病室から実家に立ち寄る。
夜10時を過ぎていた。
ブルーベリー・タルトとイチゴ・タルトを持って行った。
母の日にプレゼント出来無かった代わりだ。
拓海も食べるだろう。
タルトを見ると拓海の目の色が変わった。
そして、いきなりテーブルの周りを走りだした。
「何してると思う」
妹がみんなに聞くが分からない。
「タルトが食べたくて走ってるんだよ。ダイエット」
拓海の姿を見て、みんな笑った。
妹は太り気味の拓海の食事に、かなり気を使っている。
アトピーも心配なようだ。
拓海は、走り続けている。
汗をかいてフラフラしてきた。
「今日だけ特別だよ。どっちがいいの」
「ブルーベリー!」
「よし、拓海、あと、100周だ」
みんなが笑う。
「もう、いいよ。それくらいで。なあ、たっくん」
すっかり、やわらかくなった父が助け船を出す。
ささやかな日常。
みんなで、笑えることが、どんなに幸せなことか。
此処に、おばあちゃんがいたら、どんなにか良いのに。