イラスト■小島
タイトル■哀愁のバーチャファイター4は覇王パイの夢を見るか?
書き手 ■大岡まさひ
『バーチャファイター』とバーチャ現象は
さまざまなものを内包しています。
悲喜こもごもな人間ドラマもあります。
現代社会の抱える矛盾や、ストレスや、欲望を
映し出す鏡でもあります。テクノロジーの進化や、
それがもたらす新たな問題や、新たな愉しみも
集約されています。そう、ですから、これは
きっと「バーチャ論」です。論です論。
「バーチャファイター」というゲームを通じて、
現代ニッポンの一側面が透けて見えるようなものに
なればこれ幸い。マジで、透けて見えると思います。
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03■Ver.C日記 (2001.01.28)
〜PS2版をさわってきたぞの巻〜
今日は天気がよかったです。
そして仕事の〆切も
とくに超メチャメチャ切羽詰まったものは
なかったので(のはず)、
午後三時くらいにふらーりと
新宿に行ってみた。目的地は西口にあるエルタワーというビル。
なぜなら、ここでPS2版VF4の
デモをやってるって情報をゲットしたからです。いや、PS2版、31日発売だからもうすぐ
出ちゃうんですけどね。
でも、やっぱ、見られるものなら
見ときたいわけですよ。
ちょっとでも先に。
もちろん、個人的にもすでにソフトと一緒に
スティックも二本、予約はしてあります。
だからもうすぐ家で思い存分好きなだけ
プレイできるんです。
でも、ちょっと見ときたいと
思ったんだからしょうがない。
だって、しょうがないんだから
しょうがないじゃないかっ!
(何を怒ってるんでしょうか、この人?)で、新宿に着き、
小田急ハルク前のカリヨン橋を渡って
エルタワーへ。
少し探すと、フロアの一角に見慣れた
ロゴを発見。
ハハハ、こんなオフィスビルみたいなとこに
ありやがるぜ。ワハハハハハ。『Virtua Fighter 4』
って書いてあるよ。アキラがコッチ向いてんぞ。
ちょいとばかしシュールな光景である。
こんなとこにバーチャがあるなんて、
どう見てもヘンだ。不似合いだ。まーとにかく、
そのVF4のロゴに吸い寄せられるように
その場所に近づいてみた。
すると、大会社の受付嬢っていう雰囲気の
おねえさんがニッコリとした笑顔を
浮かべながら僕に声をかけてくれた。「プレイ…なさいますか?」
「え? ハ、ハイ。お願いします」と僕は言って、いそいそと服を脱いで
ズボンを下ろした……
というのはもちろんウソで、
実際にPS2版VF4をプレイさせて
もらうことになったのである。つか前置き長すぎ。もっと端折れよ>俺。
えーと、その特設ブース内では
三台のPS2が稼働していた。
すでに先客がそのうちの二台でプレイ中。
残りの一台が空いていた。いや、実際にプレイできるってことは
事前に知ってたんですけどね。
けど、もっとこう、
人集まってて大盛況なんかな、と。
そんなにすぐプレイできるとは
思っていなかったんで、
ちーっとビックリ。
まあでも、考えてみたら、
月曜日の午後三時にわざわざ
こんなとこ来て、まったりと
バーチャやってる(物好きな)人って
いうのもそんなに多いわけないわな。ちなみに、ほかにやってた人は
三十代くらいの夫婦らしきカップルと、
やっぱり三十代(それも後半)と思われる
男性一人。
あとでやってきたのも、これまた
夫婦らしきカップルだった。
なんか、ここのバーチャ、いきなり
年齢層高いやんけ。どういうことやねん。ま、とにかく、
PS2版をやってみた感想、
書きます。●見た目のデキは悪くない、全然悪くない
ちょっとキャラの肌のつやがテカテカしてる
感じはしたけど、アーケード版と比べて
すごく劣ってる感じはしなかった。
少なくとも、昔のサターン版の
バーチャ2を見て思いっきりガックリきた
ときのような印象はなかったです。
昔のバーチャ2って、実は僕、
紹介記事をいっぱい書いたんですけど、
あれは正直、申し訳なかった。読者に。
あのときはほんとにゴメン。●たしかに「Ver.C」だった
持ちキャラのパイでプレイしてみる。
事前に情報を仕入れていた技を試す。
あーなるほど、たしかに違ってるわ。
へー、466P+Kカウンターって
やっぱ腹崩れか。
4Kもたしかに中段だな。
でも、別に技の出が早くなってたりは
してないなー。とか、いろいろ試す。
って、バーチャ知らない人は
「466P+K」とか中段とか
書かれてもわからないと思いますが、
そのあたりのテクニカルタームについては
また今度説明しますね。ちなみにきのう書いた、
「Ver.A」から「Ver.B」になった
ときのような
「別ゲー」っぽい違和感もなかった。
まあ、やり込んでいくとまた感想も
変わるとは思うんだけど、
とりあえずゲーム全体としては
「Ver.C」は「Ver.B」とすこぶる似てる。
というか、一部の技の特性等が変わってるだけ、
ということのようだ。●「KUMITEモード」が笑える!
最初は「アーケードモード」っていう、
いわゆるCPU戦をやってたんだけど、
そのうち別のモードが試してみたくて、
「KUMITEモード」というのを
選んで遊んでみる。これが可笑しい!
笑えるぞ! 何なんだコレ!このモードっていうのはですね、
僕もやってみてわかったんだけど、
街のゲーセンでバーチャをプレイしていると、
ほかのプレイヤーが次々と乱入してきて、
対戦になりますよね?
あれをシミュレートするモードなんである。最初はどうやらこっちもまだレベルが
低いらしくて、乱入してくる相手も
レベル、低い。今のバーチャは「段位」っていうのが
あって、アーケードでは、
下は10級から最高10段まで
プレイヤーの戦績で段位がついている。
その段位システムがどんなふうに
決められているのかという話はまた
説明が長くなるんでさておくとして、
とにかく、ゲーセンのバーチャの場合は、
プレイヤーがそれぞれ「アクセスカード」
というのを持っていて、
そのカードを筐体に付いてるスロットに
差し込むと、過去の戦績と段位、
そして自分でつけたリングネームが
ゲーム画面に表示されるのである。
ということを理解しといていただきたい。
理解していただけましたでしょうか?で、僕がやったPS2版では、
過去の戦績が3勝15敗の10級の人とか、
30勝33敗の7級くらいの人が、
次々に乱入してきたのである。
「人」つっても、ほんとはもちろん
コンピュータなんだけどね。
いわゆるAIってやつです。
しかし、やってみると、
「わー、こいつ弱いよ」
っていうような感覚がたしかにある。
「こいつ、下段ばっかだよ」とか。
リングネームも、なんかいかにも
ありそうなのが多くて笑った。
なにげにダサいリングネームが多い。
「女子高生なんとか」ってのが
一番印象に残ってるな。
「女子高生ユミ」とか、そういう
リングネーム。
女子高生のクセして意外と強かった。
投げ抜けとかしてくるし。で、何が笑えたかと言うと、
んーとですね、なんちゅーか、
その発想というか感覚。
ゲーセンで人相手に対戦するということ
自体をシミュレーションしちゃおうという、
ある意味バカバカしいまでに実直で安易で、
でも一生懸命な姿勢。
とかそういうことなんですが!
どうも伝えきれないなー、この感じ。とかやってるうちに別のお客さんが来て、
僕の順番は終了。
30分くらいはプレイできたと思う。さて、PS2版VF4をさわってみて
強烈に感じてしまったことがある。
それはズバリ、セガのダサさ、だ。いや、こんなにバーチャに
入れ込んでて、
失礼なことを言うようなんだけど、
僕はセガのゲームってどれもこれも
ダサいと思ってるですよ。ええ。バーチャに関して言えば、
ほんとにかっこよかったのは「1」だけだ。
当時、あれはマジでスゴイと思った。
3Dポリゴンのカクカクしたキャラを
操って闘うまったく新しいゲーム。
そのビジュアルと操作感とゲーム性は、
実にもう未来的で、美しく、クールで、
衝撃的だった。でも、「2」から先は、バーチャは
どんどんダサくなっていった。
ポリゴンキャラにはテクスチャーが貼られ、
動きもリアルになり、
背景やリングも凝ったものになっていったけど、
そうなればなるほど、
バーチャはなんだか汗くさいゲームになっていった。
むしろ、ひょっとしたら元からあったのかもしれない
ダサさ、汗くささが、強烈に前面に露呈してきた。そのダサさ、汗くささに
一番近いものを探すとしたら、
僕は「少年向けの劇画」を挙げる。
もっと言うなら、
バーチャは「少年マガジン」だと思う。
けっして「少年ジャンプ」ではなく。
「あしたのジョー」という劇画に
いつも漂っていた、あの独特の暗さというか、
やるせなさというか、
そして今読んだらけっこう絶対に
笑っちゃうようなダサさというか、汗くささを、
バーチャは引き継いでいると思っている。いや、セガっていうメーカーは
そうなんですよ。
ナムコとも任天堂とも違うカラーなんだよね、
そんで、セガファンっていうのは、
なんかこう、そのへんの拭いきれないダサさに
惹かれてるというか、愛しちゃってるフシが
あるんだよね。要するに今回、
PS2版VF4をやってみたら、
またもやその独特の少年マガジン的
ダサさに触れてしまったと。
それで僕は思わず笑ってしまいました、
とそういうことなのである。だって、「KUMITEモード」って、
ほんとにダサかったんだもん。
「シェンムー」っていうゲーム、
やったことある人、いますか?
僕は人がやってるのをちらちらっと
見たことがあるくらいなんだけど、
あのゲームを作った人と、
バーチャの総責任者とが、
実は同じ人なんです。
で、あのゲームもまた、実に
実直かつ安易かつダサくて汗くさくて、
そんなものにメチャメチャ制作費と
制作の労苦とテクノロジーを使いまくってて、
実にもう何とも言えないゲームでありました。
そして、それもまた彷彿としてしまったのです。
PS版VF4の「KUMITEモード」なるものに。いや……もちろん、僕も、
その独特のダサさは好きです。
好きじゃなきゃやってないよな、バーチャだって。ただ、小学生の頃は完全なる
「少年ジャンプ」派だったんだけどね。
(ちなみにアナタは何派でしたか?)いやーしかし、また話が思いきりズレたなあ。
しかも長いね、こりゃまた。
最後まで読んでいただいて申し訳ない。
お手間を取らせました。あ、もちろん、今日はPS2版VF4を
やったあと、
新宿のゲーセンに繰り出しました。
閉店間際の歌舞伎町のミラノにいた
六段アキラは強かったなあ。
今日唯一の三戦全敗だったよ。ほいじゃ、ばいちゃ!(←バーチャをもじったあいさつ)。
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