No.101 霧島山(韓国岳・高千穂峰) 平成12年(2000年)3月18日〜19日 |
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【歩行時間: 第1日=2時間15分 第2日=2時間30分】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(韓国岳)へ → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページ(高千穂峰)へ 3月18日(第1日目・韓国岳登山) 宮崎空港で予約しておいたレンタカーに乗り、宮崎自動車道を西へ向かう。カーナビ付きの自動車を初めて運転したのだが、このカーナビがなかなかの優れもので、方向オンチの私達夫婦にとっては強い味方になってくれた。小林インターで高速を降り、暫らく走って、えびの高原の韓国岳登山口バス停近くの駐車場に車を止める。途中、モクレン(コブシだったかも)があちこちで咲いていたが、新緑の季節には全然早すぎた。
山頂近くの吹きさらしの岩稜から、左下に広がる韓国岳(からくにだけ)のまあるい火口を恐る恐る覗き込んでみた。地形図で調べたら、火口の直径は約900メートル、深さ(火口底と韓国岳山頂との落差)は約280メートルだった。 岩だらけの頂上に着いたのは午前11時40分。気温摂氏約11度、西の風が強く少し寒かった。東京を発ってから僅か5時間15分の後に、霧島連峰の最高峰に立っている自分達自身が、何故か信じられなかった。南東の方向、春霞の中、新燃岳(しんもえだけ・1421m)の左奥に、ぼんやりと、両翼を広げた崇高な高千穂峰(たかちほのみね・1574m)が、横長の「山」という字の形に見えている。あぁ、ここは九州の霧島山なんだ、と、そのとき初めて実感した。 足下の火口を眺めながらの、山頂での大休止。吸い込まれそうな高度に少し恐怖を感じながらの食事だったが、持参したオニギリは大変美味しかった。食後、改めて山頂を歩き回ってみた。南西方向の眼下に伝説の火口湖、大浪池(おおなみいけ)が大きい。 霧島山は韓国岳と高千穂峰を中心として23座の火山からなるという。(鹿児島県の案内板には23座、ガイドブックなどには22座と書かれているものや25座と書かれているものがあるが、一体どれが本当?) 山頂にはそれぞれ小火口があるらしい。鹿児島県の案内板によると完全な火口が15、大浪池のような水のたまった火口湖が10もあるとのことだが、なるほど、ここから見下ろした霧島火山の眺めは、クレーターの多い月の表面を見ているようだ。 山頂から来た道を引き返す。下山口近くで往路を外れ、硫黄山を見物してみた。噴気の上がる賽ノ河原や大地獄小地獄などの様子は、火山独特のおどろおどろしいもので、こういう景色を見ると何時も背筋に戦慄が走る。 駐車場に戻ったのは午後2時丁度だった。それから車に乗り、カーナビのアナウンスに従って運転していたら、あっという間に今夜の宿、硫黄谷温泉へ着いてしまった。何か、あっけない感じがした。新燃岳方面への縦走が可能だったかもしれない。コース計画に余裕を持たせすぎたかな。と、そう感じたのは、この日は天気も良く、体調も絶好調、交通などすべてが順調だったおかげだ。少し残念だったのは、薄靄のため、桜島などの遠くの景色が望めなかったことだ。でも、あとから思うと、それは少し贅沢過ぎる不満だった。贅沢な不満を持った私達に神罰が当たることになる。この翌日、天孫降臨の地、高千穂峰は雨だった。 硫黄谷温泉「霧島ホテル」: 林田温泉などとともに霧島温泉群の一角を担う、立派な杉木立に囲まれた、一軒宿とは呼びづらい、あまりにも大きな温泉ホテル。坂本竜馬も新婚旅行(?)でお竜さんと宿泊したという幕末からの歴史を誇る。1500名が同時に入浴できるという「硫黄谷庭園大浴場」は、広さ(560坪)といい湯量といい、とにかくスゴイ。泉質は豊富で、硫黄泉、塩類泉、明ばん泉、鉄泉など多彩。浴槽も大小各種バラエティに富んでいる。もう、ただただ呆れ返るばかりで、これには完全にマイッタ。究極の温泉、の、一つのカタチなのかな…? 「霧島ホテル」のHP
3月19日(第2日目・高千穂峰登山)
松林を抜けると、露岩と赤ザレの急坂になってきた。風を遮るものが無くなり、突風に佐知子のさしていた傘がオチョコになった。傘なんかさしている場合ではなかった。早くも私の古靴に雨水が進入してきた。稜線(馬ノ背越)へ出ると南風がいっそう強くなった。右下に火口(御鉢:直径約550m、深さ約200m)の底部がぼんやりと見えている。鞍部へ出て、最後の登りにかかる。視界約30〜40メートル。脱コースに注意しながら、ズルズルとすべる火山性の砂礫道をゆっくりと歩く。 坂本竜馬とお竜さんがアベック登山をして、悪戯心で抜いてしまったという「天の逆鉾」の立つ山頂へ着いたのは午前10時10分だった。小さな山頂小屋は管理人常駐とのことだったが、戸には鍵が掛かっていて中へは入れなかった。少しずつ雲の切れ間が広がっているようだ。時折、霧が少し晴れて、御鉢や新燃岳が見えてくる。感動的な眺めだが風なお強く、アラレ混じりの雨が顔に当たると、とても痛い。 30分間ほど寒さに耐え、山頂で時間を過ごし、10時40分に下山開始。雨も風も弱くなってきた。登りは歩きづらかった砂礫の道も、富士登山の砂走りじゃないけれど、要領を覚えてしまえば楽しく下山できる。砂礫がクッションになり、膝にもそれほど負担がかからない。 下山途中からは霧も晴れてきて、待望の桜島の遠景も、薄っすらとではあるけれど望むことができた。ただ、昨日登った韓国岳だけは依然雲の中だった。 この日、この山で出遭った登山者は4組の十数名だけ。しっとりとして静かな山歩きだった。 高千穂河原の駐車場へ戻ったのは午前11時55分。昼飯前、だった。朝は私達の車だけだったのが、何時の間にか10台ほどの車が駐車していた。 車に乗った途端、雨が完全に止んだ。指宿スカイラインを南下中、明日登山予定の開聞岳が、青空の広がる南の彼方にくっきりと見えてきた。 * 韓国岳と高千穂峰の別称について: 韓国岳(からくにだけ・1700m)の別称には空国岳・唐紅岳・西霧島山・西岳・筈野岳・雪岳・複の岳・御天井嶽・甑岳などがあるという。いっぽう高千穂峰(たかちほのみね・1574m)には鉾嶽・東嶽・矛峰・御岳様・御天井様・二上峰・東霧島山などの名もあるらしい。高千穂峰を東岳・東霧島というのに対して、韓国岳を西岳・西霧島と呼ぶこともあるそうだ。たくさんの別称に歴史を感じる。[三省堂の日本山名事典を参考にして後日追記]
* 後日(2023年11月)、同山域を歩く機会に恵まれました。そのときの山旅日記です。 えびの展望台から韓国岳を望む(2023年11月に撮影) このページのトップへ↑ ホームへ |