イラスト■小島千里

タイトル■哀愁のバーチャファイター4は覇王パイの夢を見るか?
書き手 ■大岡まさひ

『バーチャファイター』とバーチャ現象は
さまざまなものを内包しています。
悲喜こもごもな人間ドラマもあります。
現代社会の抱える矛盾や、ストレスや、欲望を
映し出す鏡でもあります。テクノロジーの進化や、
それがもたらす新たな問題や、新たな愉しみも
集約されています。そう、ですから、これは
きっと「バーチャ論」です。論です論。
「バーチャファイター」というゲームを通じて、
現代ニッポンの一側面が透けて見えるようなものに
なればこれ幸い。マジで、透けて見えると思います。

>バックナンバー


06■Ver.C日記 (2001.02.02)
〜PS2版VF4がやってきたの巻〜

こないだ日記連載を一日空けてしまったのは
オーガガの飲み会で朝までコースに
なったからですが、
きのう一日空いてしまったのは、
PS2版VF4で遊びまくっていたからです。
おととい、目が覚めたら荷物が届いてた。

いやあ、ちょっとやり込んでみて
改めて思ったけど、コレ、
なかなかデキのいいゲームです。

まず、「Ver.C」という新バージョンを
アーケード版と完全に共有していて、
しかも同時発売というのがやっぱりスゴい。
こういうのはバーチャの歴史の中でも
かつてなかったことです。

昔のバーチャは、コンシューマ向け
(家庭向け)のものは
けっこうショボかったです。
「あれはあれでいい」という意見も
ありはしたものの、
アーケード版とは決定的なところで
「違うゲーム」だったのが、
アーケード版ファンにとっては
致命的でした。

グラフィックやなんかは別に違ってても
いいんすよ。
むしろそれは、ゲーセンで見るほうが
よくデキてて当然。
読み込みが遅いとかいうのも、
ある程度なら我慢できます。

けど、「フレーム」の仕様が
違ってたりすると、
これは致命的です。
やり込む気が一気に失せる。
このフレームなるものについては
たぶんあさってあたりに(なんで「あさって」なんだヨ!)
また詳しく触れることになると思うんで、
今はこれが違ってるとどうなるかと
いうことだけを書いておきます。

えーとたとえば−−。
バーチャには「浮かせ技」というのが
あって、アッパー系の技なんかを
当てると敵が空中に浮きます。
で、その空中にいて、落ちてくるまで
まったくの無抵抗な状態になった
相手に対して、即座にいろんな技を
連続で叩き込むことができる。
これを「空中コンボ」と言います。
爽快で、理不尽で、
叩き込む技を趣味や技巧力によって変えたりもできて
ちょっと魅せ場的シーンでもあったりする、
「空中コンボ」は、そんなバーチャの伝統芸の
ひとつであります。

しかーし!
もしもアーケード版とPS2版とで
技の発生や硬化のフレーム数、
あと当たり判定やらキャラの体重設定なんかも
そうかもしれませんが、そういう細かい仕様が
違っていたら、この「空中コンボ」が、
アーケード版では入ってたのに
PS2版では入らなくなる、
とかいうことが起こってきます。

いや、つか実際、
「2」や「3」の
コンシューマ向けバーチャ作品はそうでした。

アーケード派にとってはこれじゃあ
お話になりません。
「こんな空中コンボもギリギリ入りまっせ」という
デリケートさを求められる研究開発もできないし、
普通の地上戦でも有効な連携やら戦術を
試行錯誤しながら見出していくような作業
にも支障をきたす。

何より、「微妙に内容が違うゲーム」を
やり込んでしまうとなんかむしろ混乱する。
家で遊んでた感覚でゲーセンでやってみると、
どーも感覚が違うんでやりにくいとかいう
ことだって出てくるかもしれません。

その点、今度の「4」に関しては、
完璧な調整がなされているみたいです。
アーケード版で入る空中コンボは
PS2版でも入るし、その逆も同様。
おそらくそういうことになっているはずです。

聞けばアーケード版のVer.Cと
PS2版のVer.Cとは、
今までのいわゆる「移植」とは違って、
むしろ「同時開発」という感じで
作られたものなのだとか。
こりゃあナニゲにすごいことです。
ずいぶん前ですけど、「2」の頃には、
セガの人自身が
この手の仕様をアーケード版と
コンシューママシン版で
まったく同一にするのは不可能だと
断言してたくらいですから。
なぜかというとマシンの仕様自体が
違うからだそうです。
まあ、細かい専門的なことは
僕も聞いててよくわかんなかったんですが、
とにかくそういうもんなんだ、と。
まったく同じゲームをやりたいなら
100万円出して筐体を買うしかないんだ、
と思っていました。

でも、どうやら時代は変わったみたいです。

PS2版VF4には、それに加えて
プラスαの要素もいろいろ入ってます。
個人的に「ほほー」と思ったのは、
VF4の理論を学び、練習できる
トレーニングモードというのが
キッチリ入っていた点です。

そこでは先日書いた「下P」をめぐる攻防に
ついても触れられていて、
「しゃがみパンチを連打する相手への対処法」
みたいなことも学べるようになっている。
ほかにも、「避け投げ抜け」「ガード投げ抜け」
といった、アーケード版の中級者以上なら
誰でも知ってるけど、初心者にはなんのことやら
さっぱりに違いないテクニックなどについても
解説があり、練習もできるようになっています。

あと、起き蹴りを潰す方法というのも
あったんですけど、
これは「ダメージ21以上の技を相手の起き蹴りに
タイミングよく重ねると、相手の起き蹴りを潰して
ヒットする」というものでした。
いや、こんなの俺も知らなかったんですけど。
これ練習したらかなり強まるよ、うわヤッベー、
と思ってさっそく何度も練習しました。
でも、なかなか難しかったので、
半分安心しましたけど(だってみんなゲーセンで
これやり出したらかなりウザいだろうなーと思って)。

というわけで、PS2版VF4は、
バーチャというゲームにおける
「情報ゲー」的要素についても
とりあえず網羅的に解説されており、
かつ学べるようになっている。
つまり、これからバーチャを始めたい人、
何度かゲーセンでもやってみたことくらいはある人、
「1」や「2」や「3」をやってたことがあるけど、
まだ「4」はやり込んでない人、
「4」をやってはいるんだけど初段どまりな人、
などなどにとっては、非常に強力な練習ツールに
なり得ると思います。

そしてすでにアーケードでやり込んでいる
中級者以上のユーザーに対しては、
「Ver.C」を研究するための
シミュレーション・ツールとしても
有効なものになっているわけで。

そうなんすよね、あくまでベクトルは
アーケード版VF4に向かっているという
ところが実にどーも面白いとこです。
PS2版VF4はかつてなかった
最強の攻略本(?)です。
第一、届いた荷物を開けたらバーチャカードが
一枚ついてきてたし。
これはやっぱり、PS2版でがっつり練習して、
アーケードで対戦してさらにジャンキーに
やり込んでくださいという
セガのメッセージでしょう。
そりゃセガとしては営業戦略的にも
それが一番おいしいんだろうなってことで
理解もできる。

ただ、PS2版VF4には「A.I.モード」
というのもあって、これはマイキャラに
いろんな技や連携を覚え込ませて、
いろんな相手と闘わせて強くしていくという
一種の育てゲー的要素のあるモードらしいです。
これなんかは完全に「自宅ゲー」向けに
作られているだと思います。
ま、でもそっちは僕自身はまだそんなに
興味持てないんで、
ほとんどさわってないんですけど。

あ、あとね、
これだけ優秀な練習&シミュレーション・ツールが
できちゃうと、
はたしてプレイする側は今後ほんとに
ゲーセンで対戦をしまくりたくなるのか?
というのもけっこうでかい問題として
あるような気もしてきたです。
このセガの戦略はけっこう諸刃の剣なんじゃないかと
いう危惧もないとも言い切れない。
いや、俺が危惧してもしょうがないんですが!

もしかしたら、VF4は
新世紀エヴァンゲリオンで言えば
「第弐十壱話 ネルフ、誕生」
くらいのとこまで来ちまったのかもしれない。

などとよくわからないことを思いつつ、
今回はこのへんで。

ほいじゃ、ばいちゃ!(←バーチャをもじったあいさつ)。






[大岡まさひの自己紹介]

[トップへ]