私設無線局の電波障害解決の例

-- アパートメント/マンションでの高出力局のTVI対策 --

List of Contents(目次)

1.Abstract(概要) 2.Isolation of the Problems(障害の分離) 3.Elimination of the TVI(障害対策の詳細) 4.Recommendations(推奨する対策) 5.Final words(あとがき)

1.Abstract(概要)

ここでは,狭い空間(アパートメント)を利用して多バンドを運用する場合に発生しやすい テレビジョン受像機への受信障害の対策を参考までに述べる。 この実施例は,多数の空中線の引込線が干渉しないように,金属管への挿入, 10個以上の大型フェライトコアによる共通様相フイルタ(15cm*7cm)の挿入などを 特徴とする。 この程度の対策をすれば,アパートメントでCW500W運用に支障のない水準になる。

2.Isolation of the Problems(障害の分離)

2.1 RIG(無線室構成)の例(抜粋)

3系統の空中線があり,3局(移動局,固定局,家族局)を構成している。 Mobile station(移動局,一部家族共用) HF : TS-50 -- Multipler --CMF -- 5DFB ---- 1/4 Lamda GP MH-21S --+ 144/430 FT728 -- Mutiplexer ---10DFB ---- 5/8 Lamda GP(X4000) 1200 TH89 -- + Fixed station(固定局,500W) HF: TRX(100W)--CMF--LPF--LNR--CMF--LPF--10DFB--1/4 Lamda DP TS-180S 30MHz 500Wmax 30MHz(1KW) APA-4DX SB220Modified 備考 3基の空中線は,3.5m*1.3Mのバルコニの庇下へ設置している。 DP型空中線は,給電点から1mの点で90度に曲げ,3.5m以内へ収めている (外部からは,物干さおの外観を呈す)。 建物は14階建で,無線室はその最上階(地上高約40m,海抜80m)の角部 屋にあり,空中線位置から伊豆半島,富士山,南アルプス,秩父山地など が遠望できる。

2.2 障害原因の判定

a)簡易電界強度計の準備 100uA程度の電流計(ラジケータ廃品又は回路テスタ)にショットキ型ダイオー ド(例:1S1588)によって,両波検波させた結果を表示できるようにする。 schottky diode ANT(10cm) --*--|>|---*--------- + | Cap(103) Ampare meter(100uA) *--|<|---*--------- - b)疑似空中線への出力時の無線機筐体電圧の測定 無線機から疑似空中線(dummy load)へある一定出力を送った場合の無線機筐体 の高周波電圧を簡易電界強度計で計測し,記録する(refV)。 備考 この電圧は,0Vが普通で,計測できない。 c)空中線への出力時の無線機筐体電圧の測定 無線機から正規の空中線へある一定の出力で送信した場合の無線機筐体の高 周波電圧を計測し,記録する(V)。 d)同軸外側導体への誘導の判定 今までに測定した二つの電圧群を比較,次のいぞれかか判定する。 V < refV : 同軸線外側導体への誘導は無視内できる。 V > refV : HF空中線の発射電波を他の空中線及び同軸外側導体への 誘導が多い。
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3.Elimination of the TVI(障害の除去)

3.1 Longest distance from antenna(空中線からの距離の増大)

すべてのバンドの空中線及びその引込みの同軸線は,HF空中線から最低1.5m離 す又は直交させる。特にアパートメントのベランダなどの狭い空間へ多くの空中線を設 置し複数の同軸線で引込む場合,VHF,UHF,SHF,HFなどの引込み同軸線が空中線と平行 になる部分があったり接近していたりすると,引込線へ強い電波が誘起されやす い。

3.2 Piping all coaxial cable(同軸線を金属管に通す)

空中線に近い部分及び他の同軸線を接近する部分は,HF同軸線を金属管に貫通 させて,他の同軸線などへの誘起を防止する。 施工例 UHF/VHFの引込み線の平行部を180cm長のステンレス管に通し, 空調機穴までの垂直部を90cm長のステンレス管へ通した(写真参照)。 HF(高い出力の方)の屋内部を180cm長のステンレス管に通して,他の 線と分離した。 部品費: ステンレス管35*1800:@1280 2本 ステンレス管35*900mm:@680 1本 備考 これらの金属管は,高周波接地しない。

3.3 大口径フェライトコアによる共通様相の阻止

大口径の同軸線は,大口径でなければ貫通させることができないから,大口径 (内径約60mm)のフェライトコアFT240-43又はFT240-61を次ぎの個所の同軸線を貫 通させる。

a)500W出力部の低域フイルタの空中線側へ,FT240-43*6個,FT240-61*6個を直列 に挿入する。この寸法は,150cm*7cmになる(写真参照)。 b)50W出力部の共通様相フイルタの空中線側へ,FT240-43*1個を挿入する。 c)UHF,VHFの出力部へ,FT240-43*2個を挿入する。 d)HF機の100V電源線:FT240-43*1個,FT240-63*1個を挿入する。 e)HF直線増幅器電力線:FT240-43*1個,FT240-61*1個を挿入する。 f)HF移動局直流電力線:FT240-43*1個,FT240-61*1個を挿入する。 g)HF移動局交流電力線:FT240-43*1個を挿入する。

3.4 大形(8D用)カップリングノイズフイルタによる共通様相の阻止

1個あたりのインピーダンス80オーム(7MHz)を次の個所へ挿入する。 a)直線増幅器電源線 3個 b)直線増幅器の入力部 2個 c)直線増幅器の制御線 5個 d)SWR計電灯線 1個 e)UHF機電源線 1個 f)HF移動機マイク線 1個 g)HF固定機マイク線 1個 h)接地線 5個 i)空中線引込線 31個 複数の同軸線への誘導高周波電圧を比較しながら,均衡を保持するように接地 した結果,合計31個は次ぎの内訳となった。 HF500W output 6個 HF10W output 12個 1200MHz10W output 8個 144/430MHz10W output 5個 j)同じ室内の他の電気機器 空調機電源線 2個 ISDN局線 1個 ISDN分岐線 2個 個人計算機電力線 2個 個人計算機通信線 2個 屋外寒暖計引込線 1個

3.5 小形フェライトコアによる共通様相の阻止

FT114-43及びFT114-63による共通様相阻止フイルタをすべての線へ入れる。 a)1200MHz linear amp 1個 b)1200MHz TRX DC電力 1個 c)144/430MHz TRX DC電力 1個 d)CW keyer output 1個 e)CW keyer Switcher 2個 f)CW keyer input 1個 g)TNC電源DC線 1個 h)電話機電源(別室) 2個 i)電話局線(別室) 1個 j)携帯電話充電器 1個
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4.Recommendation(推奨する対策)

4.1 誘導を強く受ける部分を対策する

a)線間を1.5m以上離す。 b)ステンレス管などで電磁遮蔽する。

4.2 無線機周りの流入部に均衡させてフイルタ挿入

電界強度の相対値を比較しながら,複数の外部引込線に共通様相阻止フイルタ を挿入していく。クリップ型なら10個単位(800オーム)でいれる。 一つ80オーム程度のインピーダンスの挿入では,阻止効果は見えないが,10 個単位であれば効果が測定可能になる。

4.3 すべての入出力線へ共通様相フイルタ挿入

送信機のすべての線へ共通様相のフイルタを(できるだけ近くに)挿入し,再 放射を予防する。

5.Final words(あとがき)

どうお感じでしょうか? 皆さんが対策されている水準よりきつく,これでもかと 押え込んでいることが汲取れたでしょうか? ある意味では,極め付きの電波障害 対策であります。よくある電波障害対策の教科書では,自己の電波による同軸線 外側導体への電磁誘導についての対策が不親切に記述されている状態であり, この対策例は見かけません。 これは,高い塔に八木アンテナをあげ,垂直に引込み線を垂らすだけなら,そ れほどの自己誘導もなく,BPF,LPF,CMFなどで対策するだけで単純な場合が多 いのですが,共同住宅(アパートメントなど)という狭い空間で高い出力局(CW500W)を 安全圏内で運用する場合,他バンドの空中線及び引込線が相互に強く干渉するか らです。 ありきたりの対策はしてみたが障害がとまらない場合,ここで記述した自家中 毒の対策を検討されたら如何ですか? 筆者は,JARLコンテスト時にはクラブ局のCWオペレータ(JR1YYT/RW)としてよ く出ていますので,気軽にBreak願います。 最後に各局が, TVIの心配を忘れられて,ハムライフを楽しまれることを念願し ます。
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