日が暮れ、辺りも暗くなりはじめました。まだ僅かに残る空の明るさに、杜の影が浮かび上がります。昼間聞こえていた小鳥のさえずりに代わり、夜に活動する鳥や虫たちの静かな唄がはじまります。それと同時に、杜の雰囲気が変わったような印象を受けます。杜から感じていた気配がより一層強くなったのかもしれません。
神社の森、いわゆる鎮守の杜(モリ)には他の森とは違った不思議な雰囲気を感じます。人間の知識や頭で考えたことだけでは捉えきれない、何かを感じるのです。もしかしたらそれは、太古、人々が自然に対して感じていたものと同じかもしれません。
古代の人々は今よりも自然との繋がりが強かったはずです。自ずと感性も研ぎ澄まされ、自然の背後にある気配を鋭敏に感じとっていたのかもしれません。そして、より強くそれが感じられた場所を鎮守の杜としたのでしょう。
鎮守の杜とは神がおられる場所、神域であり、人々はその杜を大切にしてきました。それは各地に多く残る鎮守の杜からも覗えます。
また、鎮守の杜に限らず、自然すべてが神そのものであるということから「むやみやたらと森の木を切ってはいけない」という精神が生まれたのでしょう。それが結果的に森を自然を護っていたのだと思います。
昔の人の智恵、直観力というのはつくづくすごいものだと思い知らされます。