>>ほうがん | < >

「バイファム」第37話感想

前回(第36話)の直後(ほとんどカブッている)。
広大な森林の一角を切り拓いた収容所。見張りはいるにせよ、どっちかというと開放型の施設なのかも。つまり、逃げるあてがない、逃げてものたれ死ぬだけだから、高い塀を作る必要がない。タウト星でロディが入れられた独房(第27話)も、逃げられない理由は違ったが、壁がないのは同じだった。収容所の地面が周囲より掘り下げられているのは面白い(ひょっとして壁がわり?; あまり役にはたっていないようだったけど)。
ところで、彼らは何を建設しているのだろうか。まさか、自分たちの閉じこめられる施設? じゃなくって、ククト再開発の拠点なんだろうねえ。労賃タダだから、効率的だ。先の話になるが、ジェダたちの新政府にはタダ働きさせられる人手はないわけで、当然開発ピッチは旧政府時代より遅くなるはずだ。それとも、旧政府の軍人を使うのか(それはあまりやれそうにないけど)。
さて、この収容所には地球人の捕虜はいないらしい。ふたたび絶望の淵に沈みこむ一行。逆に、父親の姿を発見したガイはいきなり銃を手にとる。慌てて押しとどめるロディ。「君たちの気持ちはわかるけど、無茶だよ、収容所を襲うなんて」無茶ったって、自分たちもいずれはそれをやるつもりだっただろうに。それともジェダさんたちの協力をあおぐつもりでいたのだろうか。
スコットは「こういう言い方は冷たいかもしれないけど、できないよ」。スコットにしてみれば、勝手についてきた連中の手助けをする義理はない。そこまでは思っていないにせよ、迷惑だし、かかずりあっている暇はないのはたしか。それに、「僕にはみんなが両親に会うまで、みんなの命を守るという義務があるんだ」。
ユウが必死にククト語で訴え、ククトニアンであるカチュアも、「スコットさんの気持ちはわかりますけど」と訴えるが、スコットとしても聞き入れることはできない。が、ロディが収容されている人たちを解放すれば、彼らから手がかりが得られるのではないかと提案する。腰に銃を吊っているバーツはそれに納得、マキも「どこにいるかもわからないジェダさんとかをあてもなく探すより断然いいかも」と。
2日の間、子どもたちは慎重を期して作戦の練り上げに時間をかけ、そして収容所の観察を重ねた。その結果、収容所の動きにはパターンがあるとわかる。夜間はよそからの応援が帰り、警備が手薄になる。当然、夜襲。
もし事前にこちらの作戦を虜囚に伝えることができれば、作戦はよりスムーズになる。その役をカチュアがかってでる。潜り込むならククトニアンである自分のほうがめだたないと。スコットと、それにロディは止める(バーツは賛成)。だがカチュアは、「心配しないで。わたしきっとうまくやるわ」。彼女の顔のあたりに光がかかっていないので、表情は暗いのかどうかわからない。メルがカチュアの袖をひっぱり、自分を指さす。「あなたも来てくれるの? まあ心強いわ」察しがよすぎるメル、あいかわらずこのしゃべり方はどうにかならないかのカチュア。
2人は夜陰にまぎれて資材置き場に近づき、その陰に隠れて朝を待つことにする。腰の銃を渡そうとするバーツに、カチュアは「かえって危ないわ」。マキは特別製の弁当を渡し、「いい本当に気をつけるんだよ」と忠告を。メルにも「あんたもね」。
タイミングを計り2人は走り出す、途中、探照灯の光を避けるためにふせる場面もあったがどうにか無事に資材置き場へ。
同じ頃、基地のミューラァは、上司に(また?)言われた、地球人の血が流れているという言葉を反芻し、任務達成の決意を新たにしていた。部下が持ってきた酒(?)を飲んでいるんだから結構なご身分だが。
仮眠をとるスコット、バーツ。ロディは眠くないんだとそこらを歩いている。4人組(の残りの3人)も「メル、パイシン」で、ずっとそっちを見張っている。自己紹介、というかお互いに名乗っていない気がしたけど、ロディは彼女がメルなのかはもう知っていたのか、それともこのとき初めて知ったのだろうか。
資材置き場の陰で、緊張の中でも寝られるのは子どもの特権かもしれない。横になって寝ているメル。彼女が独り言をつぶやいたので、カチュアは「かわいそうに、ママの夢でも見ているのね」。「わたしも今のうちに食べておこうかな」……「わたしも」とは? そして「今のうち」は寝ている間に全部食べてしまおう……、じゃないね。
おなか一杯になって寝てしまった(え、違う?)カチュアがメルに起こされたときはもう朝。カチュアは、ひとに起こされるよりはひとより先に起きるタイプのような気がするが、僕の偏見かな? メルは口に指を当てて「シーッ」。このジェスチュアはククトにもあるのか。「いよいよね。いい、落ちついてね」とカチュア。
子どもたちが双眼鏡で見守る中、2人は、収容所を出て作業を始めるククト人の隊列の中に無事に紛れこむ。
そのまま2人も囚人のふりをして作業に従事する。突然メルが2人で運んでいた荷物を取り落とした(ここでカチュアの足の上に落ちて……、それじゃギャグだ)。上を見上げる彼女の視線の先には1人の男が溶接作業をしていた。彼がゴーグルをあげ、顔があらわになった。「チャン!」叫んだメルは階段を駆け登る。父娘の再会にカチュアは涙ぐむ。というわけでメルが一番乗りと。
昼飯時、カチュアはメルの父と話す。彼は地球語が話せた(何故だ!?)。カチュアが作戦を話すが、詳しいことは夕方に。
サイレンが鳴って、囚人たちは収容所に帰って行く。それを木の上からケンツとシャロンが双眼鏡で確認する。シャロンは下にいるジミーに無事を伝える。「おーいボウシー、うまくやってるぞ」
就寝の時間。メルの父親は警備が去ったのをたしかめる「ダブージョイダ」囚人たちは雑居房で起きたままカチュアの話を聞く。「娘のフレンドたち」とか「そこはセーフティな場所」とか、キザな、もといなまったしゃべりかた。「OK、ありがとうお嬢さん」
行動開始、バイファムが単機、基地に忍び寄り、時を待つ。ここからの作戦の内容について、視聴者には事前には何も知らされていない。今回のタイトルである「囮になったロディ」から類推せよということなのか(それは可能だが)。ただ、この場合の「囮」は後のミューラァをひきつけるのと両方だろう。「フェーズ3終了まであと3分」とバイファムのコンピュータがしゃべった。作戦に「フェーズ」を決めているのも重要だし、バイファムのコンピュータが珍しくしゃべっているのも注意。ただし"FASE"ではなく"PHASE"。
爪をかんでうろうろするスコット。こういうときガールフレンドがたしなめるのがセオリーだが、場合が場合だからか、クレアは何も言わず。同じくらい不安なフレッドは「僕、やっぱり見てくる」と走り出すのをケンツに止められる。ケンツはロディなら「実戦のキャリアがバッチシ」と太鼓判を押す。
「バーツ時間よ」今回バーツとマキがトゥランファムで出撃。……大事な作戦に私情は……そういうことじゃない? でもね、「こわくねーか、マキ?」「え、冗談じゃないよ」なんて会話を見せられちゃね。「あたいがやらなかったら誰がやるってのさ」と言ってペロッと舌をだしてウィンク。この表情は必見だ(これで佐々門作画でなければ……<失礼)。マキはかわいいところもあるってことを「13」の製作スタッフは忘れないでほしい。
「派手にあばれてやる」とロディが攻撃を開始。ミューラァの基地に応援が要請される。敵がただ1機と聞いたミューラァは「やつだ、やつに違いない」と直感。ギブル3機を引き連れて即座に出撃する。どうして1機だとやつなんだろうか?
トゥランファムに守られながら、囚人たちが外に出ていく。その数5、60人。子どもたちが観察して数えたより多いらしい。カチュアは地球語で、メルの親父はククト語でせかす。「ゲソイ、ゲソイ!」
スコットとケンツもバギーで応援に。車にカチュア、メル、メルの親父たちを乗せて引き上げる。「はじめまして。僕、リーダーをやってます……」自己紹介は後、とケンツ。その通り。
ミューラァたちのフローティングタンクが到着。ロディがふたたび囮になって彼らをひきつける。「やつめ、今度こそ首をとってやる」のミューラァには捕虜なんてどうでもいいのかも、もし気づいたとして。
ガイ、ユウは父、ケイは母と再会。「いーないーな、あのこたち」「あたしもパパやママにあいたい」マルロとルチーナはクレアにすがりつく。「きついよな。目の前で見せつけられるんだもんな」とシャロン。
ロディは敵をひきつけるため、遠くに逃げ出した。それを追うデュラッヘとギブル。
ククトニアンの捕虜は地球人の収容所の位置を知っていた、ただし13人の両親がいるのかは知らないが(当たり前)。危険をおかしたかいがあった。
しかし、フレッドは兄の無事を心配して泣いている。彼をなぐさめるカチュア。「フレッド、心配しないで。ロディは必ず戻ってくるわ。必ず――」こういう気配り、ペンチにはできないだろう。
1つのクエスト(/使命/目的)達成で次のクエストが明らかになるのはRPGっぽい展開かも。勘定でいったら損なクエストでも達成すればみちが開けるのもそれっぽい。
原画
佐々門信芳

Vd: 2000.2.19, Vd: 1998.6.11