前回(第39話)から?日経過。でも多くて4、5日ってところだろう。13人はレジスタンスであるジェダのグループに保護され、彼らのアジトに落ちつくことになった。廃墟の町の地下にあるみたい。ジェイナスを離れてからジェダたちと合流するまで、1週間ほどだ。視聴者にとっては2ヶ月ほど過ぎるので、錯覚してしまうが、もしほとんど無人の地球に降り立ったとして、そのどこかにいる人間に会うのにたった1週間ですんだとしたら、相当の幸運だ。
冒頭、ジェダと、バーツ、マキ、スコットの3人はどこから帰ってくるところだったのだろう。謎だ。
年長組の子どもたちはジェダからククトニアンの歴史について教わる。400年前まではククトにも人が住んでいたと。それ以前にも何度か戦争があり、その結果が今のありさまである。おっと、「400年前」は「イプザーロン年表」とは完全に矛盾するぞ。ジェダの1年はククトの1年ということなんだろうか。それだと正しいが、なんか苦しい説明のような。
子どもたちは、ラレドと会うまではククトニアンはみんな敵だと思っていたと言う。ジェダはラレドを知っていた。地球人とコンタクトをとるのが彼らの使命であり、ラレドもそのために派遣されたのだと。子どもたちが彼がおとりになって死んだことを語り、ラレドの最期は同胞の耳に届くことになった。
このアジトでは宇宙船やRVの建造が行われている。それに目をみはるケンツたち。ただし形状は地球のものとはかなり異なっているし、「デザイン的にもいまいち」。本当に飛ぶのか不思議なくらいだ。敵(ククトニアン)のメカを目の前で見るのも妙な気分だ。「実はプラモデルだったりして」とシャロンが冗談を飛ばす。
「きいてみようか、あの人に」と美形のゲリラを指さすフレッド。ジェダさんにもらったマイクロ翻訳機を試すのだ(ミューラァ(やチェンバー)がいる分、むこうのほうがさっさと開発できたのだろう)。
マイクのテストをするシャロン、「彼氏のションベンなぜ白い!?」――君は放送委員にはならないように。ケンツがあわててるのに対し、フレッド、ジミーは平然としているのは、作画の都合と言ってしまえばそれまでだが……。「やあやあやあ、ククトニアンの労働者諸君!」っていうのも何だかなあ。
それを聞いたか聞かなかったか、美形ゲリラ氏がこっちを向いた。「おまえが変なことを言うからだよ」「オレなんにも悪いこと言ってねえよ」シャロンはケンツを前に押し出す。美形ゲリラ氏の前に出てしまったケンツが後ろを振り返ると、シャロンもフレッドもジミーも知らんぷり。それっぽい反応だ。
ケンツが意外にへどもどしながら話しかけると、ちゃんと通じていた(美形ゲリラ氏の胸元にも翻訳機があった模様)。はしゃぐ4人。
4人とは対照的にどうしてもククト人に話しかけなくてはならないカチュア。ゲリラ兵に(1人は金髪)、自分の両親の行方についてたずねる。自分の身の上について話すと、彼らは、カチュアの両親はおそらくコロニーにいるだろうと答える。だが、今は戦時中、カチュアがそこへ行けばスパイの嫌疑がかかるのがおちだ。
年長組はジェダについたまま、今後の計画をたてる。収容所の位置を確認した子どもたちがすぐにでも出かけようとするのをジェダが止める(ジェダの後ろには赤毛のゲリラが立っている)。政府軍の基地が新たに建造され、兵が増強されているのだ。その基地の調査がすむまでは待つべきだ。
ジェダたちは通信基地に向かうことにする。そこから地球軍に向けて通信を行っているのだ(でもそれが政府軍にばれたりしないんだろうか?)。地球の偵察機が1、2機目撃されたこともある。それなら、と子どもたちは、自分たちがメッセージを送れば効果があるんじゃないかと、協力を申し出る。自分たちは軍のコードワードも知っているのだから。
結局子どもたちは全員通信基地に行くことになる。ロディだけは「この前捕虜にした敵の隊長に会いたい」ので残るのだが。
マルロとルチーナは散髪。「ばっちし決めてね」と注文されてもクレアとペンチでは……。タオルで顔を蒸したりとかするのか? <しないって。「あんたなんてどんなかみがたにしたっておんなじじゃない」って、未来のお嫁さんの言うことじゃないぞ。
ジェダは子どもたちの協力があれば地球と一つのテーブルで話しあえる日も近いという希望を持つ。そのことを博士(サライダ)に話すが、博士はミューラァのことを考えていた。
口笛が聞こえてくる。曲は"THE ASTRO ENEMY"、なんてことはロディにはわからない。ミューラァが手に持っているのは花なんだろうか。1、2階吹き抜けになったその部屋の2階の張り出しからロディは下をのぞく。ミューラァは顔をあげずに、「メシならまだいい。それより外に出してくれないか。こんなところで寝てばかりいては、体がなま…!」上を見上げたミューラァは思わずそこで絶句する。
「ハハハ、これはこれは地球軍のエースパイロット」むっとするロディ。
「おまえのような子どもが機動兵器のパイロットとはな」
「僕はパイロットじゃありません」
いつかも言ったセリフだ。
「あなたたちが襲ってくるから身を守るためにしかたなく戦ってきたんです」
ミューラァは皮肉っぽく口笛を鳴らす。
「それは君たちの理屈だ。俺はただビジネスをしているにすぎん。……俺はククトニアンで政府軍軍人なんだぞ、それが俺のビジネスだ」
ロディが言葉を返せないので、ミューラァが逆に質問する。
「君はいくつだね?」
「いくつだっていいでしょう!」
「そっくりだな、その口のききかた、俺の俺の子どものころと」
「あなたたちはなぜ戦い続けるんですか!?」
「まさか捕虜になって地球人の子どもに尋問を受けるとは思わなかったな」
相変わらずミューラァのロディに対する態度は、子どもに対するそれだ。完全にあしらわれているロディ。
「話をそらさないでください!」
「素朴な質問ってやつが一番答えにくくてな」
彼らの会話はそこで途切れる。下の階の扉が開いて、博士が入ってきたからだ。ミュ−ラァは意外な人物との再会に驚く。ミューラァは今は話したくないと言う(その理由はすぐあとで明らかになる)。博士の問いが耳に痛い、「どうしてなんだね、ククトニアンと地球人の架け橋になれるはずの君がどうしてそれほどにククトニアンに固執するのかね?」。ミューラァの返事がロディの耳を打った。「たしかに半分地球人の血が流れているが、私はれっきとしたククトニアンの軍人です!」
博士とははじめての会話になるロディは、宇宙船の整備をする彼からミューラァの出生と生い立ちを聞く。ミューラァの母親は地球人だった。宇宙生物学の研究員の1人だったのだが、船外活動をしているときに母船に戻れなくなっていたのを、ククトのマヌス方面軍、つまりコロニー軍に拾われる。精神的にまいって自殺を図ることもあった彼女を、助けたのがミューラァの父になる男性だった。医師であるその男はしかし、ミューラァが生まれたころ、クレアドで地球軍との戦闘に巻き込まれ死んでしまう。そしてミューラァが物心ついたころ、地球との戦闘が激しくなり、母親は軍につれていかれ、それっきり戻ってこなかった。彼をひきとったのが、彼の父親とは古い友人だったサライダである。だが自分の出生をそれとなく知ったミューラァは、ある日突然サライダの手許から離れていった。
「君の名前をまだきいていなかったね」「ロディ、ロディ・シャッフルです」「私はシャル・サライダだ。……この戦争の最大の犠牲者とは、彼や君たちのような子どもたちを言うのかもしれんな」
暗い気持ちで廊下を歩くロディは、妙な物音を聞きつける。それはミューラァの閉じこめられている部屋からだ。ドアが開くと、はたして目隠しをされ、手首を縛られた彼がいた。ロディはやめさせようとするが、追い出されてしまう。「皮肉なもんだな、侵略者である地球人の君が俺をかばうのか?」
やはり地下の通信施設に着いたジェダと子どもたち。マイクを握るのはもちろんスコットだ。クレアド星第7地区に住んでいたと名乗り、両親を助け出すためにククト星に来て、解放軍のグループに保護されていると、これまでを語る。そしてククト星の全部が敵ではない、ここのリーダーたちはコンタクトを持ちたがっていると。
敵がやってくるのも当たり前という気もする。政府軍のXじるし2機(?)が飛来する。ネオファム、トゥランファムに加えて、子どもたちは銃を持って飛び出していく。フレッドまで、「僕も行く!」。「あなたも?」「クレア、小さい子たちを頼むぞ」とスコットも。
みんなの危険を知ったロディがバイファムで単騎、飛び出す。「行かせてください」と言って出撃し、「みんな無事でいろ」とつぶやく彼はかっこいいが何か違うものも感じる。
戦闘は苦戦。「バーツ、休んでいる暇なんかねえぞ!」とケンツが生意気。ギブルが通信基地に向かってくる。「ヤベー、こっち向いたぜ!」レジスタンスの装甲車に据えつけられた機銃を撃つスコットがやっつけるも、彼も敵の攻撃で頭が焦げる。「アチッ、アチッ」髪が薄くなりませんように。クレアまで銃をとったとき、ジミーが何やら武器を見つける。
トゥランファムがXじるしに乗ったものの、背面飛行で落とされたとき、ロディが到着、Xじるしを撃ち落とす。「でもあいつはほとんど俺がやっつけてたんだぜ!」「生意気言うな! ひっくり返って落ちてたくせに!」
クレアとジミーがバズーカみたいなのを持ち出す。「マキ、手伝って!」「でも、どうやって使うの!?」「どかんとぶっ放すんだよ!」「だからどうやって!?」「そんなことオレが知るわけねえだろ!」「とにかく、その"ぶっ放す"のやってみましょう」「やれやれー」「もう!」
「みんなしっかり持ってて」マキの目が照準に覗く。だがギブルも銃を構えている。「イッ!?」子どもたちのほうが一瞬速く撃ち、ギブルは倒れる。最後のXじるしが落とされると、敵は逃げていった。
バイファムから降りたロディは横のカチュアに、独り言のように話す、「君は……、君は両親に……、いやみんなも両親に会えなくちゃいけないんだ」このセリフもちょっと違和感が。
今回ははっきり言ってあんまり面白くなかった。それは既に展開を知っているから、というのも多分にあるかもしれないが、話がいまいち散漫なこと、ミューラァとロディの会話、彼の生い立ちがどちらかというとパターン的なのはいなめないと思う。むしろ見どころはそのあとの拷問シーンでのロディじゃないだろうか。
ただロディはやっぱりミューラァと戦えなく(いにくく)なるんじゃない? その矛盾したところが魅力じゃないかって? 「13」第13話感想(伝聞版)で書いたように。うーん、こういう葛藤はどちらかというと軍人に似あいこそすれ、「僕は兵士じゃありません」(第27話)のロディには似つかわしくないと思うのは、ご都合主義でしょうか。たしかにククトニアンが自分たちと変わらない存在だと知りつつ、なお戦わなくてはならない苦悩は何度か描かれているけれど、それともまた少々異なっていると思うのだが。
それと、ロディ、君は「身を守るために」「仕方なく戦った」なんて言うけれど、そのセリフはかなり白々しいよ。君は今自分がどこにいるのか分かっているのかな? こともあろうに敵の母星に立っているんだぜ。君たちは航路を地球からタウト星に変えた時から、ククトニアンに船尾ではなく船首を向けたあの時から、正当性を大幅に失ってしまった。力づくで奪われたものは、同じようにしてでも取り返すのというは何だかきな臭くないか?
君たちの冒険はククトと地球の友好のきっかけとなったから、しかも好都合なことにククトニアンの政権が入れかわったから結果オーライだけれど、おそらく数十年後には微妙な問題になっていることだろう。"The Janus 13 Children -- were they heroes?"なんていうように。
通信基地に13人全員集める必要はあったのだろうか? 特にマルロ、ルチーナ、ペンチ。
戦闘シーンでトゥランファムのコックピットを真上から見下ろす絵は構図として面白かった。
- 原画
- 村中博美、中島美子、山本佐和子