No.104 蒜山(ひるぜん・1202m) 平成12(2000年)年5月5日 |
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→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ *** 前項・伯耆大山 からの続きです *** 5月5日(第3日目): 蒜山高原の宿「ペンションさかた」の気さくな御主人に、RVの自動車で、上蒜山の登山口まで送ってもらった。とても良心的な良い宿だった。宿の御主人に感謝の別れを告げ、朝のすがすがしい冷気を腹いっぱいに吸い込み、歩き出したのは7時50分。ここでも芽吹いたばかりの新緑と小鳥たちのさえずりが、私達を優しく出迎えてくれた。ゆっくりと、のんびりと、休み休み歩いた。時間はたっぷりとある。(と、思っていた。)牧場を横切り、まず最初は丸太の階段を直登する。スギとヒノキに交ざり、カラマツが可愛らしい新芽をつけていた。二合目あたりから展望が開けてくる。三合目で早くも中休止。右手を振り返ると、三平山などの山々や蒜山盆地を見晴らすことができる。その蒜山盆地(=蒜山高原=蒜山原)の牧草地が、まるで初夏の田圃のように、鮮やかな緑のパッチワーク模様を見せている。 五合目の手前から皆ヶ山の肩越しに、昨日登った霊峰大山が見え始めた。いつしか辺りは背の低いカシワの純林となっている。十数メートル先で、まだ芽吹いていないカシワの枝にとまって、さえずっている鶯(ウグイス)を見た。いつも藪の中で、案外と見る機会の少ないこの(有名な割には地味な)小鳥をしっかりと瞼に焼き付けた。 展望の良い八合目(槍ヶ峰)付近でまたまた中休止。ここから山頂までは未だ冬枯れの細身のブナ林だ。道端には山に春の訪れを告げる薄赤紫色のそり返った花、カタクリの花が可憐に咲いていた。 上蒜山山頂分岐へ辿り着いたのは10時50分。シジュウカラがすぐ傍の梢に止まっていた。小休止の後、分岐から北西へ向かってササの藪こぎ約10分。 二等三角点のある上蒜山の山頂へ着いた。狭い山頂は木々とササに囲まれ、見晴らしもあまり良くないので早々に引き返した。それにしても、上蒜山山頂分岐点の標高が1202mで、上蒜山山頂の標高が1200mと、山頂の方が2mほど低いなんて何か変な感じがした。(まぁ、どうでもいいことだけれど…) カタクリの花などを愛でながら中蒜山へ向かって急坂を下る。鞍部から登り返し、ユートピアと名づけられたネザサの柔らかい原を抜ける。風の強い山稜で高木が育たないそうだ。そのおかげで空が抜けて広々として、とてもイイ感じだ。と、間もなく避難小屋のある中蒜山山頂へ着いた。12時25分だった。 三角点標石の傍らの、ネザサに囲まれた小広い山頂広場のベンチに腰掛けての昼食。東西20キロ、南北10キロという大きな蒜山盆地などを見下ろしながら、「ペンションさかた」の奥さん手作りのオニギリ弁当を美味しくいただいた。 下山開始は13時10分。のんびりと歩きすぎた(何時もの私達の悪いクセ)せいで、流石に下蒜山への縦走はここで断念する羽目になった。定期バスの発車時間など、時間的な自信が持てなかったのだ。結局、中蒜山から日留神社(五合目)を経由して、塩釜冷泉をめざして南下することになった。 気合を入れて早足で下り、塩釜冷泉に着いたのは14時10分だった。小川となって流れている名水を手ですくってガブ飲みした。喉がカラカラだったのでとても美味しかった。 中井川のバス停着は15時丁度。バス停のベンチに腰掛けて待つこと約50分。渋滞があったらしく、定時を30分ほど遅れて岡山行きの中鉄バスは到着した。今夜の宿は湯原温泉に予約を取ってある。明日は東京へ向かってただひたすら帰るだけだ。 * 蒜山(ひるぜん・蛭山、昼山): 鳥取県倉吉市と岡山県真庭市の境に位置するトロイデ火山。通常は上蒜山1202m・中蒜山1123m・下蒜山1100mを総称して「蒜山」または「蒜山三座」と呼ぶそうです。この地特有の「黒ボコ」といわれる火山灰土壌(ダイコンの培栽に適しているそうですが…)は雨が降ったら滑りやすいので要注意です。 山名の由来は、@野蒜(のびる)がたくさん自生しているから、A軽石を蛭(ひる)石ということから、B蒜山高原を代表する植物ヒロレ(カヤツリグサ科の常緑多年草=ミヤマカンスゲ・ヒロロ)から、C天照大神の名オオヒルメノムチから、D湿地地名をヒルというから、E太陽が見えるときは昼だから…など、諸説があるそうです。 * 蒜山高原「ペンションさかた」: 川上村の東、北に蒜山三山を望む静かな高原に位置する素敵なペンション。昔は船乗りをしていたという気さくな御主人と、温和で料理がとても上手な奥さんのお二人が、6年ほど前より、3人のお子さんを育てながら切り盛りされている。真心のこもった料理は何を食べても旨かったし、きれいなタイル貼りの風呂も充分な広さを持っていた。私達の部屋は六畳の落ち着ける和室だったが、洋室もあるらしい。ご自慢のオリジナルワインがまた美味だった。蒜山へ行かれる方にはお勧めのペンションだ。 この後、高原のお宿「さかた」と改名したようです。[後日追記] 高原のお宿「さかた」のHP 湯原温泉「油屋」: 湯郷、興津とともに美作三湯のひとつ。風光明媚な山間に湧く古くからの名湯。良い意味で、活気のある温泉街。アルカリ性単純泉。「油屋」は元禄時代からの老舗旅館。屋号の謂れは、かつて道中の燈火の油を提供していたことによるらしい。私達は対岸の別館に部屋をとった。夕方の風呂上り、浴衣姿に下駄履きで、清流旭川に沿って散歩してみた。ゆったりと時間が流れ、山旅の疲れが癒えていくのが分かった。 「油屋」のHP * 「千と千尋の神隠し」のモデル?: この湯原温泉「油屋」の旧館「食湯館」が、アニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋(油屋)によく似ているという。確かに感じは似ているけれど、私がこのアニメを先日のテレビで初めて見たときは、「あっ、道後温泉本館だ!」 と思ったものである。 ちょっと興味をそそられたのでサイト検索などで調べてみた。宮崎駿監督の話しによると 「特定のモデルはないけれど、松山の道後温泉は確かに入っている」 とのことで、少し溜飲が下がった。尚、東京都小金井市の「江戸東京たてもの園」にある「子宝湯」も、アニメ制作過程においてかなりのインスピレーションを与えたものであるらしい。 この「千と千尋の…」にでてくる湯屋に似ている温泉旅館は、じつはその他にも沢山あるらしい。同じ「油屋」の屋号を持つ長野県の諏訪湖畔に建つそれも結構似ているそうだ。山形の銀山温泉、宮城の鎌崎温泉、群馬の四万温泉、長野の渋温泉、鳥取の羽合温泉、などの温泉宿からも「うちがモデルではないか」という話がきているそうだ。 と、まぁ、これもどうでもいいことだけれど…。[後日追記]
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