タイトル■特集:∀〜新しい夜明ケ〜
書き手 ■谷田俊太郎+ハニーラブ2号

1999年春から2000年にかけての約1年間、
「∀ガンダム」というアニメーション作品が
ひっそりと放送された。それは「まったくガ
ンダムらしくない、まったく新しいガンダム」
だった。我々はかつてない感動を味わった。

そして今年2002年、待望の映画化!2月9日
から劇場版∀ガンダム「地球光」「月光蝶」と
いう2本の映画が同時公開される。

だが一般的にはあまり知られていないこの作品。
正直、観客動員が非常に心配…。ということも
あり、我々は勝手に立ち上がったのだった!
「一人でもいい!この機会に多くの人に見てほ
しい!」そんな願いを込めて。

ちなみに「∀」は「ターンエー」と読みます。

>バックナンバー


■ ガンダムファンじゃない人が見た「∀」(前編) ■

<06> ロボットとか好きじゃないから、いい!

「∀ガンダム」はガンダムファン
じゃなかった人にも見てほしい作品!
…なんてこれまで力説してきたものの、
それって実際んとこどうなの?
そう思った人もいますよね。

そこで今回は、実際にガンダムファン
じゃなかったのに「∀」には夢中になった
ハニーラブ2号さんに話を聞き、
また別の角度から
「∀」の紹介をしてみたいと思います。

ハニーラブ2号さんは28才のOL。
オーガガで
「うにさん」なる連載を
始めるはずだった人ですが、
一体いつ始まるんでしょう…?
まあ、それは忘れることにして、
今回は「∀」のお話です。



***************************

谷田 もともとアニメもガンダムも
   あんまり見たことなかったんだよね。

2号 うん、見たことなかったよ。

谷田 「∀」は途中から見たんだよね。最初はどの話?

2号 建国宣言の話かな?あ、「ダストブロー」だ。

   ※注:第17話「建国のダストブロー」第18話「キエルとディアナ」

谷田 最初に見た時は、どう思ったの?

2号 最初は設定がよくわかんないと思ったけど、
   普通の物語として見てたから、
   こっちとこっちが対立してるんだなー
   というのがわかれば「ふーん」って。

   なんか「ガンダム」も
   子供の頃ちょっとは見たことあったけど
   暗くてイヤだなって思ってたんだよね。

   出てくる人が苦悩したりしてて、暗そうだなーって。
   だからあまり見ないようにしてたんだよね。
   難解そうだったし。

谷田 「∀」はその印象とは違うかんじだった?

2号 最初はわかんなかったけど、最後まで見終わればね。

谷田 最初に面白いと思ったのは、どんなとこ?

2号 建国宣言のあたりはまだそんなでもなかったんだよね。
   まだあんまりストーリーがわからなかったから。

   あれかな?
   アニスばあさんとか出てきたり、シャボン玉の回とか?
   あのへんは、1回1回の物語が名作だったじゃん?

   ※注:第20話「アニス・パワー」第21話「ディアナ奮戦」

   私はロボットとか全然好きじゃないから、
   あのへんの話が「すごいいいなー!」って思ったんだよね。

谷田 いいってのはどういう風に?

2号 人としてのあり方とか、
   何が人生で大切とかね。

   そういうのって、ドラマなんかだと
   あまり語られなかったりするけど、
   そういうのをわかりやすく見せてくれたからかな。

   こういう生き方が素晴らしいんだよ、
   とか教えてくれるのがいいな、
   しかも簡潔にやってくれるから素晴らしいな、
   って思ったんだよね。

谷田 具体的には、どんなエピソードがよかった?

2号 土のことなんて考えたことなかったけど、
   「私達は土に育てられてるんだね」
   とかそういう当たり前のことかな?

   農家じゃないし当事者じゃないから、
   自分の身よりも、先祖代々守ってきた土地が大事で
   自分達を育ててくれた土地を愛する人の気持ちなんて、
   今まで全然考えたことなかった。

   どっちが勝った方がいいのかという
   視点で私も最初は見てたけど、
   そういう細かい話で
   戦いが残す傷跡とか見せられて、
   戦争はそういうことが起きるよね、
   って気づいた。

   それから、
   おヒゲ(注:∀ガンダムのことです)
   川で洗濯する回があるじゃん?

   あれだと、「生きてるから汚れ物が出るんだよ」
   とか、そういう一言一言に感動したの。

   あと、ロボットとの共生?

   おヒゲが橋になったり、洗濯機の役割をしたりとかね、
   今まではロボットって戦う道具だと思ってたし、
   私は戦いとか興味ないし、
   戦闘シーンに興奮するわけでもでしょ。
   だから今までは、見なかったけど、
   そういう、ロボットは戦争に使わなくても役に立つし、
   人間とロボットの新しい関係の提案?
   みたいのが、すごいいいなーと思ったんだよね。

谷田 途中までは、ほのぼのした名作劇場みたいな話だったけど、
   あの「とんでもないもの」が出てきてから
   物語は一気にシリアスな展開になるじゃない?
   そのへんからどう?

2号 ほのぼのタッチで名作を見せられてて、
   平和の素晴らしさとかさ、戦争は起こってるんだけど、
   目の前のことじゃなかったから
   遠い出来事って気もしてて。

   でもその戦争がどんどん近づいてきて、
   あんな展開になって、身近な人が死んだりして
   すごいショックだった。

   幸せな話があったからこそ、戦争の話が
   厚みを増したんだろうね。

   あのへんからは加速度的にのめりこむよね。 
   1話完結じゃなくて連続物の面白さで、
   「次はどうなるんだろう!?」ってところで
   惹かれていった。

谷田 平和の時代に、それぞれの登場人物に思い入れが
   強くなっていくから、人が死ぬことが
   すごく悲しいし、イヤになるんだよなー。

   普通の戦争物だと、
   人が死ぬシーンに興奮したりしちゃうわけじゃない?
   「もっとやれやれ!」と思ったりさ。

   ∀が不思議なのは、「人に死んでほしくない!」
   という気持ちが強くなるとこなんだよね。

2号 敵でも味方でもね。

   一応、敵と味方になってるけど、
   どっちも言い分があってさ、どっちも間違ってないし。

   地球側からすると、月の人達を
   「すごい武力で一方的に侵略してきた」と思うだろうけど、
   月の人達にしたら
   「地球に戻って、昔のように仲良く暮らしたいんだよ」
   って思ってるわけじゃん?

   だから、どっちが悪いわけでもないのに
   そこがうまくいかない、もどかしさがあるよね。
  
   今の現実の世界もそうだと思うけどね。
   どんないさかいごとも。

   どっちも悪くないのに、
   うまくいかない悲しさはあったなぁ。

谷田 どっちの側も、いい人もいるし、しょーもない人もいるしね。

2号 そうそう。

   キースがね、一生懸命に月と地球のためにさ、
   ケーキを作るじゃん?
   それが壊されちゃったのはすごく悲しかったけど、
   壊した人達も交渉がうまくいくようにとか思って
   やったのかもしれないし。
  
   なんか、そういう「いい話」って
   あるようで、なかなかないからね。

   ドラマだと、目先の話が多いじゃない?
   恋がどうとか、仕事がどうとか、
   今日明日の話ばかりだよね。
   
   それはそれで面白いんだけど、
   でももっと大きな視点の物語だって、
   あっていいと思うんだよね。

谷田 なぜ農家があるのか?とか、
   なぜパン屋があるのか?
   なぜ戦争が起きるのか?とかね。

2号 そういうのも、大事だと思うんだよね。

   戦争の報道が間違ってるから
   正しく報道したいと思う人とか。

   人が生きていくためには食料が必要だから
   パンを作って敵味方関係なく、わけてあげたい、
   そういう形で戦争を止めさせようとする人とかね。

   そのへんもよかった。

   でも私は前半が好きだったなぁ。
   争いが大きくなる前の。

   あの世界観とか、世界で人が生きてるかんじが。


(つづく)





[トップへ]