親 書
親愛なるヨカナン・トルゥ=ヴァイオラ殿
この度のセロ村での探索行、大儀である。そなたより受け取った信頼性の高い情報は、我々、フィルシム神殿にとって、大変有意義なものである。早速、王宮を動かし、ハイブコアの探索及び掃討、今回の事件を背後から操っているユートピア教の殲滅に全力を傾けるよう努力しよう。
今後の捜査の役に立てるよう以前の事件についての要約を伝える。
459年8月に起こったフィルシム内でのハイブ騒ぎは、街の中であったにもかかわらず、発見が遅れ、コアはかなりの規模になっていた。これは、初期にコアに対して駆け出しの冒険者が送り込まれ、コアの強化がはかられていたこと、コア自体がうち捨てられた迷宮内にあり、発見、殲滅に時間がかかったことがその理由として挙げられる。
結局この事件は、ラストンから流れて来たルギア・ドレイクと名乗る大魔術師(ネームレベル以上)を初めとするネームレベル直前の急造パーティが殲滅する事ができた。
しかし、この事件で我々がつかんだことは、冒険者を雇うことが出来る組織力と資金力を持つ組織でかつ、打ち捨てられた迷宮を探索、復元できるだけの技術力と能力を持っている、ということまでしか判らなかった。ラストンの陰謀説、ガラナークの陰謀説、カノカンナの陰謀説、又は自国内のテロ活動など、諸説出たがどれも決定的な証拠は出てこなかった。
今回その背後関係が判ったことが、最も重要なことである。そして同時に脅威でもある。ユートピア教を名乗る者達の台頭は、頭の痛い問題である。このような状況下において、邪教徒が勢力を伸ばすには絶好の機会とも言える。しかし、正直ここまでの組織力を持っているとは考えていなかった。
我々は、全力をもって邪教徒を排除しなければならない。当然人間にとって脅威となるハイブもである。このような事件は、フィルシムの周辺の村々でも起こっていることであろう。早速その調査に乗り出そうと思う。
それで、既にハイブコアがあることが判っているセロ村については、早々に前例に倣い、ネームレベルに近い冒険者を捜し、討伐に向かわせるように手配する。それまで、そなた達には、少々荷が重いかも知れぬが、ハイブコアの所在の調査、及び周辺のハイブの討伐を行ってもらいたい。又、村人に被害が出ないように注意してもらいたい。
以下にあげるものは、今回の調査費用及びもしもの時に使用して欲しい。そなたの仲間又は、セロ村の重要人物が被害にあった時、完全なハイブブルードになる前なら、治すことが出来る。
諸君らの健闘と安全を祈っている。
フィルシム神殿大司祭代理 レグレタヴル・ロウニリス
同封物
ガーネット(100gp相当)10個
スクロール「キュアディジーズ」
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文責:柳田久緒