写真協力■archaic fictionタイトル■恋愛発展途上国へようこそ
書き手 ■桜
みなさん、恋してますか? このコラムは、
フツーのOLが、フツーに恋している様子を、
フツーに書いたものです。現在進行系の恋の
様子を、行方もわからないままライブで報告。
今恋してる人も、前に恋していた人も一緒に
恋の気分を共有してドキドキしてみましょう!
>これまでの恋愛経過
<LIVE.06 >
突然、彼に気持ちを伝えてしまおうと思ったのです。
それは、突然やってきました。
早かった桜がほとんど散ってしまった4月。
私の誕生日から3日が過ぎた日のこと。
みんなで飲んだ帰りに、私が車でみんなを送っていくことになったのです。都心から一番遠かった彼が一番最後。
他のメンバーを降ろして、そこからは彼と2人きりになりました。彼は、お誕生日プレゼントをくれました。
プレゼントというのは、その物自体に意味があるのではないと思います。
それを買おうとする気持ち、そして贈る相手を思い浮かべながら選ぶ時間。
あまり期待をしていなかったので、その気持ちが一番嬉しかった。BGMはミスチル。青梅街道を走る。
車の中では、なぜか昔の恋の話になりました。これってめちゃくちゃチャンスですよね。
突然、このまま彼に気持ちを伝えてしまおうと思ったのです。3月に満開の桜を2人で見たときから、
「気持ちを伝えたいな」と淡い桜のように思っていました。
自分の気持ちが熟す前に、あまり熟して辛くならない前に。
そう思っていました。彼の気持ちが全く分からなかったのは事実です。
悲観的かもしれませんが、私に対して
強い気持ちを持ってはいないだろうとは思っていました。
かといって、嫌いではないんだろうなと。
だから自分の気持ちが深くないうちに答え、
というか方向性を出したかったのです。「あなたは、前の彼と別れて始めて興味を持った人」
そんな切り出し方でした。
その言葉を出すまでは、本当に短い時間だったけど、
なんどそれを飲み込んだことか。「あっ、」とか「えー」とか、
よくあるドラマみたく本当に言ってしまうんです。
ただ、その言葉が出てしまったらあとは開放されたように、
心の言葉が次々と出てきました。その時思いました。
あぁ、彼と初めて心で話したな。
本当は、今この瞬間が始まりだったらよかったな、と。答えは、「NO」。
すごく、ものすごく真剣に考えてくれました。驚くほど真剣に。
彼は、私が思う以上にまじめな人でした。毎日仕事を終電までこなしている彼は、
「自分に余裕がないのに、恋人を幸せにできない」と。断る方も辛い。
断り方も難しいってことは理解していました。
彼の優しさが心に沁みました。
断られた事より、その優しさが浸透水のように心にジュワっと染み込みました。彼に最後の剣を刺してもらうことは、あまりにもかわいそうになってしまい、
私は自分で自分の喉下に剣を突きつけました。「結論からすると、あなたは私に恋愛感情はない、ということでいいんだよね?」
その言葉を聞かないと、私はいつまでも見えないものに期待をしてしまうから。
じゃあ、あなたに余裕ができたら恋人にしてくれるの?とか思ってしまうから。彼は、長い長い沈黙の後に、小さく頷きました。
後悔はしていません。
人を好きという種類で、
“恋愛感情として好き”という部分と
“一人の人間として好き”
という部分があります。この“恋愛として好き”という部分が成就しなくても、
“人間として好き”という部分が消えたわけではない。だからこの“人間として好き”という
とてつもなく重要で大切な気持ちまで
捨ててしまわないといけないということだけは
辛かったのです。告白の最中にそんなこと考えていた私は、
もしかしてものすごく冷静なのかもしれませんね。彼と出会って半年が経ちました。
そして思いを告げました。もう1回、最後にコラム書かせてもらいます。
次回、とりあえず最終回です。
(つづく)
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