電車に乗って、タクシーに乗って。

          祖母が入院している病院まで、片道約2時間。

          毎日、往復を繰り返す。


          車内のどこからか携帯電話の音が聞こえる。

          ドアの近くに立つ若者が、ヒソヒソ声で話し始める。

          母ぐらいの女性が、携帯を取り出し、その電源を切る。


          その隣りでは、自分と同い年くらいの二人組が話している。

          二人の足下には引き出物らしき大きな袋。白いネクタイ。

          友人の結婚式の帰りなのだろうか。


          休日の遅い時間の上り電車には、気が抜けた疲労感が漂っている。


          暗くなった車窓には、家々の灯りが通り過ぎる。

          通り過ぎる人々のそれぞれの思いが通り過ぎる。