イラスト■小島千里

タイトル■哀愁のバーチャファイター4は覇王パイの夢を見るか?
書き手 ■大岡まさひ

『バーチャファイター』とバーチャ現象は
さまざまなものを内包しています。
悲喜こもごもな人間ドラマもあります。
現代社会の抱える矛盾や、ストレスや、欲望を
映し出す鏡でもあります。テクノロジーの進化や、
それがもたらす新たな問題や、新たな愉しみも
集約されています。そう、ですから、これは
きっと「バーチャ論」です。論です論。
「バーチャファイター」というゲームを通じて、
現代ニッポンの一側面が透けて見えるようなものに
なればこれ幸い。マジで、透けて見えると思います。

>バックナンバー


05■Ver.C日記 (2001.01.31)
〜Ver.C稼働開始の巻〜

本日1月31日はPS2版VF4の発売日、
そしてアーケードにおいても
ウワサの「Ver.C」が稼働開始する
記念すべき日でした。

あ、ちなみに僕、PS2版VF4を
まだ持ってないです。
ソフトとスティックを一緒に買えるところを
探して、ネットの「Amazon.co.jp」っていう
ネット通販サイトを見つけて予約したんですけど、
ここ、あとで聞いたら発送が
ちょと遅めみたいなんですよね。
ほかで買えば発売日当日に届いたり、
場合によっては前日に届くこともあるらしいんだけど、
Amazonだと「発売日に発送」されることが多いとか。
実際、「発送しました」メールが今日来てたしなあ。
ってことは、PS2版VF4は明日あたり
僕の手元に届くことになりそうです。

さて、それで当然、今日も僕はゲーセンに
足を運んでみたわけですけど、
入ってましたよ、「Ver.C」。
いや、ただね、かなーり地味に稼働してました。
僕が回ってみた新宿のゲーセン3、4店では、
貼り紙らしきものもとくになかった。
それどころか、画面見てもパッと見、
「B」なのか「C」なのかすら全然わかりません。

まー、じゃあ、とにかくやってみるかと
100円入れてプレイしてみたところで、
最初は「んー? どうなんだこれ?」って感じで
やっぱりまだよくわからない。

で、そのうちやっと、対戦が終わったときに
画面の下の端っこに「Ver.c」と
表示されているのを見つけて、
「あー、やっぱそうなのね」と納得した、
そんな具合の状況でした。

ということはですよ、
これだと雑誌とかネットを
そんなにチェックしてないユーザーは、
バーチャのバージョンが変わってるなんて
まず気づかないんじゃないかと思うんだけど。

そいで普段どおりにプレイしてみたら
なんかちょっと前と様子が違ってる、
入ってたはずの空中コンボが入んないし、
ガードされても次の攻撃が入ってた技が
逆に相手に投げられちゃったりしてて、
なんかヘンだぞコレ!?
とか思っちゃったりしてたんじゃないだろか。

もちろん、一方の僕は知ってるわけで、
いや、それどころか事前に各キャラの
技の変更点だって
なんとなくは頭に入れてるから、
その分、勝負に関してはかなり有利だった
気がしました。
そういうのってちょっと
ズルいような気もした。
対戦相手が戸惑ってるうちに
勝っちゃったよーん状態になったパターンが
多かったような。
ちなみに、今日は10試合くらいしかしてないけど、
負けたのは2回だけでした。

まあね、そりゃこっちは勝ちゃあそれで
OKではあるんだけど。

あと、どのみちヘビーユーザーつーか、
ある程度やり込んでて強い人は、
バーチャがバージョンアップしたことくらいは
当然知ってるだろうし、
「どの技が〜」という情報についても、
知ってる側が有利だよねってことは
了解していると思う。
だから、そういう相手との対戦ならガチが
できるわけです。
お互い、「C」になってどうよ? って感じで
探り合いしながら闘うことができる。

というわけで、また少し話が逸れるけど、
バーチャというゲームは
ある意味「情報ゲー」でもあるんだと思うです。
情報ゲーというのは今、僕が作った言葉ですが。
あと、情報だけが最重要ではないとも思うんだけど、
でも、それが占める割合は、かなり、大きい。

わかりやすい例で言うと、
ゲームが発売されたばかりの頃が、まずそうです。

バーチャでは、稼働直後は
「使える新技」のコマンドを知ってる人が有利、
という時期がまずはしばらく続きます。
技のコマンドは、最初のうちは一部しか公開されない。
どんなコマンドでどんな技が出るかは、
自分たちで探してみてネ、ということになっている。

だから、稼働し始めてすぐに
ちょっと変わった技を出したりしてると、
たまに見知らぬ人が聞いてきたりします。
「あの技どうやって出すんですか?」って。
まあ、そういうのはなかなか楽しいんですよ。

「いや、あれはですね、実は後ろ前前P+Kなんですよ。
 しかもP+K押しっぱなしでタメ攻撃も出せます」

とか、ちょっと得意げに教えてあげたりして。

「マジっすか? ちょっとやってみます。
 ありがとう」

と相手もやけに嬉しそうに感謝してくれたりもする。

いやーほのぼのしてていいですよね。
まだまだ牧歌的な時代とでも言いましょうか。

しかし、やがてもっと時間が経つと、
同じような「情報格差」が、
もっと決定的な勝ち負けの有利不利状況を
作り出すようになる。

たとえばあるキャラの「キツイ連携」が
開発されて広まったとします。
そのキツイ連携への対処の仕方を
「知っている人」と「知らない人」の差、
これはかなり大きい。
だって、知らない人は、もしもその相手に
延々と同じ連携を出し続けられたら、
絶対に勝てないんだから。

いや、中には、情報だけでなくて
「知っててもなかなかできない」っていう
対処法もあります。

ジャッキーというキャラの
「→P←P」という技(肘打ち後に裏拳を出す)は、
最初の肘をガードしたら二発目をちょっとだけ
しゃがんでかわせばいい。
たとえばそんな情報があったとします。
つーか、実際にそうなんだけど。

でも、プレイヤーによっては、
なかなかとっさにしゃがむのって難しい。
けど、それでもね、対処法を情報として知っていれば、
練習することはできるんだよね。
対処法を知らなくてドツボにハマるのとは雲泥の差です。
しかも、こういう「キツイ連携」のたぐいっていうのは、
対処法を自分で探すのが難しいからこそ
「キツイ連携」なわけでして。

もういっこ例を出そう。

バーチャには全キャラが
持っている「下P」という技があります。
下Pとはしゃがみパンチのことです。
キャラがしゃがんでカッコ悪いパンチを出すという
ただそれだけの技。

しかし、この「下P」はなかなか重要な技です。
伝統的にバーチャでは重要な技だった。
たとえば「4」では「下P」を
カウンターで相手に当てると、
「ほぼ確定」で投げ技が決まります。
投げが入らない相手には、出の早い中段技で
カウンターを取ることもできます。

しかし、それだと今度は「下P」ばっかり
やたらと繰り出す人というのが現れる。
実際、昔の「3」の頃の対戦っていうのは、
後期はひたすら互いに「下P」の
打ち合いに終始するっていう戦術に
なっちゃったりもしたもんです。
「下P」はガードされてもあまりリスクが
高くない技なので、とにかく接近戦になったら
「下P」を連打して、当たったら投げや打撃に
つなげる、というローリスクハイリターンな
戦術が成り立つんですよ。

そいでね、この「下P」ばっかり出す
人っていうのは、相手にすると実にウザいですよ。
つーか、見てると笑えるよ、アレは。
こっちが何かやろうとするととにかく下P連打。
で、笑っているうちにカウンターくらって
投げられたりもするのでムカつきます。
「この下P猿野郎がっ!」と思って
連コインすること必至。
すると、また相手は「下P」連打。
100円がどんどん消えていくわけですな。

だから、逆に「下P」連打はカッコ悪いということで、
あえて「下P」を禁じ手にしてるって
人もいたりします。
ま、それはそれでまた極端だと思うんだけど、
俺なんかは。

というわけで「4」では、「下P」は
相変わらず重要ではあるんだけど、
でもそれに対抗できる
技も増やされることになりました。

てか、その前にそもそも「4」では
「下P」は立ちガードすることができるようになりました。

本来、バーチャでは、
相手下段攻撃はこちらはしゃがみガード(上段攻撃はスカる)、
相手上段攻撃はこちらは上ガード(下段攻撃は当たる)、
相手中段攻撃もこちらは上ガード(下段攻撃は当たるし、
こちらがもしもしゃがみガードすると中段攻撃は当たってしまう)、
というのが大前提のシステムです。

ところが、「4」ではその法則(基本ルール)が
一部破られることになりました。
「下P」は「特殊下段」という
属性を持つ技ということで、
立ちガードできるようになっているんです。

そして、さらに
「下P」を潰すことのできる技もできました。

「特殊上段」技というのがそれで、
相手が「下P」を出した場合、
その技は上段攻撃なのに
「下P」を粉砕してくれるのです。
相手の下Pを読んで出すと気持ちよく当たる
ざまーみろな技です。

たとえば、さっき書いたジャッキーの
「→P←P」(肘打ち後、裏拳)の二発目の裏拳が、
この特殊上段技でした
(「Ver.C」ではただの上段攻撃に変わったらしいけど、
 どうなんだろう?)。

ところがですね、ここまでかなり
めんどくさい説明をしてきちゃいましたけど、
バーチャのライトユーザーは、
そこまでいろいろと
システム的にいじられている「下P」に関する
アレコレのことなんてちゃんとわかってはいないですよ。

だって、こういうのって、
誰かに教えられでもしなけりゃ
絶対にわかんないんだもん。
たかだかしゃがんでパンチするだけの技に、
それほどまでの歴史と、経緯と、新しい対抗手段が
複雑に絡んでいるなんて、
そう簡単に思い至るわけがない。

でも、知らなきゃやっぱりボコられるんです。
少しは勝てても、やがてすぐに壁にぶち当たります。
バーチャが「情報ゲー」である理由は
そんなところにあるわけです。

ならば、彼ら彼女らは、
そんな情報をどうやって得ればいいのか?

今は圧倒的にインターネットで調べるのが早いです。
たとえ「下P」に関する情報を
直接、見つけることができなかったとしても、
どこか親切な人がいそうな掲示板で、

「ジェフリーに下パンチを出されて投げられてばっかりで
 殺されたんですけど、なんでですか?」

とか質問すれば、誰かがとりあえずの
対処法くらいは教えてくれるはずです。

インターネットがなかった時代はパソコン通信が
その役割を担っていました。
あるいは、口コミ。
これは今でもちゃんと残ってますけどね。
師匠になっていろいろ教えてくれる友達を先に作るとか。
あ、それとゲーム攻略雑誌というのももちろん
情報源としてはあり得ます。
でも、「1週間前から流行り出して、今日やられたキツイ連携」
に対抗する方法を雑誌が教えてくれるのは、
大体1カ月後だったりもしますけど。

つまりは、そういうすごい時代なんですよね。今は。
バーチャで勝つには
インターネットで情報を得るべし。
ネットやってない人はそれだけで不利な時代だよね、
言いかえれば。

「Ver.C」に関しても、しかり。
今はネットで事前情報を把握し、
実際にプレイして得た新情報をまたネットで
交換しあい、
それを吟味していち早くプレイに
採り入れた人が勝つ。
そういうのがたぶん、
今後一週間くらいは続くものと思われます。

いや、待てよ?
すでにPS2版VF4をゲットしてるヤツも(2、3日前から)
いるんだから、
そいつらはVer.Cの変更点も含めて、
コンボダメージの調査とか、
硬化フレーム検証とか、
各キャラの連携対策とか
研究しまくってて、
それで改めてゲーセンに繰り出そうとしているに
違いないよなあ。

実は今日のゲーセンは
意外に人が少なかったんだけど、
その理由はそんなところにも
あったのかもしれない。

ってことは俺、
出遅れ組なんじゃないかっ!
まじーじゃんそれ。
ゲーセンでVer.Cの
ことも知らない風の人のことを心配したりしてる
場合じゃなかったよ!

なーんてことに気づいたので、
今日は突然ですが、このへんで。
これからちょっと、ネットをいろいろ調べてみます。

そうそう「フレーム」についても
書かなきゃな。
それはまた今度のネタにします。

ほいじゃ、ばいちゃ!(←バーチャをもじったあいさつ)。








[大岡まさひの自己紹介]

[トップへ]