終わりのない物語

第1幕「はじまりは宿屋で」


GM-注1さて、手元の資料を見てちょーだい。ご存知ケストリアの宿屋が物語の始まりだよ。夜になると酒場にもなるという、よくある食堂に君達はいる。それぞれの目的を胸にケストリアの夜はふける〜〜〜。
あ、セラとクレイは一緒に旅してるんだよね。自己紹介しといて。
セラ:わたしはセラ・キャスタミール。叡智の神ラーダに帰依しています。薄茶の髪に金茶の瞳で、ゆったりしたえび茶色の服を着ています。野外では中にチェインメイルを装着します。良いところのお嬢さんだったので、おっとりしているようです。なかなか美人で年は19。
クレイ:ぼくはクレイ・フィンスターと呼ばれている。(闇の鴉みたいな意味ね)十代半ば、頭のてっぺんから足の先まで顔と手を抜かして真っ黒。見れる顔立ち。(セラプレイヤーにメモ)終わり。
プラート:(自己紹介の間)マスター、バードで稼ぎたいんだけど。
GM:いいよ。そんじゃ、歌と楽器のサイコロ-注2振って。(目標値-注312で良い演奏ね)
プラート:(ダイスを振る)ラッキー。9と11だから、ライアーが12で歌が13だ。
GM:おお、なかなかやるじゃない。(クレイとセラに)終わった? じゃ、ダイス振って知力足して-注4
セラ:10です。
クレイ:ゲゲゲッ、3だって。てことは5だな。
GM:じゃあセラ、ふと見ると、壁際に一人の男が立っているのに気づく。楽器を抱えているよ。
セラ:どういう人?(と、プラートPを見る)
プラート:年は二十前後。長い金髪に蒼い瞳、はっきし言って超美形。(またか……:ジェイP)
GM:そういや、ジェアードは何してんの。
ジェイ:酒を飲んでいるが無一文なんで、親父をどうごまかすか考えている。
セラ:ねえ見て見て、とクレイをつつく。
クレイ:言われてそっちを見る。……わーすごい(プラートのキャラクターシート-注5を覗き込んでいる)。顔も良いけどスコアも……。
GM:そんなことをしていると彼は歌い出した。なかなか良い声だ。皆聞き惚れているぞ。
一同:ヒューヒュー!
GM:一曲終わると拍手が沸き起こる。はい振って。一時間は歌わないとね。
プラート:あいよ。(ダイスを振る。6ゾロ-注6が出た)おおっ!! もしかすると俺は天才かもしれない。
GM:(こいつヤケに良い目を出すな)更に美しい歌声が響き渡る。えーと全員知力で2D振って。目標値は13。
……誰もいないの? んじゃプラート、−2で回避して。
プラート:えっ!? えーと12だよ。
GM:ちっ惜しい。突然酒ビンが飛んできて君のすぐそばで砕けた。
プラート:なにぃ〜〜〜!? 誰だそんな事をする奴は。きっと俺の有り余る才能にシットした奴に違いない。――あ、これプレイヤーの意見ね。こいつプラーティシュは何も言わんから。
GM:あ、そ。まあその通りなんだけど、相当飲んだらしい男が一人出てきてだね、「女みたいな顔でそんな耳のくさる歌を歌いやがって」とか言いながら髪を掴もうとする。よけて。14ね。
プラート:だーっ!! 13しかない。捕まってしまった。俺の美しい髪が〜〜〜。
GM:あ、1差なら布の方を掴んだね。思いっきりむしり取られて留め具は吹っ飛んだ。
セラ:布って何?(プラートのシートを見る) ああこれの事。バンダナみたいなやつね。
ジェイ:やめろ、と言って立ち上がる。そっちに行くよ。
クレイ:面白そうなんで見てる。
セラ:およしなさい、と言ってわたしも立ちます。
GM:あいよ。プラートは?
プラート:小さくライアーを爪弾いてチャーム-注7。俺の前に立っているゲスよ〜〜立ち去るのだ〜〜。
GM:周りにいると思う人、気づくかどうかチェックしていいよ。……なぜか誰も気づかない。
セラ:じゃあわたし、男の人にむかって彼の行いを咎めます。
GM:「なんだとこのアマ〜〜〜」セラに向かっていくけど?
セラ:キャー来ないで! 酔っ払いはキライよ〜〜。
ジェイ:すかさず二人の間に割って入る。「いい加減にしないか、この酔っ払いが」
GM:「言わせておけば、このガキめ!」そのまま突っ込もうとする。んだけど、ここで皆さん抵抗してね。気づいてなくても聞こえていたわけだからさ。
ジェイ:失敗。目標15はキツすぎるよ。(出ちまったんだから仕方ねーべ:プラートP)
セラ:右に同じ。
クレイ:成〜功〜♪
GM:酔っ払いは急にくるっと向きを変えると、出口に向かってよろよろと歩きだした。
セラ:あらぁ? 何だか外へ出たくなっちゃった。出口へむかいます。
ジェイ:俺も。
プラート:じゃあ段々大きくしていくぞ。これって聞こえなくなると効力切れんだよな。
GM:そばの連中は一応聞こえる範囲外だったので、外に出るのは君らだけだ。何が起きたのかわかんなくて、酒場のなかはザワついている。クレイはこの歌が何だかわかっていいよ。
プラート:三人とも出てったら、普通の歌にするからね。

[ 脚注 ]

注1
ゲームマスター。テーブルトークのシナリオにおいて、森羅万象を司る全能神。キャラクター達の運命はその手の中にあるが、彼らの思いがけない選択によって翻弄され、逆に泣きを見る事も。
注2
ある行動に対して成否を判定する際の乱数として使う。今回のゲームでは常に2D6(6面体を2個振る)。
注3
その行動が成功したかを判定する為の目安となる値。高いほど難しい。
注4
知力チェック。能力値の修正+2D6で判定。この場合どれだけ目敏いかを判定している。
注5
キャラクターのアイデンティティを記載した大事な紙切れ。主に能力値、技能、持ち物、外見、生立ち、前回の冒険の覚え書きなどが書かれている。
注6
絶対成功。何かを判定する際に6のゾロ目を振ると、自動的に成功となる。逆に1ゾロを振ると絶対失敗となる。
注7
魅了の呪歌。この歌を聞いた者は抵抗に失敗すると演奏者に魅了されてしまう。効き目がでるまで時間がかかるのと、聞こえる範囲全員に効果が及んでしまうのが難点。