タイトル■特集:∀〜新しい夜明ケ〜
書き手 ■中村孝太郎+谷田俊太郎
1999年春から2000年にかけての約1年間、
「∀ガンダム」というアニメーション作品が
ひっそりと放送された。それは「まったくガ
ンダムらしくない、まったく新しいガンダム」
だった。我々はかつてない感動を味わった。
そして今年2002年、待望の映画化!2月9日
から劇場版∀ガンダム「地球光」「月光蝶」と
いう2本の映画が同時公開される。
だが一般的にはあまり知られていないこの作品。
正直、観客動員が非常に心配…。ということも
あり、我々は勝手に立ち上がったのだった!
「一人でもいい!この機会に多くの人に見てほ
しい!」そんな願いを込めて。
ちなみに「∀」は「ターンエー」と読みます。
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■ とりあえず企画会議(?)の模様から ■
<03> 全否定と全肯定、そして涙涙!?
谷田 こないだ富野監督のインタビューを読んだら「今回の映画は、面白さに関しては
ファースト・ガンダム(最初のガンダム)なんて
目じゃないぜ、と心から思ってます」なんて言ってたぞ。すごい自信作みたいよ。
中村 今まで何を作っても「失敗作です」と
言ってばかりだった人がねぇ…(涙)谷田 こんなに自信満々な富野さんは初めてだよなぁ(笑)。
で、「40〜50歳の人でも絶対面白いと思って見てくれる
と期待してるんです」とも言ってるんだよ。中村 考えてみれば、ガンダムがブームになったのは20年前だから、
その頃、大学生やある程度大人だった人も、もうそれくらいの
年齢になってるんだよなぁ。俺達にしても、当時は小学生だったのに
今はもう30代のオッサンだしねぇ…。谷田 まさかそんないい年になってまで
「ガンダム」を見てるとは、思いもしなかったわ。
ただ、∀を見た時に、アホみたいに「ガンダム」を見続けてきた
自分に感謝したんだよ、ああ見続けてきて良かったな、
そうじゃなかったら、この作品に巡り会えなかったな、ってさ。
いや、これはマジな話。
「∀はガンダムファン、アニメファン以外のふつうの人に向けて
作った」と監督も言ってるし、実際そういう内容だったと思う。でも、ガンダムを見続けてきた人間に向けても
実は凄いメッセージを送ってくれてるんだよ。中村 確かに、「黒歴史」なんて発想は、
そうじゃなかったら出てこないよな。うん、決してガンダムを好きだった人達を
無視してるわけじゃなかったね。谷田 この20年間の総括であり、ひとつの到達点であり、
新たな出発点になった作品だと思うんだよ。
まさしく「∀」という記号通り。そんでガンダムを見て育った子供達に
「君達はこの20年間でどんな風に成長したの?
いつまでも前のガンダムにしがみついてらダメよ。
時代はこうなったよ。今必要なのはこういうことよ」って、作品を通じて問いかけてきてたんだと思う。
中村 「∀はこれまでのガンダムを全否定して、その上で
全肯定もしてみせる」って富野さんが言ってたけど、
まさにそういう物語だったもんなぁ。谷田 全否定と全肯定、
とんでもない離れ業を見事にやってのけたんだよなー。しかし、にも関わらず、いわゆるアニメファンというか、
ガンダムが好きって言ってる人達にあまり支持されなかった…なんでなんだろうな?
まあ、監督が一番涙してると思うけど。
中村 悲しいかな、ガンダムなんてかっこいいメカが出てきて
ドンパチやってれば満足って人が多いんだろうねぇ…。谷田 洗濯より戦闘か…。
いかん、グチっぽくなってきてしまった。
中村 ですな。では話を少し変えると、
元旦にアニマックスで放送した特番で
富野さんと伊集院光が対談してたじゃない?
谷田 ああ、あのインタビューは良かったね。
伊集院光って、頭いいんだな〜って感心してしまった。
中村 彼は外観に似合わずそういう目はしっかりしているから。で、彼は、最初のガンダムしか見てなかったけど
映画版∀を見てすごく面白かったって言ってたよね。やはりその後の「ガンダムシリーズ」を見てない人の方が
純粋に楽しめるんじゃないかな?って思ったよ。ふだんアニメをあまり見ない人というか。
谷田 そうね。話はそれるけど、続編の「ゼータガンダム」や
「逆襲のシャア」なんかは今でも人気あるよな。
かなり暗いし、難解な話なのに。あれは、新しいモビルスーツがバンバン出てくるし
戦闘シーンも多いし、いわゆる「アニメ的な要素」が
多かったから支持されてるのかね?
中村 それはあるかもね。
まぁ、「ダンバイン」を放送している時に
スポンサーの玩具会社が倒産してしまったという名残からって
裏事情もあったみたいだけどね。
メカをたくさん出さないと、オモチャやプラモは売れないから。会社から「またガンダム作れ!」って命令が降りた時に
監督も腹くくったんだと思うぞ。
谷田 あのへんの時期の作品に比べれば、
∀では戦闘といってもそんなに多くないもんな。
小競り合い程度の戦闘シーンが主だったし。時代が成熟したのも理由だろうけど、
ロボット物にもかかわらず、
そういう作り方を許してくれたプロデューサーや
スポンサーが理解のある人だったんだろうな。
中村 月と地球の戦いといっても、所詮は大陸の一つと
一部の軍隊だけの戦闘だしね。。今までのガンダムから考えたらスケールが
大きいようで結構小さいと言えなくもないけど。
富野監督の前作「ブレンパワード」の方が
もっと戦闘は少なかった感じだけどね。
谷田 しかし戦闘シーンが少ないと、やっぱ人気出ないのかね?
中村 うーん…。プラモは売れないだろうねぇ。
谷田 けど戦闘シーンのクオリティだって、十分高かったけどね。
機械人形(モビルスーツ)にせよ、今までのより断然いいよ。
俺、子供の頃ですらガンプラは1個しか買ったことなかったのに、
∀関係のは全部買っちゃったからなぁ。
中村 それは奇特な例だと思うが…谷田 まあ、それはともかくとして…
アニメファンがアニメに期待する何かの要素が
∀には、決定的に欠けていたのかな?なんつーかオタク受けする部分というか。
それってどんな要素なのかイマイチわからんけども。中村 だとしても、アニメは今やオタク向けばかりじゃないだろ?
近年では宮崎駿作品は異常な人気なわけだし、
あれは一般の人に受けてるわけだよね。「ジャパニメーション」なんて言葉もあるくらいだし、
アニメならでは、って考え方は気にしなくてもいいと思うけどな。それに∀はどっちかというと、オタクと呼ばれる人よりも
宮崎アニメを好きな人達に見てもらった方がいい映画なんじゃないかな。
谷田 そうね。
今回の映画をキッカケに、もっといろいろな人達に
見てもらえることを期待したいね。俺達としては「千と千尋」にも負けないくらい面白いぞ!と言いたいよ。
中村 しかし、まだいいじゃない、アニメなら。
特撮ネタなんかに比べればよ・・・(涙)
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