4月30日。

            午前4時30分。

            バラナシは闇の中だ。


            ランプで足元を照らしながらガンジス河に向かう。

            岸辺で朝を待つ。

            やさしい風が吹いている。


            暗闇が、だんだんと濃紺色に変わってゆき

            大河も少しずつ、その姿を現してゆく。


            天国から流れ出した大河。

            それはシヴァ神の涙。

            罪を洗い流す。


            人々は聖なる河に浸かり

            罪が洗い流され浄化される瞬間を待つ。


            朝日を待つ。


            やがてガンジス河の対岸から、ぽっかりと太陽が昇ってきた。


            河のこちら側に建ち並ぶ寺院がオレンジ色に染まる。

            祈りを捧げる人々もオレンジ色に染まってゆく。


            新しい一日が、静かに荘厳に始まった。