第三章 道程

財布紛失のショックを隠しきれない空元気の俺を乗せたマーチは28に運転されて高速を進む。
旅行記を書くのはこれで4回目だが正直今回の旅行について、特に財布紛失直後については記憶が定かでない。
なんとか思い出しながら書き進むとしよう。

「ロードと道路って似てるよね。」
などと誰かが言った。

「オレンジ道路」
「道路オブメジャー」

このときの俺にはダジャレレベルのボケをするしか余裕がなかった。
だがこの状況でもヒットを飛ばすことに成功した。
苦しいときでもヒットは打つ、まるでイチローだ。

「道路・オブ・ザ・リング」

舗装された道路をフロド率いる旅の仲間が指輪を捨てる旅に出る。
滅びの山へ続く舗装道路はアウトバーン並みの直線だ。
恐らく三部作の最後を飾る作品のサブタイトルはこうなるだろう。

「道路・オブ・ザ・リング 〜王の民営化〜」

こんな何も生み出さない会話を続けながら誰も仮眠を取らない状態で集合場所の諏訪PAに到着した。
なんと予想外にも我々はまだトップだった。
俺たちは財布紛失にもめげずに見事キャノンボールを制したのだった!

キャノンボール・・・アメリカ大陸を1番速く走り抜けた者が優勝という破天荒なカー・レースを描いたアクション・コメディ。B・レイノルズ、R・ムーア、J・チェンら豪華スター共演。コメディ映画(1981)

他にもいろいろと盛り上がる話があったような気もするがイマイチ思い出せない。
だが諏訪インターへ着く頃にはやや吹っ切れてきていたのは確かだ。
よく考えてみると財布を失くしても

・現金 → 諦めるしかない
・免許証 → 再発行可能
・キャッシュカード → 停止して再発行可能
・クレジットカード → 停止して再発行可能
・その他会員証 → 少し金はかかるが再発行可能
・ポイントカードなど → 諦めるしかないが大した金額ではない
・2年前のクリスマスでもらった財布 → これが痛いが許してくれるだろう

ということで現金を諦めれば大きな問題はないような気がしてきた。
むしろ心も体も軽くなったようにも感じる。
プラス思考万歳!!
しかもラッキーなことに高速代を払うのに使ったクレジットカードが車の中に残っているではないか。
なんとかなるって!

こんな感じでみんなと合流したのであった。