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「バイファム」第38話感想

前回(第37話)の3時間後。最後に夜が明けるので、今回は日付をまたいでいると考えていいだろう。
炎上する捕虜収容所、のろまな警備兵はやっともぬけのからのバラックに踏み込んでいる。おとといきやがれ。いつの間に到着したミューラァの副官が立ちつくす。その様子を双眼鏡で見ているフレッドとカチュアの顔が独特な作画。今回は桜井美知代作画監督。初めて観たときは「作画レベルが低い」と感じたのだが、むしろほかの作監より低年齢層を意識しているのだと思う。と言うか、彼女が藤子不二雄アニメを手がけていたので、自然とそうなってしまったのかもしれない。全体的に話がドタバタしているのも多分同じ理由。いっぽうで、「マキ、下がってろ」とケンツが叫んだときのマキの表情や、クレアの表情全般など、独特のかわいさのある表情も見られる。
収容所の解放には成功した。だが、囮になったロディがいまだ帰ってこない。バーツはロディを探しに行こうとするが、スコットが止める。まだ収容所には敵が残っている。かと言って、夜が明けたらロディも、自分たちも見つかってしまうだろう。
そんな彼らにメルの父(ほかに呼びかたないかね)たちが、大型輸送機を奪いたいと言ってくる。混乱している今がチャンスであり、輸送機で自分たちはこの星を脱出するのだと。バーツは、仲間の1人(ロディ)が戻ってきていないんだ、と声を荒らげる。しかし、ククトニアンたちは、だからこそ彼を救うための作戦なのだと言う。
メルの父はかつて軍にいてミューラァを知っていた。彼が特別な任務で動いていることも。彼は何でも徹底的にやらなくては気がすまない性格だそうだ。それと、だから攻撃をしかければ彼が戻ってくるというのはいまいちつながらない気がするが、彼が戻ってくればロディが助かるのはたしか。バーツやマキは、「徹底的にやる」=ロディが殺される=冗談じゃない、という反応だったが、別に相手がミューラァでなくても殺される可能性はいつだってあるだろう。
メルの父がミューラァを知っていたということは、軍では地球人の研究をするとか、地球語を学ぶ機会があるような立場にいた可能性が高くなる。
その頃ロディは、岩場にひそみミューラァたちの動きをこっそりのぞいていた。デュラッヘとギブルはすぐ近くでじっとしている。このまま夜が明けてしまったらアウトだ。
解放されたククトニアンたちの作戦はすぐに実行された。子どもたちはきっかけを作ってくれれば、あとは彼らだけでやるという。バーツは「うまいこと言って俺たちを囮に気じゃないの」とメルの父に言う。答は「君たち子どもを囮に使うようなひどい大人に見えるかね?」って、かなり人相悪いよ、はともかく、こういうときは地球語がうまい。
ロディから通信が入った。ここから北西10kmほどのところにいる。そして助けには来るな、危険だからと。この通信の後、デュラッヘがバイファムのほうを指さしたけど、結局見つからなかったらしい。
「本当は君たちの両親の救出を援助するのがすじなのだが」とメルの父はすまなそう。彼らは輸送機でコロニーに戻るつもりだ。ククトニアンは今、人工惑星に住んでいるのだと彼は言う。じゃあ、いくらここを探してもカチュアの両親は――、とスコット。メルの父には、もし反乱分子だったらこの星に送られている可能性があるとしか答えられない。
収容所を偵察するバーツとマキ。まさか二度襲ってくるとは思わないだろうから、成功する確率はかなり大きいとマキが言うと、バーツは「さっき成功したからって油断するなよ」。「敵には油断していてもらいたいね」とうまく返したマキ。
年長組は下の子どもたちを起こしていく。ケンツとジミーはククトニアンたちと一緒に寝ている。シャロンとペンチの寝相は有名なシーンだ。「いつもと逆ね、寝ている時は」ペンチは素足に靴をはいているのか。足の裏が見えているって何だか可愛い、と思うのは危ないだろうか。
シャロンはきっとどさまわりで、窮屈で寝相がきちんとしていないとやっていけないような生活を送っていたのだろう。ところでシャロンのお母さんは、やはりストリップ・ダンサーだったのかな?
じっと動かずに待つミューラァ。何だか狩人みたいだ。あるいは猫科の肉食獣か。「夜が明ければ嫌でも向こうで動く」何故彼がこうまでこだわるか部下がたずねると、「はじめて手ごたえのあるやつにぶつかったんだ」。……地球軍にはロクなパイロットがいないんだろうか。そしてその強さの理由が、腕なのかメカなのかたしかめるのだと。部下は、倒してみたら赤んぼうが操縦していたりして、と冗談を言う。「もしそうならミルクをプレゼントする」とミューラァ。子どもだったら……?
ミルクではなく、戦闘食を食べ、ボトルの飲み物を飲んでいたロディ。食べていたのは、カロメ・フルーツ味で、飲んでいたのはポカリだろうか? <違う。
再び収容所は襲撃を受ける。今度はなかばククトニアン同士の戦いだ。一緒に突入したスコットに、メルの父は「やつらの機動兵器をひきつけてくれ」と言って彼を残して、自分たちだけ突っ込んでいく。
スコットは彼らが自分たちだけで突入するつもりだと気づいて、あわててバーツたちに連絡する(でも、きっかけだけでいいって言っていたけど)。
今回は初めてカチュアとマキの女の子コンビが、トゥランファムを操縦する。さすがに不安なのか、ネオファムのバーツに「危なくなったら助けてよ」としおらしいところを見せる。だが、返事は「知ーらねー」。「んもう、意地悪。カチュア、操縦頼んだわよ」ネオファムが動き出すと「行っちゃうの?」
ミューラァに、敵が再び現れたとの報が。味方のRVが乗っ取られ、逃亡した捕虜(と言ってたけど、ちょっと違うような)が加わっていることも伝えられる。地球人と反乱分子がつながっているらしいと知って、ミューラァは戻っていく。部下のギブルは残して。
ミューラァはギブルに行かせて自分が残るべきだったのだろう。ロディは「しめた、あいつさえいなくなれば」と好機を得て飛び出す。あっという間に1機のギブルを倒し、もう1機も簡単に撃破する。
そして助かったことをバーツに無線で連絡するが、向こうはちょうどドンパチの真っ最中だ。RVがビームを撃つたびに、暗闇が明るく照らし出される演出が渋い。それを知ったロディ、例の手強いやつがそっちに向かっていると伝える。
トゥランファムの2人、迫ってきたギブルの顔の真ん中に命中させて「あ!」と叫ぶ。撃破してしまったギブルの爆発におびえ、ふるえる2人。「つったってないで動け! 左から来るぞ」とスコットの叱咤が飛ぶ。
クレアと年少組は居残り。しかし待つだけなのにたえられないケンツがトレーラーに乗り込む。「あなたは守備隊長でしょ! スコットの言いつけを守って!」と止めるクレア。彼女にしてみれば、頼りになりそうな男の子と言ったらもうケンツくらいだから、不安になるだろう。が、ジミーはすでに待機していて、おまけにシャロンとフレッドまでトレーラーに乗る。「みんなやめて、危ないわ!」一番危ないのはシャロンが運転することかも。
「あ〜?」突然視界にトレーラーが入ってきてスコットが間抜けな声をあげる。「ケ、ケンツ!?」スコットは破壊された輸送機から落ちてしまう。このへんからかなりギャグっぽい。ケンツはトゥランファムが相手にしていたギブルを撃破、倒れこむギブルの下をすり抜ける。ククトニアンの囚人たちは輸送機に突入し、乗っ取る。
ククトニアンの4人もいてもたってもいられなくなり、武器を持って走り出す。「イサマチナ!」ガイとユウのお母さんもいたみたい。
とてもはじめてとは思えないドライビング・テクニックのシャロン。だがあまりに乱暴だからか、エンジンが止まってしまう。ギブルが彼らに迫る。さすがに子どもが2人も叫んでいるトレーラーを撃つのはためらわれたのか、ギブルはなかなか撃たない。そして背後から一撃をくらって倒れる。撃ったのはガイたち。ケンツは彼らもトレーラーに乗せる。
動き出したトレーラー。ケンツはバズーカの弾の詰め替えで手がすべって弾を1つ落とす。その弾はミューラァの補佐官のジープの上に落ち、爆発する(……ミューラァの補佐官がまたあとで出てくるのは変だぞ。「悪いが直撃させる」(byカミーユ)って感じだったのに)。かなりギャグっぽい。
デュラッヘが到着したときにはほぼことは終わっていた。ネオファム、トゥランファム、ギブル2機に取り囲まれ、身動きがとれない。そしてその隙に輸送機は飛び立ち、一行は退却していく。ロディはひきあげていく彼らを発見、合流する。
「あいつはどうした?」と聞かれ、バーツは「ミューラァ」の名を口にする。「あの手強い機動メカにはミューラァってやつが乗っているのか」……いや、いちおう量産機なんだけど。
取り残されたミューラァ。「完全に裏をかかれてしまった。やるな、地球人め。しかし必ず決着をつけてやる、必ず」
夜明けの草原。別れの時。「あ、り、が、と。わ、す、れ、な、い、き、み、の、こ、と」そう言ってガイはケンツに鞄を渡す。(彼がケンツを選んだのは、やっぱり人質にとったからかねえ。ここでロディとかバーツに渡してもいいようなものだけど、それじゃあ感動が薄れる。) 不覚にも涙ぐんで背中を見せる軍曹。「よかったな、父ちゃんに会えて。元気でな」
早くも時間が来た。4人は輸送機に乗り込む。「スクンサー!」「さ、よ、な、ら。あ、り、が、と」13人思い思いの表情で彼らを見送る。
輸送機が草原を走り出し、ケンツが追いかける。「おーい、元気でなー! 大事に使うよー!」最後は仁王立ちのケンツ。そういえば今回も2番が使われた。
徹夜状態の子どもたち、ご苦労様。
原画
桜井芳久、横山淳一、横山健次、石川修、小林まゆみ、アド・コスモ

Vd: 2000.2.20, Vd: 1998.6.18