闇夜に浮かぶ月。なんとも言えない不思議さに魅せられます。月を見上げ想いにふけると時間も忘れてしまい、いつまでも見ていたい気持ちになります。
遥か昔、人々はやはり月を見上げたのでしょうか。月に魅せられ、同じように想いを馳せたのでしょうか。・・・あるいは、そこに神を見たのかもしれません。
耳を澄ますと太古のしらべが風の流れに乗って聞こえてくるような気がします。シャンと響き渡る鈴の音、神楽唄と巫女の舞。月明かりに照らされた草原に巫女神楽。そんな幻想的な光景が目に浮かんできます。
不思議な感覚です。時代も場所も違うのだけれど、同じ月を見ている。時空を越えて、今、自分と彼らが同じ月を見て、同じように想いを馳せている。どこかで繋がっている。そんな感覚さえ覚えるのです。
「夜見」とは夜を見ることですが、他の意味も含みます。
夜とは闇、宇宙の姿です。逆に言うと、昼の明るい世界というのはこの地球(星)の半分、宇宙全体で言えばほんの僅かしかありません。夜、闇の世界というのがこの宇宙の姿です。そして夜とは神々の世界でもあります。本来、日本の祭り、神事は夜に行われていたといいます。「神は神々の世界である夜に出ていらっしゃる」ということから、今でも昔の形を残す神事は夜に行われています。夜とは宇宙の姿であり、神々の世界そのものなのです。
つまり「夜見」とは神々の世界を見るということです。夜に月を見るということでもありますが、神々の世界を見るということでもあります。