イラスト■小島千里
タイトル■哀愁のバーチャファイター4は覇王パイの夢を見るか?
書き手 ■大岡まさひ
『バーチャファイター』とバーチャ現象は
さまざまなものを内包しています。
悲喜こもごもな人間ドラマもあります。
現代社会の抱える矛盾や、ストレスや、欲望を
映し出す鏡でもあります。テクノロジーの進化や、
それがもたらす新たな問題や、新たな愉しみも
集約されています。そう、ですから、これは
きっと「バーチャ論」です。論です論。
「バーチャファイター」というゲームを通じて、
現代ニッポンの一側面が透けて見えるようなものに
なればこれ幸い。マジで、透けて見えると思います。
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07■Ver.C日記 (2001.03.24)
〜続・PS2版VF4がやってきたの巻〜
みなさん、あけましておめでとうございます!
…とかしょうもないボケを書かざるを
得ないくらい超久しぶりの原稿になってしまいました。
ほんと、ごめんなさい(誰に謝っているのか
イマイチ曖昧ながらも、とりあえず)。この間、僕は何をやってたかというと、
バーチャやってました。
ええ、要するにバーチャにハマり過ぎて
この原稿が書けなかったわけです。PS2版VF4と、
フレームデータの載った攻略本(通称:青本)を
入手してからというもの、やらねばならないことが
メチャメチャ増えてしまいました。
なんか、ほとんどバーチャ地獄ですわ、これ。
なんでこんなにバーチャで苦労してるのよ俺ってばさー、
と思うことしきりです。一体どういうことなのかというと、
僕はここ1ヵ月くらいを「戦術の見直し」期間に
当てることにしたのです。僕はパイというキャラをメインに使っているのですが、
フレームデータが公開されて、さらにそれを
PS2版VF4で完全に検証することができるように
なってから、今まで適当にやっていた僕なりの闘い方
というのを改める必要性に迫られました。
だって、そうしないとほかのバチャっ子たちに
ついていけなくなっちゃうんだもん、です。たとえば青本と呼ばれる攻略本からは、
パイのP(パンチ)をヒットさせたあとは
5フレーム有利だ、という情報を得ることができます。
ということは、Pをヒットさせたあとは出の早い
中段技と投げで二択が迫れるということなのです。
それが数値データ的に裏づけされたということなのですよ。それとか、なにー腿登裏旋脚と燕陣旋風脚は
足先当てなら相手の投げも確定しないのかよ、マジで?
とかいうこともわかりました。
ということはこの2つの技を中・長距離戦で出すだけで
二択になってて、しかもガードさせたあとのフレーム差を
考えると、そのあとに相手の技をさばく
上歩掃冲掌が決まりやすいっていうことなのです。
そうなんですよ、決まりやすいんですよ。まいったな。とかいうことを延々考えては、いろいろ
フローチャートやらバーチャメモなども作り、
それをPS2で練習して、ゲーセンで実戦投入するという
作業を繰り返していきました。ほかには、PS2で技や連携の練習もしました。
最初にやったのはPを打ってから
一瞬しゃがみダッシュをして、
燕青虎双破という技を出す練習。しゃがみダッシュというのは、
キャラがしゃがみながらダッシュするという
移動法(ステップとも呼ばれる)の1つなんですが、
僕はこれが昔から苦手だったので、
この際、徹底的に覚えておこうと
夜な夜なPS2版VF4のトレーニングモードで
反復練習したわけです。それから、他キャラのキツイ連携に対する対処法。
PS2版VF4のトレーニングモードには、
相手キャラの行動を記録しておいてそれを再生する
という便利なコマンドが用意されているので、
それでジャッキーやラウやアキラによくやられて
対処法のよくわからなかったやつを試してみて、
どうすりゃ防御や反撃ができるのかというのを
検証したり、練習しました。これは街のゲーセンでやられたらそれを
覚えといて、家に帰ってじっくりPS2で研究する
というようなこともできます。つーかやりました。まあ、大まかなには以上のようなことなのですが、
なんだかけっこう熱心ですよねえ。
我ながらなんでこんなに熱心なんだよと思います。
いやむしろ、かつてこんなに熱心に何かを
やったことってあったっけ俺、とか思ったりしています。
でも、思っちゃいるが、やめられない。
飽きそうで飽きないんだよな、これが。実に不思議です。とにかく、この1ヵ月半くらいは、ずっとそんな調子です。
基本的にはゲーセンで対戦して、
気づいたことを覚えておいて、
青本で技の性質やフレームを確認して、
家のPS2で研究・検証・練習して、
それをまた翌日のゲーセン対戦に
フィードバックするわけですね。熱心です。あ、もちろん、こういうことをやっているのは
僕だけじゃなくて、
巷のバチャっ子たちはもっといろいろ
知識やスキルがありますから、
PS2版VF4と青本が出てからというもの、
連日のようにいろんな新情報が(主にネットで)
報告されたりもしました。
そのたびにその新情報も取捨選択して
自分の戦術に組み入れるという
作業もやってみたりしたわけです。んーと、あと、ここらでいい加減
「フレームとは何か」
というのを説明しなきゃと思うのですが、
どうも僕にはうまく説明できなさそうで
心許ないんですよね。ハハハー。まあ、でも無理やり説明を試みてみるとですね、
要するにフレームっていうのは、
バーチャファイターというゲームにおける
「時間の単位」なのです。1フレームは、リアル時間に直せば60分の1秒です。
で、「青本」には何が書いてあるかというと、
たとえばパイのP(パンチ)は、
発生まで11フレームかかって、なおかつ、
相手にガードされると「1フレーム有利」、
通常ヒットすると「5フレーム有利」、
カウンターヒットすると「9フレーム有利」である、といったことが情報として載っているわけです。
この数字は、相手の硬化(つまり動かせない)時間と、
こっちの硬化時間とのフレーム差をもとに算出されたものです。
つまり、パンチをガードさせただけで、こっちは
60分の1秒有利な状況になるということです。たったの60分の1秒かい! と思ってしまうのは
素人さんでして、1フレーム違うだけでもバーチャという
ゲームの中ではけっこうな差となって現れます。
一応、その1フレームの差が有利不利に結びつくスキルを
対戦する両者が持ち合わせているという状況下においては。すると、相手が取ったときに効果があると
思われる行動と、こっちがそれに対して取るべき行動と
いうのが、ある程度絞れてくる。
とまあ、そんなようなことです。さて、と。
閑話休題。とにかく、なんだかんだとそんなこんなの1ヵ月半を経て、
いろんな研究や練習を僕はやってきました。
それで果たして、僕のパイは強くなったのでしょうか?答えは「NO」であるといわざるを得ません!!
つか、ふつーに弱まっちゃったんですけど、俺。
バーチャカードを使って対戦してると、
勝率と段位というのが出るんですが、
僕はこの1ヵ月半のあいだに勝率が10%、
段位も1段、降下しちゃいました。
なんでだーっ!?原因はいくつか思い当たりますが、一番大きいのは、
「新しいことをやろうとすると、下手クソになる」
ということが挙げられます。
つまり、適応力っちゅーか対応力っちゅーか、
そういうのが全然足りないんですわ、俺。
戦術変えようとしてるのはいいんだけど、
細かい技や連携の出し方のスキルとか、
相手が予想外の行動をしてきたときへの
柔軟な対応力とか、
そういうのが、ぜーんぜん、欠けている。
そのため、適当にやってた前の方がまだ
戦術(というかスタイル)として固まってた分、
かえってよかったりもする。
しばらくは戦術なんてなきに等しいような
情けない状態が続いていました。ま、
机上の理論は実践できなければただの空論に終わる−−
ってことです。
一方、ちまたの巧い(しかも若い!)プレーヤーたちは、
それぞれがやっぱり研究した新戦術なんかを
ガンガン上手に取り入れて、
前より一層パワーアップしてきてるから、
そういう人を相手にすると「もうダメだ〜」
状態になっちゃうのでした。
いやもう、歯が立たない。ほんと、マジな話、僕の新戦術なるものが
ようやく形になってきたのはごく最近のことです。
最近、やっと段位もまた4段に復帰して、
勝率もじわじわ上がり始めました。
苦手だったしゃがみダッシュを使ったステップも
そこそこ使えるよになってきて、
ダメージ効率のいい空中コンボを
入れられるようになったり、
相手キャラのキツイ連携にも少しは
反撃できるようになってきました。要するに、やっとなんとかちまたの
レベルについていっているという状況です。もっとも、ついていっているのはどのレベルだよ
というのがまた問題ですが。
「十段」とか「覇王」とかのレベルには
全然ついてってません。
次元がちゃいます、あの人たちは。
3〜5段くらいのプレーヤー同士でやる分には、
なんとか試合になるかなーという程度のです。その「段位」の話とかは、また書くつもりでいます。
とにかく、このところずっと、そんな感じで
バーチャのことを書く暇なんてなかった、と。……いやいや、それは実は真っ赤な言い訳でして、
ほんとは全然自分が強くなれなくて、
ヘコみぎみで書く気がしなかったというのが真相です。なんでこんなに弱いんだよー、俺のバカっ!!
と何度、思ったことか。
何度、筐体の前で泣きそうになったことか!
もうバーチャなんかやめようとも思いました。
もう40歳なのに!
そんなことで思い悩んでていいのか!
アホちゃうん? 自分。ま、今も、バーチャ向いてないぜ絶対、
とは思ってますけど、
でもしばらくはまだやるつもりです。
せっかくやっと
ついていけるようになったんだしというのもあるし、
今はまだバーチャに見切りをつけてない
プレイヤー同士が残ってて、対戦自体が面白いというのもあるし。今回はこんなところで。
ほいじゃ、ばいちゃ!(←バーチャをもじったあいさつ)。
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