本当は「タイタス」が見たかったんですけど,時間が押してしまい間に合わず. 一番合うのが「BLOOD」だったので,これに決定.48分と短いし.
予告やってた時から凄く気になってたんですね.協力に「甲殻機動隊」などの 「押井守」.主演にハリウッド進出を果たした「工藤夕貴」.そしてフルデジタ ルによるアニメーション.う〜ん,気になる要素ばかりです. 間違えちゃいけないのは,監督は北久保弘之.押井守ではありません.
「フルデジタルアニメ」と来たら,比べてしまうのが,「トイストーリー」と 「ホーホケキョとなりの山田くん」.しかし,これらはどれも技術的には少し違 いがあります.
まず,「トイストーリー」.これは世界初のフルCGアニメーションです.特徴は フル3DCGということで,モデリングされたオブジェクトをアニメーションかつリ アリスティックにレンダリングすることを目指したわけです.3次元の空間と時 間軸を持ち,今までのアニメーションにおけるセルはありません(もちろん,秒 間24コマの映画になるので,各コマに対応するシーンをレンダリングします). おもちゃの世界を描いたということで,プラスティックの質感がうまくマッチし ていました.
そして「となりの山田くん」. こちらは日本初のデジタルアニメになりました.もちろん,オブジェクトをモデ リングして,アニメ調にレンダリングするという技術も用いられていますが(も ののけ姫の時から部分的に使われていました),どちらかというとセル画に相当 する絵を全てコンピュータ上で作るという印象が強い作品でした.いしいひさい ちのタッチを残すために完全に閉じないライン.そして,4コマ漫画が原作であ るということから,少ない背景.そして,水彩画をイメージした画面.ある意味 で画期的でした.
技術的には画期的だったのですが,興行的にはどうだったかというと・・・でし た.ジブリだからこそできた技だったかもしれません.でも,日本のアニメーショ ンを振り返る時にはきっと一つのターニングポイントとして捉えられることでしょ う.
そして,今回の「BLOOD」です.一言でいうならば「凄い」としかいいようがありま せん.決して「フルCG」とは言ってません.「フルデジタル」です.おそらく, 背景の取り込み等はごく普通に行っているのでしょう.しかし,そのままではな い.加工はしてある.でも,本当に実写取り込みなのか,作ったものなのか分か らない.
分かる必要はないのかもしれない.いや,分かっちゃいけない.今は「フルデジ タル」が売りになるのかもしれないが,将来は当り前の技術になるはず.そのと きにこの作品を見返しても,技術的な見劣りはしないだろう.デジタルとアナロ グの境界が見えない.
さて,技術的な話はさておき,内容の方.タイトル通り,テーマは吸血鬼. でも,具体的な説明はまったくなし.
主人公の名前は小夜.「翼手」を倒すのが目的.彼女はいったい何者なのか.彼 女を雇っている組織が何者なのか.説明はほとんどない.「翼手」と小夜との関 係もまったくもってわからない.でも,説明されないところがいい.もともと 吸血鬼の存在は確証がないのに,それを無理に肯定されてもうさんくさい.UFO と同じで,実際に遭遇した人にしかわからないもの.謎は謎のまま.その存在も わからないというのがいい.実際にあったのかもしれないし,なかったのかもし れない.
舞台は60年代の日本.でも米軍基地内のアメリカンスクールが主な舞台というこ ともあり,半分が英語.たぶん日本語の台詞より多いです.で,観客はここの保 健室の先生と同じ視点しか与えられていないという状態.
一時間もないのに,見ごたえは十分.そんなに壮大な話ではないはずなのに,ス ケール感がデカイです.「スプリガン」なんかより充実してます.多分これは音 楽もいいのでしょう.
今回の映画の時代設定は1966年.実はこのあとの1969年を描いた小説と2000年 を描いたゲームがあるんだそうで.今回のはあくまでも前フリなのかもしれない. むむむ,やはり奥が深い.