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No.102 開聞岳(かいもんだけ・924m)
平成12年(2000年)3月20日 晴れ レンタカー利用
開門岳の略図
国道226号線より開聞岳を望む
開聞岳が迫る
「かいもん山麓ふれあい公園」から歩き出す
開聞岳へ向かう

常緑広葉樹(照葉樹)の林が続く
登山道にて

枚聞神社奥宮(御嶽神社)
枚聞神社奥宮

真新しい山頂標識
開聞岳の山頂にて


九州南部の山旅3日間(後編)
山の神に感謝した

《レンタカー利用》 第1日=宮崎空港…韓国岳…霧島温泉 第2日=霧島温泉…高千穂峰…指宿 第3日=指宿-《車》-かいもん山麓ふれあい公園・駐車場〜2合目登山口〜開聞岳(往復)-《車》-鹿児島空港 【歩行時間: 4時間10分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


*** 前項・霧島山 からの続きです ***

 3月20日(第3日目): 錦江湾に別れを告げ、指宿温泉を車(レンタカー)で出たのは午前7時半頃。国道226号線を西へ向かうと、美しい円錐形の開聞岳が前方間近に迫ってくる。今日は昨日とは打って変わっての、春爛漫の良い天気。菜の花も満開だ。
 「かいもん山麓ふれあい公園」の駐車場に車を止め、ルンルン気分で歩き出したのは8時丁度。正面に開聞岳を仰ぎ、左手に閑散とした草スキー場を眺めながら、コンクリート道を直進する。
 開聞岳は二重式火山で、七合目付近から上の部分が二次噴火による隆起によってできたものらしい。近くから眺めると、その境目がはっきりと見てとれるのが面白い。
 ほどなく「二合目」の標板の立つ登山道入口に着く。シジュウカラの仲間(ヒガラ?)だろうか、小鳥の囀りが盛んに聞こえてくる。ウグイスも何処かで鳴いている。ワクワクしながら鬱蒼とした木立の登山道へ足を踏み入れる。
 登山道は、時計回りの螺旋状に、山頂までゆっくりと一周している。暫らくは背の高い松林が続くが、三合目の手前からは樹高のやや低い照葉樹主体のジャングルだ。山頂近くまでは展望の開ける箇所は数カ所しかなく、樹木の観察に専念せざるを得ない。「南薩流域林業治性化センター、サザンクロス・フォーラム21部会」なる団体の作った樹木名の標板が、登山道沿いの随所の幹にぶら下がっている。二合目から七合目まで、片っ端からメモってみた。

・・・アオキ、ホルトノキ、イヌビワ、キブシ、マルバウツギ、コンテリギ、ヤツデ、ネズミモチ、ムラサキシキブ、クロキ、アラカシ、カゴノキ、コバモチ、シロダモ、クスノキ、ナナメノキ、ヤマビワ、タブノキ、ヤマザクラ、モツコク、タイミンタチバナ、ウラジロガシ、テイカカズラ、サカキ、スダジイ、ニワトコ、エゴノキ、サルトリイバラ、イヌガシ、ミミズバイ、サザンカ、カラスザンショウ、ミヤマシキミ、クスドイゲ、ヒメアリドウシ、バリバリノキ、ヒサカキ、クサギ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイ、ゴンズイ、・・・

 昔日の植物学者、武田久吉博士(「尾瀬と鬼怒沼」や「明治の山旅」等の著者)の山行記のようにはなる筈もなく、なんか、訳の分からない登山になってきた。登りは、とにかく、両足よりもエンピツを持った右指の方が疲れた…。

 七合目辺りから雑木林の樹高はますます低くなり、露岩が目立ち始める。安山岩であるらしい。「仙人洞」と呼ばれている洞窟の案内板の前で立ち止まってみた。ここは開聞岳が噴火したときに溶岩がせりあがってできたといわれているところで、昔は山伏たちの修行の場として使われていたそうだ。
 九合目を過ぎると岩と潅木の急勾配になり、視界が開けた。山頂部、三角点の南東方向約10メートルの潅木の中に、枚聞(ひらきき)神社の奥ノ院がひっそりと祀られており、 まずはここで柏手を打つ。家族連れなどの登山者で賑わうゴロ岩の山頂に着いたのは午前10時45分だった。
 山頂からの展望は春霞に包まれ遠望は利かず、流石に屋久島は見えなかったが、それなりに素晴らしかった。北の方向から時計回りに、イッシーの池田湖、錦江湾、長崎鼻、太平洋、頴娃の町並、などが一望できる。
 山頂標柱の背後にある一段と高い岩の上に、「昭和63年7月20日・皇太子殿下登山御立所」と彫られた石盤の記念碑が置かれてあった。記念碑の建立当時(平成2年2月2日)の皇太子様とのことだから、徳仁親王殿下に違いない。今までの私達の山旅のかなりの部分に殿下の御影が付きまとう。殿下の登山好きはハンパじゃないね、うれしいことだね、と、佐知子とひそひそ話し合ったものだ。
 山頂での大休止の後、南九州の山旅の終焉を惜しみながら、往路をゆっくりと下山した。日本百名山の完登を意識していなかったら、多分、霧島山やこの開聞岳には来られなかっただろうね、などと、妙に神妙な気持ちになり、二人の会話も途切れがちだった。その寡黙な時間は、多分、山歩きを続けていて良かったと思う、山の神に感謝をしている時間だったのかもしれない。
 清々しい気持ちで山麓ふれあい公園の駐車場に戻ったのは午後1時30分頃だった。

 帰路、山麓の枚聞(開聞・ひらきき)神社を参拝してから鹿児島空港へ向かった。随分とゆっくり行動したつもりだが、それでも飛行機の待ち時間は3時間近くもあり、空港のレストランで、さつま揚げを肴に地元の芋焼酎を飲んでみた。とても旨かったので、ついつい飲み過ぎてしまい、前後不覚に陥った…。
 乗っていた飛行機の着陸の振動で目が覚めた。東京は、もう、夜だった。

* 太平洋戦争の末期、知覧から南方へ向かって飛び立った特攻隊員の多くは、この開聞岳に向かって敬礼をし、何度も振り返ったという。合掌・・・。

指宿温泉「指宿コーラルビーチホテル」: 部屋の窓から錦江湾を隔てて、大隈半島の山々などが一望できる。夜、波静かな海上に晧々とした満月が浮かんでいた。泉質は食塩泉、海水の味がした。湯量は豊富。いい風呂だった。私達は行かなかったが、近くに天然砂むし温泉があり、送迎のバスが出ているとのことだった。
* この後、指宿コーラルビーチホテルに不祥事があったらしく、2020年9月24日から休業しているようです。[後日追記]

* 開聞岳登山の拠点(温泉宿)としては、一軒宿の川尻温泉が最も近く、他に成川温泉などもあるのだが、私達はネームバリューに負けて指宿温泉を選んでしまった。めったに行けない遠い処なので、それが少し心残り。結果論ではあるけれど、下山後に川尻温泉でひと風呂浴びる時間は充分にあったと思う。
* 国土地理院は平成13年8月、開門岳の標高を2mプラスして924mに修正しました。[後日追記]



北麓の菜の花畑から眺めた開聞岳
菜の花畑と開聞岳
ハイカーたちで賑わう山頂
満員状態の開聞岳山頂

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