タイトル■特集:∀〜新しい夜明ケ〜
書き手 ■市川先生

1999年春から2000年にかけての約1年間、
「∀ガンダム」というアニメーション作品が
ひっそりと放送された。それは「まったくガ
ンダムらしくない、まったく新しいガンダム」
だった。我々はかつてない感動を味わった。

そして今年2002年、待望の映画化!2月9日
から劇場版∀ガンダム「地球光」「月光蝶」と
いう2本の映画が同時公開された。

だが一般的にはあまり知られていないこの作品。
正直、観客動員が非常に心配…。ということも
あり、我々は勝手に立ち上がったのだった!
「一人でもいい!この機会に多くの人に見てほ
しい!」そんな願いを込めて。

ちなみに「∀」は「ターンエー」と読みます。

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■ ∀ガンダム初心者が見た、∀ガンダム劇場版 ■

ファーストインプレッション ∀
〜初心者のための「∀ガンダム 地球光・月光蝶」鑑賞の手引き〜


○はじめに …私は典型的な1stガンダムファン…○

去る2月9日〜10日にかけて、
オーガガ主宰でもある谷田俊太郎氏の主催で
千葉県市川市及び東京都板橋区をメイン会場に
「ヒゲ祭り」が挙行されました。

この祭りは
劇場版∀ガンダムを
オーガガ長野県人会の者たちが
鑑賞させていただくために
計画、実施された壮大な祭りだったわけです。
(…あまり世間には知られていませんが…)
祭りの詳細については「こちら」をご覧ください。

今回の祭りにおいて私は
他の参加者と大きく異なる存在でした。
私だけが
「∀ガンダム初心者」
だったのです。

1979年に「機動戦士ガンダム」が放映されたときは
ガンダムの存在すら知らなかった私。
その後の再放送の際に伝染的?に大流行したときには
1/60 RX−78ガンダムのプラモデル
(当時2,000円也)を
購入し、製作していた
いわゆる、流行に乗り遅れまいと
背伸びをしていたマセガキだった私です。

悲しきかな。
流行が下火になるのと同時に
私はガンダムワールドから
ほぼ完全に離脱していった者の一人です。

実はこういう人は多いのではないか!と
思う今日このごろです。
熱狂的なアニメファンでなくても
1stガンダムを見ていたという人は多いですよね。

そんな私ですが
このたび、谷田氏及び中村氏の
熱烈なラブコール(!ホモじゃない!)を受け
ホント約20年ぶりに
「ガンダムを見よう!」と意を決して
ヒゲ祭りに参加することになりました。

ただ、ヒゲ祭りに参加して
私自身も反省するところがありました。
これから∀ガンダムをご覧になる方の参考になればと思い、
筆(キーボード?)を取らせていただきます。

○私にとって、20年ぶりのガンダムは…?○

やはり20年の月日の流れを感じました。
というか、20年前よりも
わからなくなくなった。
それだけ私の作品を見る目が育ったと
自画自賛しておきます。

…ただ、
『テーマの重さ』を
ずっしりと感じました。

「地球光」・「月光蝶」ともに
見終わった後、ヒゲ祭り参加者の
重苦しい沈黙がありました。

他の参加者(全員TV版視聴済みの皆様)は
どうであったかは、定かではありませんが
私の沈黙は、
映像そのものに対する沈黙ではなく、
テーマの重さをかみしめての
沈黙だった…
ということだけ話しておきます。

ガンダムという『マンガ』としては
捉えるべきではありません。
富野由悠季監督が
アニメーションの世界、ガンダムの世界を通して、
とてつもなく壮大な「テーマ」について
私たちに本気で考えなさいと
問いかけ、訴えている…
そんな気はします。

これ以上作品そのものに触れることは
ネタバレになりそうですので
このへんで…。

○では、何に気をつけて観ましょうか?○

私が実際に見てみて
これから観る方が
これだけはしておくといいですよ!
と思ったことは以下の3点についてです。

1.人物の相関について

これが、正直言って難しかったです。
1stガンダムでは、
地球連邦軍とジオン軍の
コスチュームの違いから
敵、味方をはっきり区別することができました。
∀ガンダムでは
コスチュームから人間関係を見いだすことは
極めて難しいです。
(Zガンダムでも、苦しいですよね)
事前知識を全く持たずに見ることも
いいかもしれませんが、
理解しようと必死になっているうちに
終了…となると
もう1回見なくてはいかん!
という気持ちにもなります。

そこで
劇場でパンフレットを購入しましょう。
定価600円(税込み)です。
(それぞれに必要ですが)
特に「地球光」版p10〜13、「月光蝶」版p8〜9に書かれている
キャスト紹介を見ておくと
いいと思います。

特に「地球光」p12.13に書かれた相関図は
強い味方になります。

2.極めて日本古来の表現技巧を大事にしてつくられた作品です

なぜ、2つの映画としたのか?
「面倒くさい」とか
「金儲け」とか
考えないことが大事かと思います。

意図されてこのような形の上映となっていることは
間違いないと思います。
劇場版1stガンダムのような
半年に1本づつの上映形態でもなく、
イデオンのような
同時上映でもなく、
というところに
大きな意味があると思います。

「地球光」・「月光蝶」という言葉については
それ自体に深い意味があると考えてよいのですが
テレビを見ていた人にその意味を聞いて
見ることについては、私はお薦めしません。

これらの言葉が意味するものこそ
富野監督の劇場版∀ガンダムに
込められたメッセージを端的に表すものだと思います。
…感じてください。富野監督のメッセージを…

この、劇場版のサブタイトルになっているキーワードは、
映画本編において
『韻』
をふんでいます。
恐らくTV版では十分に表現できなかったのでは…?
短く、端的にまとめた劇場版だからこそ
強く感じることのできる韻だと思います。
そして
この韻こそが
劇場版∀ガンダムを語る上での
「生命線」だと思います。

3.なぜ、サイマルロードショー?

同時上映ではなく、
サイマルロードショー…
この形態を取ることで
全ての視聴者に、
「一晩」という、
貴重な「考える時間」が
与えられたと思うのです。

同時上映では
1作目と2作目の間の時間は
いいところ15分ということを考えますと
すべての人に与えられる
一晩という時間の
意味は重大であると
考えずにはいられません。

この一晩という時間を
どうすごすか?
この時間を大事にすごすことが
∀ガンダムという作品を
引き立てることにつながると思うんです。

まず「地球光」を見たら、その時点で
前に述べた「テーマの重さ(問題提起)」を
ずっしりと感じてください。

そして、取りあえず
お帰りください。

一晩、じっくりと
「地球光」に対する
あなたの思いをまとめましょう。

そして翌日、
あなたが感じられた
「地球光」への思いを抱いて
「月光蝶」を見ましょう。

あなたは「月光蝶」を
「地球光」の種明かしとしてでなく、
独立した1作品として
見ることができるでしょう。

つまり
「地球光」「月光蝶」を
単に長くなっちまったから
分けたと考えるのは、
適当でないと思うんです。

それぞれに持つテーマを
じっくりと味わうことが大事であり、
それを、全ての視聴者に味わわせるための
サイマルロードショーなのだと思うんです。

○アフターケア○

見たことを
あなたの心にしまってしまわないことが
大事だと思います。

そのために、
アニメの世界の話と
割り切らないあなたの心の広さも
大事になると思います。

やっぱり
∀ガンダムは
大人のための
…というと語弊があるか…
大人が楽しみ、考えることができる
アニメーションです。

できるだけたくさんの人と
∀ガンダムに感じたことを語ることができれば…

別にそれを語りあう人は
∀ガンダムを見ていない人でも構わないと思います。
だって∀ガンダムって
間違いなくあなたの「心」に近い世界の
お話ですから。

           (この項 完)

※編注「∀ガンダム」の上映劇場などについては
 オフシャルサイトを御参考ください。
 http://www.turn-a-gundam.net/






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