体制を準備いただいた総務省関東総合通信局無線通信部私設第2課及びTSS(株)保証事業部に感謝します。
更に,実験途上において,いろいろ基盤整備支援をいただいた
JH1UGF(槇岡寛幸OM)
,円形導波管フィルタ模型を作成していただいたJA1RON(竹村純一OM),方形導波管を提供いただいた
JA1ATI(逸見政武OM)
及びその他の支援をいただいた
YAMA会
の会員に御礼申しあげます。
10.References(参考文献)
技術的な詳細は,次の文献を参照されたい。
-
ARIB STD-T71
“小電力データ通信システム/広帯域移動アクセスシステム(CSMA)”,標準規格,ARIB STD-T71 1.0版,平成12年12月14日策定,
社団法人電波産業会
,JPY3140,2000年.
-
AR5000 Technical Bulletin
"High-Speed, High-Capacity Wireless LAN Connectivity",
Atheros Communications Inc.
,California,USA.
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