4人組と別れてから3日。いつの間にかまた砂漠に戻っている。しかも小学生が想像するような砂沙漠。その上を飛ぶバイファムとネオファム。ひさびさにバイファムのテーマがかかった気がする。彼らは解放されたククトニアンにもらった地図で廃墟の町を探している。見つからないので、スコットが道を間違えたかなと言うが、道なんてはじめからない。などとやりとりしている間に町が見えてきた。
先行した2人をスコットたちが追う。ジミーがジャムをみんなにすすめる。彼にしては気がきいているが、この暑いのにそんな甘ったるいものは食べられない。ジミーは、疲れたときは甘いものがいいのにと言う。それ自体は正しい。こんな暑いのに、バギーに乗っている子どもたちは大丈夫なんだろうか? それに、みんな今までの服装で何ともないのか? クレアはスカートをはきかえて、ストッキングを脱がないと倒れるぞ。と言うか、蒸れてあせもになりそう。
その一行をミューラァが執拗に追う。わだちを調べた彼は、13人が1日彼より先に進んでいると見当をつける。全速力で追えば今夜にも捕捉できる。
トレーラーとバギーも町にたどり着く。プール?、と言うよりも広場の池みたいなところで水浴び。虎のような像の口から水が流れ出している。マルロとルチーナははだか、ペンチは服を着たまま水の中に入っている。恥ずかしいのか? マキとシャロンは足をつっこんでばしゃばしゃ。シャロンはズボンをたくしあげている。
プール(?)を前に泳ぎたい素振りを見せる女性陣に、スコットが、「こんなこともあろうかと」と水着を出してきて「ワンピース、セパレートどっちがいい?」ときいて袋叩きにされる。というパロディを思いついた。
スコットは「こんな廃墟なのにうまい水があるもんだな」と安心する。そんな大げさなとバーツ。だが、目的の収容所までまだ半分なのだ。それを聞いて驚くバーツにロディ。お気楽なことだ。
みんな疲れているようなので、ここでキャンプとなる。女の子たちは洗濯。下着だけとはとても思えないあの洗い物はどうやって溜まるんだろう? 我々の知らないときに、まるで別のなりをしているんだろうか? 見張りにはケンツとフレッドの2人。前は1人だったのに、ひょっとしてフレッドとペンチのあの一件がばれた?
「ああっ!?」クレアの悲鳴と乾いた音を聞いたスコットが走り寄ると、彼女は意識を失って倒れている。そして胸には血?が。色を失うスコット。「誰か! レスキューボックスを!」スコットは彼女の胸に手を差し入れる。「誰か! 早く!」
息を吹き返したクレアは、身の危険に気づいて(ウソ)、ぱっとスコットの手を払いのける。自分の行為に今さらながら真っ赤になるスコット。しかし、なにがどうなっているのかわからない。「いや、あの僕は……てっきり……あれ? なんともないの??」
やっとほかのみんなが集まってくる。スコットの説明はてんで要領をえない。ジミーがジャムのびんを拾い上げる。びんには蓋がない。蓋はマキが拾い上げた。びんと蓋を見てバーツが納得する。つまりジャムが発酵して、(びんの中の気圧が高くなって)蓋が飛んでクレアに当たったのだ。それくらいで気絶するなよな。ジャムって発酵させるものだったのか? 知らなかった。キイチゴはどこから手に入れたんだろう?
「勝手なもん作るからこんなことに」と憤慨するスコット。「なんにもなかったんだから、早とちりでよかったんじゃない?」とマキ。みんなはひきあげていく。なんにもなかったんなら、ね。
「さ、さっきはごめん。そ、その変なつもりじゃなくて、てっきり撃たれたんじゃないかと思って……」「気にしてないわ」こう答えて、クレアはしいてにっこり笑って去る。
その返事に安心したスコット。さっきの感触が手に残っている。思わず表情が崩れる。ここで歯を光らせるか? 手についたジャムをなめてにやつく。アブないお兄さんを見たマルロとルチーナ、「おかおがまっかー」
ケンツ、フレッドから、ロディ、バーツに見張りが交代する。「だけど、さっきのスコット、なんか変だったな」「クレアをかなり意識してたようだな」なんていうか、自分たちのことは棚において……、とくにバーツ。そのバーツは双眼鏡で、任務も忘れてスコットをのぞく。
スコットは地図で進路のチェックに余念がない。たまたまトレーラーに用があるクレアに、彼のトランクからコンパスをとってきてくれと頼む。これがいかにまずいか、本人より先にバーツが気づく。岡目八目? 「あ、あれ? どこ行くんだ? お、おいロディ! や、やばいな。まさかあれ見つかんないかな?」「例のやつか?」「あ、ああ、それ、それ」「女の子だもん、トランクの中までは見ないよな」と言っているはしからクレアはトランクを開ける。「意外ときちんとしてるのね」という感想も束の間、出てくるエロ本の束。ここでページをめくったら、グラビアのモデルの顔に、自分(クレア)の顔が写真の切り抜きで貼りつけられているのを発見する、という展開だったらなおよかった(ウソです)。クレアの眉間にしわがよる。「まさかスコット、さっきもこんなつもりで……」
先に食事している年少組の男の子たち(とルチーナ)。「あいつらどうしてるかな」「ガイたちか?」(前のがケンツでうしろのがフレッド) ガイたちのことが気にかかる子どもたち(こういう風に前の出来事を思い出すのはかなり珍しい)。「パパとママと一緒」なのはうらやましいし、自分たちが手を貸したのにさっさと行ってしまったのは納得できない。
「ケンツ、それは違うな」とスコット。彼らは、13人の食料が足りなくなるから、わざと離れたのだ。今ごろ、親子水入らずどころか、食べるものにも困っているだろう(大事に食べなきゃ、というフレッドの反応はちょっと違っている気もするが……)。かっこいいスコット、あとに忌まわしい事件が待ちかまえているのも知らず……。
女の子たちはやっと洗濯が終わって帰ってきた。洗濯機なしでは腰が痛くなりそうだ。なので、シャロンは逃亡。「あの人、うまいこと言ってさぼってばかりいるのよ」
マキが、食後のコーヒーを楽しんでいるスコットにきく、「クレアは?」その一言でスコットははじかれたように立ち上がる。「まずい、まずいですよ、まずい」(昔ののび太っぽい口調) しかしクレアは「コンパスね、はい」と渡して去っていく。
一部始終を見ていた見張りの2人には遠目なのでどうなったかわからない。「スコットの様子からすればセーフかな?」とバーツは楽観的。「ま、どっちにしろ、早いとこ始末したほうがよさそうだな。問題が起こんないうちに」なんだかえらく深刻なことを話題にしているみたいな口調のロディ。「クレアのやつ、潔癖だからな」とバーツがうなずく。
シャロンが戻ってきた。「あーあー、ハラへった」ってどこで何してたんだ? シャロンは、スープをよそっていたクレアに自分の分も頼むが、心ここにあらず、彼女の耳に入っていない。食事中も上の空だ。顔を見あわせる女の子たち。そしてスコットがやってくると、そそくさと席をたって食器を片づけてしまった。スコットは「見られたか、やっぱり」と悟る。
夜も引き続き見張りのロディたちに、マキが熱い飲み物を差し入れに。ここでバーツだけなら、「熱いことはいいことだぜ」ってところなんだろうが。マキはすぐには去らないで、「クレアの様子が変なんだよ。心あたりある?」「ゲ!」2人は同時に立ち上がる。「普通の顔しようとしてるけど……、つまり、なんとなくぎくしゃくしててさ」
2人は、あったかくしてもう寝ろと言ってとにかくマキを行かせる。バーツはスコットの様子を見に行く。これは大正解。
深夜だ。スコットはこっそりエロ本を火にくべる(ほかの2人の許可は得たのだろうか?)。なごりの袖をちぎりつつと顔に書いてある。砂漠に埋めないあたりが用心深いかもしれない。
「こんな夜更けにたき火?」いきなりクレアの声がかかる。「そんな不潔なもの。見損なったわ」
さすがにスコットの表情が変わる、が何も言わない。
「なんとか返事したら?」
「いやあ、夜は結構冷えて」
「言いわけはしないよ」
「さっきだってあなたはそんなものを見るつもりで……」
スコットがその言葉をさえぎる。
「それは違うよ、これだけは信じてくれ」
「近寄らないで!」(ひっでー)
「とにかく、君がどういう目で僕を見ようと、僕はそんなつもりで……」
「じゃあ、なんでそんなものを後生大事にしまいこんでいたの!?」
「すまん、いやなものを見せてしまって」
それだけ言ってスコットは立ち去る(エロ本も燃えたようだし)。
「待ってよ、ひどいわ! ひどすぎるじゃない!」
クレア、気持ちはわかるけど、泣くなよ。いくらなんでも。というか、どうひどすぎるんだ? 君はいったいスコットに何を求めていたんだ?? 2人のやりとりを聞いていたバーツ、「んー、まいったな。ここまでこじれてんのか」バーツは、座り込んで泣いているクレアの前へ出ていく。
「あのさ、今の話のことなんだけどさ」と言って、自分とロディ(勝手にまきこむなよなー、2人の仲だからなんだろうけど)が、スコットに無理にあずけたのだと「白状」する。「やめて、スコットをかばうためにそんなこと……」と信じていないはずのクレアだが、バーツが「面目ないけど」と重ねて自分たちのせいなのだと言ったころには、すっかり信じていたようだ。ロディとバーツは「不潔」じゃないのね。現金だなー。
夜番のロディからも事情を聞いて、クレアは完全にスコットを惚れ直す。2人が、スコットも本当のことを言えばよかったのにと言えば、「言っても信じなかったわ、わたし」ときたもんだ。「だとしたらわたし、ひどいことを言ってしまったわ」「わたし、ばかみたいに怒っちゃって」すっかり反省。「あのスコットがあんなものに興味持つわけないのに」こらっ笑うな2人とも。こんなことなら本当のことを言うべきだったんじゃないか??
スコットはヘマはしたけど、今回は面目躍如。普通なら、ああいう対応はちょっとできそうにない。それで彼女が納得するかどうかは別にしろ。まあどうせクレアの場合、「なんとか言ったら」なんて言っておいて、どう弁解しても逆効果なんだろうな。クレア自身もそれはわかっているくせに、やっぱり信じられないみたいだし。でもたき火できるほど持ってくるから隠し場所に困るんだと思う。っていうか、ジェイナスにあるのを全部持って行くわけにはいかないから、いろいろ吟味、厳選したんだろうねえ……。
「あたし、なんだかとってもみじめな気持ちになってしまった」と今度は落ち込みだしたクレアに、バーツは腰の銃を渡す。「こいつを思いっきりぶっ放せばすっきりするぜ」とことん世話が焼ける。
そのころミューラァは一行に迫りつつあった。「夜明けとともに一挙にたたく」徹夜で追っていたとは執念深い。
見張りはシャロンとペンチに交代している。「だけどさー、ナーニが面白いんだろーね、あんなもん。オレのよりチートばかしボインなだけじゃないか」すでに2人ともこの事件のてんまつを知っているとは、13人の間では何ごとも秘密にしておくことはできないらしい。恐い。
「男の子ってしかたないんじゃない」と答えるペンチ。「だからそれがわからねえんだよ」とシャロン。「でも女の子って好きな人ができたら、見てもらいたいって気がするらしいわ」「えー、ウソー? でも、そーかな?」ペンチ、意外と知ってます。やっぱ本で勉強しているんだろうか。本で読んだからか、あまり現実感がないけど。なんていうか、「臭い」とかがないような世界の気がする、彼女の想像は。ちょっと前の典型的な少女漫画のベッドシーンみたいな。でも今回は傍観者だからいいとして、ペンチ自身が当事者だったら……想像したくない。
クレアが銃を撃ちはじめた。彼女が前に銃を持ったのは、はるか昔第9話のこと、間に第20話でジェイナスの砲座にまわったことがあるだけだ(のはず)。ひとしきり銃を撃ち続けて、ふっきれたクレアが汗をぬぐうと、かなたに敵影が光る。
「シャロン大変よ! 敵よ!」役にたたない見張り組。しかしシャロンが慌てている間に、ミサイルがキャンプを襲う(……ミサイルなんて、どのARVが装備していたんだろう?)。テントが吹き飛び、ひっくり返る。テントからマキがはい出てくる。髪がおりている。さすがにそれをとめる暇もない。
敵は5機。ロディとバーツが、自分たちが食い止め、ほかのみんなを脱出させるべく出撃。ケンツとカチュアもトゥランファムで続く。
銃をたずさえたスコットがトレーラーに走る。「急げクレア!」だが飛んできたミサイルに気づいたクレアはスコットを突きとばす。2人ともトレーラーの下に入れて爆風からは守られる。クレア、パンチラ。クレアの下敷きになったスコット。うらやましい。起きあがろうとして、スコットは頭を車にぶつける。
「あなたって本当は男らしいのね」唐突なクレア。彼がクレアをかばったんならともかく、逆なのに。ひょっとして、エロ本を持っていると知ったから……? それならはじめっから怒らないだろうし。まさか、わざと怒ってみせたわけでもないだろう(だったらイヤすぎ)。
「あ、いや、それほどでもないさ。ふるえが止まらないよ」「ごめんなさい、夕べのこと」「ああ、もういいよ、その話は。さあ急ごう」
5対3でこっちは不利なのに、勝手に離れて敵を追うケンツは戦いかたにまるで進歩がない。逃げる車は部下に追わせて、ミューラァはバイファムとの勝負に出る。受けてたつロディ。
スコットたちはたまったものではない。襲ってくるギブルにどう立ち向かえというのか。しかもネオファムもトゥランファムも助けに来られない。ジミーがバズーカを1発ぶっぱなすが、はずれる。
そのとき、そのギブルを強烈なビームが襲う。ミューラァもそれに気づく。「友軍か!?無謀な攻撃はやめろ! 私は支援部隊など要請した覚えはない!」「ウハハハハ、相変わらずやわな作戦ぶり。変わってませんな、ミュラァ少佐」(なんかなまってて「ミューラァ」とちゃんと言っていないように聞こえる。)
「その声はガンテツ!」「さよう、第3特務機動部隊隊長ロート・ガンテツ少佐参上!」「ガンテツ、無謀な作戦はやめろ! 私の指揮下に入れ!」「ご意見無用!」「なに?」「儂の流儀で作戦を完遂するまで! ウハハハハ!」
「おのれ! やつらにかまうな!」「フン、若造め。いつまでもエースでおれると思うな」ガンテツ麾下のARVは次々と変形していく。そしてまた味方まで巻き込んだ攻撃。13人はとっくに逃げ出している。
「あいつだけは、あいつだけはこの手で!」ミューラァはバイファムを狙う。バイファムとデュラッヘの戦いはあっけなく決着がつく。廃墟の建物に押しつけられたバイファムはそのまま地面に倒される。「私は今まで敵の戦士に恨みを持ったことはない、しかし貴様は別だ!」観念するロディ。「これまでだな!」ロディは目を閉じ、衝撃が彼を襲う。
……? デュラッヘの胸に穴が開き、倒れていく。周りは見慣れぬRVの大部隊にすっかり囲まれている。多勢に無勢、ククト軍のARVはあっという間に撃破されていく。
「みなさん、無事ですか? 私です、ジェダです」まさに間一髪、九死に一生を得た子どもたちは、ジェダたちのアジトに保護されることになった。「アジト」ってもっといい言いかたないのかな? たまたま、ジェダたちの偵察員が、例のウェーブを検出したとのこと。
機体の胸に穴が開いたのに無事だったミューラァは、縛られて引っ立てられていく。彼の目の前でバイファムからパイロットが降りてくる。「ジェダさーん!」その声と姿とにミューラァは愕然とする。「子ども……? あのパイロットが子ども、まさか……!?」
ガンテツはコンスコン。あいつは少将だったけどね。死に際を見せたのは感心できない。
ついに、ロディとミューラァがお知り合いになってしまいます。こうなると戦闘中に会話が始まるんだよなー。それは「バイファム」じゃない。そういう時のセリフって、ロディにしゃべらせても、ちっともかっこよくない。だいいち敵を「1人」(個人)として知ってしまうと、殺しあいなんてできなくなりそうなもんだ。特にロディには、いや13人全員そうはなってもらいたくない。今まで「人殺し」をできてきたのは、あくまで敵の顔が見えないから、と思いたい。
- 原画
- 富沢雄三、桑原周枝、大島城次、小野順之、佐藤久美子、九月社