□ 第二回 「月の袂で」〜ヴァイオラの徒然日記 □

459年 12/30
セイ君の尻ぬぐいも終わり――といっても本人と責任者は別――、年越し祭りに参加する。こういう時にこそ、村人に好印象を与えておかなくては。経験上、その大切さは身に染みて知っている。特にセイ君が騒ぎを起こした後だけに、これは大変重要な事。
こういう鄙びた村で何が不足するかといったら、当然だけれど「娯楽」。少し余裕のある村なら、有志で楽団とか演劇団を作っているものだけれど、ここではそれは望むべくもない。
そういうわけで、ゴードンに協力させてナイフ投げを披露した。勿論シールドの呪文をかけさせているから、彼に危険はない。でも村人から見ればたいそうスリルがあったはずで、わたしが目隠ししてからは尚のことだった。
おまけのジャグルも好評で、おひねりは銀貨と銅貨でしめて36sp。大変結構。

夕方、ラッキーはジーさんがいないと騒いでいた。祭りに顔を出さないのは本人の意志なのだから、ほっとけと言っておいた。その答えに彼女は不満そうな顔をした。
言いたいことはわかるけれど、一人になりたい人間のところへ、無理矢理踏み込むのもどうかと思うよ。人それぞれ干渉されたくない部分はあるでしょう。
 
 
460年1/1
新しい年。一体、どんな楽しい出来事が待ち受けているのやら。
今年こそはカジャおじさんの顔が見れるといいな。

新年早々、ゴードンが失踪していると判明。不吉な。坊ちゃんは幼馴染みの行動にあまり動揺も見せず……いや、見せないようにしているらしい。さすがにショックだったか。しかし、こちらの方がショックは大きい。なぜなら、坊ちゃんのフォロー役がいなくなったから。
うーん、一気に立場が弱くなったよ、坊ちゃん。そのことに、ちゃんと気づいてる?
 
 
1/2
遊撃隊契約を結ぶ。はずだった……
村長のじーさん、話が違うよ。これは村人の護衛じゃないのかね。行動の自由もなく、森と村を行ったり来たり?これでハイブをどうしろと?
まあ、ある意味お試し期間なのかな。村としては、何もせずぶらぶらされて無銭飲食じゃ割にあわないだろうし。
でもね、そういうやり方は後になって自分に返ってくるよ?
 
 
1/3〜1/4
樵一行を護衛して森の中で二泊。このあたりはダイアウルフの縄張りらしい。夜直の時に侵入者を見物に現れた。しかし、閃光弾ライトを放つと帰った。

特記:ダイアウルフにはライト
 
 
1/5
村に戻ると見慣れぬ隊商がいた。どうも宿は同じらしい。困ったことに。
なんというか、品性を疑う一行だった。使用人の躾方を見れば、その家の主人の器量が量れるけれど、そういう意味でこの隊商の親父は三流の小物だ。
どんな場所にも暗黙のルールというものが存在する。それを無視する事は、礼儀上のみならず損得勘定においても減点である。商人のくせにそれがわからないようではお話にならない。
わたしは馬鹿は嫌いだ。
 
 
1/6
休日。修道院時代には憧れた響きだが、生憎今は冬。もう少し暖かい時節なら――そこら辺で良さそうな枝振りの樹を見繕って、クッション持参で昼寝でもしたんだけれど。残念。

とりあえず、村に常駐するのだから足元はよく知っておかないと。物知りで快く話を聞かせてくれる人といったら、いまの知り合いの中ではヘルモーク氏が一番かな。雑貨屋の若旦那も事情通な気もするけれど、あまり面識もないし。
そういうわけで獣人区へ向かう。すでに日は高いというのにヘルモーク氏はまだ寝巻き姿だった。なので村のお勧めスポットを聞いてそうそうに立ち去る。

氏のお勧めは祭りでも披露していた、リールという娘の歌だった。念のため手土産は何がいいか聞いてみたら、「花」とのこと。この季節にはちょっとねー。そのままぶらぶらと川べりに沿ってしばらく行くと、しゃがみこんで何やらしている女性を発見。あれがリールに違いなかった。
「こんにちは」
そう声をかけると、彼女は目を上げた。「リールさんでしょう?」
こくりと頷くその様は妙に稚い。あれ、と思った瞬間。にこぉ、と彼女は笑った。
vb.jpg (19KB) なるほど、神の愛し子か。ミリーも相当無邪気に笑うけれど、彼女のほうがより神に近いようだ。ざっと格好を検分して、それなりの扱いを受けているらしい事にほっとする。こんな小さな村では、世話をしてくれる人がいなければ村を追い出されて終わりだろうから。神殿があれじゃあ、余計な食い扶持など稼ぎ出せそうもないし。
親御さんがしっかりしているのかな。こういう立場の娘を庇うだけの力と信念があるとは、見上げた人達だな。わたしは感心しつつ、髪を束ねたリボンを解いて手早く「花」を作った。こういうの、ミリーも好きだったものね。

リールは喜んでくれたらしい。とても素晴らしい「歌」を唱ってくれた。さすがにヘルモーク氏がいうだけのことはある。彼女の「歌」は普通じゃなかった。本来何十人もで唱う荘厳な聖歌をたった一人で過不足なく歌い上げている。そして、神々しいまでに高まったトリルが空中に消え……ふっと空気の色が変わった。次の瞬間、彼女は幼子が唄う単純な拍子の数え歌を歌い始めた。
さきほどの「歌」は比喩ではなく、まさに天からの授かり物に違いなかった。
しかしその後、「巫女」から「幼子」に戻った彼女と歌を一緒に歌ったり、石投げをしたりしながら思う。なんだか最近、本当に子守りしかしていないんじゃ……わたしは眩暈を覚えた。

そんな事をしているうちに、坊ちゃん以外の連中が現れて弁当を使い始めた。そのうち昼寝を始めるリールとジーさん。ちょっと寒いけれど川べりでピクニック? こういう和やかな時間はいいね。
しかしその横で殺伐と剣を振るセイ君の姿が。ふと、好奇心にかられて聞いてみた。セイ君は何でここにいるのか、と。返ってきた答えは「天気がいいから」。いや、そういう意味でなく。

話によると、セイ君は行方不明の親父さんを探しているという。昔、この村に親父さんが来たことがあって、何か手がかりがないか探しに来たのだとか。そうか、いろいろと大変なのね。
 
 
1/7
今日は猟師一行と出かける予定だったが、急遽取り止めに。昨夜バブーンが村の食料蔵を襲ったという。毎年冬季恒例の行事らしい。役に立たない連中だ。猟師なら罠でも弓矢でも使えそうなものを。そのくせ冒険者のお手並み拝見という態度。やはり上があれだから下もこれか。
猟師組合の頭は我々だけで事を収めろなどというが、馬鹿なことをいってはいけない。この場合一番重要なのは、バブーンを退治することであって、我々を試すことではない。確実に、「もう懲り懲りだ」と言わせるぐらい、完膚無きまでに叩き潰さねばならないのだ。その為には人手は多ければ多いほど良い。バブーン如きの報奨金なぞ飲み代にもならないのだから。
ああいう手合いは、つけ上がらせてはお終いなのである。

わたしの提案により設置されたネットはかなり有効であった。ボーラも使える。こうして足止めしている間に猟師達が弓矢で仕留めるのが当初の計画だった。が、予想より彼らの腕は遙かに悪かった。なるほど、毎年バブーン共がやってくる理由がよーーーくわかった。
明日も襲撃があるだろうけれど。どうしようかな。
 
 
1/8
今晩は猟師達とは別々に蔵を見張ることに。昨夜の蔵の周りには、仕留めたバブーンを吊して「ヒヒ威し」に――何故かジーさんとラッキーが異様に嫌がった。ラッキーはともかく、人の腹を割いていたジーさんの言うことではないような。士気を喪失させる手段としては一般的なんだけどね――し、上から猟師達が弓矢で攻撃。
同時に我々は別の蔵の周りで警戒。おそらく、昨晩の失敗でこちらの蔵を狙ってくるだろうと意見が一致したからである。昨晩有効だったネットを張り、皆で厩の毛布を被って待機した。
結局、猿と人間との知恵比べは痛み分け。実力で我々の勝ち。襲撃にはボスと思しきバブーンが加わっていたが、目つぶしをかけたおかげか、セイ君の10'ソードが一刀両断にした。恐るべし10'ソード。

しかし、相変わらず作戦の指揮をとる者がいない。おかげで途中、結構ひやひやさせられた。計画立案の時点でも、もしわたしが……いや、やめておこう。
 
 
1/9
日程のずれはあるが、猟師たちと遠出する事に。それを告げに来たベルモートは、相変わらず親父のパシリだった。村の未来は暗い。
数日前とはうって変わって友好的な猟師組合の面々と共に一日が過ぎた。
途中、セイ君が何かに見られているというので、探知呪文をかけたが何もひっかからず。
 
 
1/10
猟師達が獲物を追っている間、野営地で待機。だらだらと過ごす。
 
 
1/11
帰る途中で、猟師組のうち三人がドッペルゲンガーにすり替わっているかも、と坊ちゃんが言った。相変わらず人並み外れて知覚が鋭いのだが、それでどうして人心に疎いんだろうか。謎。
まあそういう事なら、見てみましょうか。……大当たり。
しかし坊ちゃんだからか、彼は隠し事が下手である。仲間だけで集まったりしたら、連中に気づかれるじゃないの。さり気なさとか、何気ない振る舞いからは全くほど遠かった。まずい、と思って猟師たちの間に割り込んだと同時に連中が襲いかかってきた。

なんとか始末をつけ、猟師たちに被害は無し。……いや、三人の被害を出しているか。といっても、わたし達がいない間の出来事だしね。こればっかりは仕方がない。
暗い雰囲気のまま村に戻ると、新しいパーティが宿に入っていた。ついでにドッペルゲンガーの報奨金が120gp出るらしい。そんなハシタ金貰うぐらいなら、被害者の遺族に見舞金として渡した方がなんぼかマシだ。下手すれば逆恨みされそうな状況だし、ここは村人の好感度をあげておきたい。

皆は毎日森の樵亭で夕食をとることにしたらしい。それはまあ、無理もない。あちらは味も雰囲気も段違い。とはいえ、全員で向こうに行きっぱなしだと網にかかる情報が減る。わたしは酒を飲むという口実のもと、女神亭のカウンターに腰を据えた。まあ、動くのが面倒くさいというのもあるけれど。

新顔パーティには、噂に聞いた村長の次女がいたらしい。こんな小さな村にもいろいろなドラマが転がっていて、実に興味深い。しかし子供連れで冒険というのは、相当信頼関係がないと無理だろうにね。えらいえらい。
聞き耳を立てつつ杯を傾けていると、えらく派手な顔をした男が隣に立った。
「お隣、よろしいですか?」
今までに何度となく聞いたフレーズ。すっかり忘れていたけれど、この村に常駐するようになってから、普通の格好しかしていない。虫除けの胡乱な風体ではさすがにまずいと思ったからだ。
んー、失敗したかな。断られるとは露ほども疑っていない男を眺め、わたしは嘆息した。顔に似合った気障なセリフを連発するのを聞き流し、適当に酒を奢ってもらいつつ――やはり経験を積んだ冒険者はお金持ちねぇ――、いろいろとパーティのことを聞いてみた。
その結果、こちらとは段違いな連帯感と実力と経験のあるグループなのがわかった。いいなー、うらやましい。特にリーダーが頼れるところが。

部屋に戻ってセイ君のために窓を開けたら、ちょうどバーナードさんちのウィーリーと目が合った。どうやらギルド帰りらしい。なんだかやけに親切に、ジャロスとスコルの女性遍歴についていろいろ教えてくれた。良い人だ。
 
 
1/12
今日は三人の葬式。一応事件の関係者だし、神職にある身としては出席するべきだろう。久しぶりに「神官服」になる。あー、聖章を表に出すの2ヶ月ぶりだわ。さすがに狭い村だけあって全員参加。バーナードの旦那とカーレン坊やのお披露目もできたね。
ヘルモーク氏が律儀に影から列席しているのが……何だかなー。

ラッキーの天職は泣き女かもしれない。

セイ君はまだガギーソンに親父さんのことを尋ねていないという。……シャイなのにもほどがある。この村に来てから一体何日経ったと思っているのだ。
今日は葬式あったから宿は暇だと太鼓判を押してあげたら、やっと重い腰をあげた。やれやれ。
 
 
1/13
樵とピクニック。
 
 
1/14
夜、昔の知り合いに会った。彼の名前はガネーヴォ・ヴォンシャ、通称ガヴォ。神学校では「ほどほど」とか「そこそこ」、でなければ「まあまあ」という形容詞がぴったりな奴だった。はっきりいってその他大勢のひとり。素行も成績も品格も人柄も容姿も、つまり何もかもが枠の中に収まってしまう、そういう人間だったのだ。だからほとんど話したことなどない。
時候の挨拶と近況報告に四方山話、まるで会話作法の練習でもしているかのように定められた遣り取り。彼と交わす話なんて所詮こんなものでしょう。このまま意外性のない会話が続くかと思ったら、Gとバカ娘と阿呆リーダーが揉めだした。ええい、野営地での喧嘩は止しなさい。そんなことはもっと人気のないところでやるものよ。

いろいろと見るだに、ガヴォの連れはひねくれ者と頭悪いのしかいない。すごいな。ガヴォが選ぶとは思えない面子。どうやら彼はこの落ちこぼれパーティ最後の砦を自ら買って出たようだ。結構意外である。そこそこなパーティでほどほどに成功していると思っていたのに。わたしの中でガヴォへの評価はかなり上がった。
いいね、おとこだよ。わたしは意外性のある人は好きだな。ついでに底辺に落ち込んでも、まだ起き上がろうとする気概のある奴もいいな。神学校時代は全然気が付かなかったけれど、もしかしたら心友になれていたかもしれないね。
 
 
1/15
ガヴォとバカ一行は「山より高い樹」を探しに立ち去った。
がんばれガヴォ。君に幸あれ。

今宵は満月。月見酒にうってつけ。
しかし、そう思ったのはわたしだけらしい。何やら面妖な事に、魔力増幅現象だか魔力抽出実験だかに共鳴して、周りの人間達は皆おかしくなった。何故。
ジーさんはぶっ倒れ、ラッキーは神殿へ逃走、セイ君は頭のネジが飛び、坊ちゃんは――そういえば坊ちゃんはなんともないね。ま、とにかくいろいろ考えてみると、呪文を行使する人間が影響を受けたんじゃないだろうか。今思い返してみると、スコルとかレイとか変だったし。

……恐い考えになってしまった。その伝でいくと、神の力と魔術師の力は同じ源になるのでは。少なくとも「魔力」ないし「呪力」に影響を与えるものが同じなのだから。
……。
……。
……ま、何だっていいわ、使えれば。そういう理論体系を組み立てるの好きじゃないし。

それよりも、スペルユーザーじゃないジーさんが倒れた方が問題でしょう。何でも背中が痛むとかで、坊ちゃんを追い出して診たら――羽の痕があった。
あ、獣人族ですか。OK,OK。それならわかる。魔力にあてられたのね。
まー、なんと言いますか、普段の奇天烈な言動は獣人族だったからってことで……。

わたしは窓から月を見上げた。何の変哲もない白い月が、煌々と辺りを照らしている。
さっきかけたキュアライトのおかげか、ジーさんは落ち着いた様だった。わたしは寝台に腰掛けて腕を組んだ。
「坊ちゃんの神託はこれか」
ヘルモーク氏はジーさんの事知っていたのかな。明日訊きに行ってみるかな。……無事なら、だけど。
 
 
1/16
ジーさんは元気に目を覚ました。身体に異常はないらしいが、倒れている間に変な夢を見たらしい。色々聞いてみてわかったが、どうもこの宿にいる人間達の過去(記憶?)をそれぞれ垣間見たらしい。
「神託を受けて旅立つ少年」は坊ちゃん、「ハイブへの強烈な憎悪」は、たぶんセイ君。「女遊びに飽きた戦士」はジャロス――ふーん、やっぱりね。減点3。「女顔を苛められ、修道院へ連れて行かれる少年」はスコル、「戦士に連れて行ってと頼む娘」はブリジッタ、「空に浮いて弓を射るシーフ」は、まあウィーリーでしょう。
「お裁縫サボって物置に閉じこめられた女の子」は、わたしの事だ。あの頃はしょっちゅう、カジャおじさんに助けてもらったのよね。おじさん、今何処で何をしているのかしら。元気だといいけど。
今ひとつあやふやなのが「完全武装の戦士になぐりかかる青年」。バーナードのことかな?ベルモートが殴りかかっているのか?すると残りは「魔術師の実験室で目を開く赤子」。……これって、どっちだろう。どちらにしても、片方にはブロックかかって見れないか、でなければ記憶自体が存在しないのか。
んー、順当に解釈するとレイなのかなぁ。あの妙な素直さはそのせいという事で。それでもって、ラッキーの分はあの聖章に阻まれた、と。
もしそうでないとすると……ラッキー、強く生きるのよ。

ヘルモーク氏のところへ行く前に、本人に確かめた方がいいかな。わたしは坊ちゃんを情報収集に託けて部屋から追い出した。セイ君は川へ素振りに出ていった。なんだか、異様に爽やかで不気味。ラッキーは看病疲れで爆睡中。これで密談の舞台は整った。それで、単刀直入に聞いてみた。
「ジーさん、背中のことは知っているの?」
途端に慌てふためくジーさん。いや、そんなびくびくしなくても。別に踏み込むつもりは全くないし。などと思っていたのだけれど。
嗚呼、訊くんじゃなかった。

(おかあさんはきれいな黒い髪に白い羽で……ハイブを招いたのは止められなかったから、自分のせいだって)
(だってだんなさんと恋人が同じだと思わなくて……だから、だから、メルに告げ口したら)
(メルは大臣で、おかあさんは国王のおばさんです)

何だろうこの違和感は。さっきからわたしの耳に、とっても場違いな単語が立て続けに流れ込んでくる。Gはさきほどからわたしの膝に突っ伏して泣いている。その背中を撫でながら、わたしは窓の外に目を遣った。
ああ、空が青いなぁ……
たかだか下級官吏の娘には到底想像できぬ雲の上の世界、どろどろとした政治劇は理解不能だ。しかしひとつだけわかる事がある。それは、聞いてしまった以上、わたしもそれに巻き込まれるということだ。
どうしよう……ガラナークの「お家の事情」なんて、とんでもなく手に余る。

ここはひとつ、聞かなかった事に……できるわけもないか。ああ、泣く子には勝てないなんて、ミリーの時に実証済みよ。ふーんだ、どうせわたしは世話好きよ。ずるずると面倒見てしまうのよ。悪かったわね! だからなるべく子供には寄らないようにしてたのにっ!
取り返しのつかない過ちを悔いて、ふり絞るように泣き続けるジーさんを放っておけるはずもなく。わたしは泥沼に片足を踏み入れる言葉を口にした――。

ちなみにガラナーク神殿派遣の坊ちゃんは、この件については無条件でシャットアウト。人格が成熟していれば仲間に引き入れたのだけれど、あれじゃあ無理、無理、無理でもう一つ無理。誰かいないかな、重荷を分け合える人。
あーあ、クダヒの皆やカジャおじさんが恋しいなぁ。

居ないだろうと思いつつ訪ねたヘルモーク氏は、やっぱり留守だった。昨日の今日だものね、仕方ない。メモでもはさんでおきましょう。

さて、これからどうしよう。

 

 

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文責:柳田久緒