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苗場山山頂部の大湿原
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山頂の空中庭園「神々の田圃」に遊ぶ
第1日=JR越後湯沢駅-《タクシー》-和田小屋〜中ノ芝〜神楽ヶ峰〜苗場山・遊仙閣 第2日=遊仙閣〜フクベノ平〜(昌次新道)〜赤湯〜鷹ノ巣峠〜ゲート-《タクシー》-貝掛温泉(泊)…
【歩行時間: 第1日=3時間30分 第2日=6時間】
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第1日目(9/22): 越後湯沢からはタクシーを利用。タクシーは登山口の祓川(はらいかわ)を通り過ぎ、林道の終点と思える駐車場も通り過ぎて、何と、標高1370mの和田小屋まで入ってしまった。当初の登山計画からは、少なくても、駐車場からの歩行時間約30分はトクをしたことになる。苗場山がどんどん登りやすくなっている、というのも、実感として頷けた。
そのタクシーのベテラン運転手さんから聞いた話によると、この林道は、昔、ブナを伐採するために造られたものであり、伐り倒されたブナの多くはチップ材として使われた、とのことだった。
タクシー料金5,480円を支払って、かぐらスキー場のゲレンデの中にある和田小屋前から歩き出したのは午前8時10分頃だった。寒気団来襲とのことで、少し寒い。佐知子のザックに付いているキーホルダーのバカチョン温度計によると、気温は摂氏約8度だった。キョロキョロと辺りを見回しながら登っていくと、辺りにはオオシラビソやコメツガなどに混じりブナの木が数多くあった。 「ブナが、まだたくさん残っていて良かったね」 と思わず言い合って、心が少し和らいだ。道端にはオヤマリンドウが僅かに咲き残っている。
約45分間ゆっくり歩いて15分間の中休止、と、何時ものペース。後ろを振り返ると見える筈の巻機山は、この日はずっと雲の中だった。稜線へ出て、神楽ヶ峰2030mを越えると道はいったん下りになる。正面には緑の苗場山がそそり立つ。ダケカンバの急坂を登り返す中間で息が切れたので、取り敢えずの大休止、早めのお弁当。田舎から送られてきた新米のオニギリは格別美味かった。居直るつもりはないけれど、そう、私達は休むために歩いているのです。
急登が急に終わり、平坦な山頂部へ出て、矢張り驚いた。この広大な黄金色の湿原は、一体どうしたことだろう。神様は時としてこんなステキな悪戯をされるのだろうか。言葉も出ず、歩くのも忘れて、永いことただ茫然と、「神々の田圃」の入り口に立ち尽くしてしまった。
裏庭に一等三角点のある山小屋「遊仙閣」に着いたのは、まだお昼の12時40分だった。早速、小屋に荷物を預け、4平方キロメートルはあるという頂上湿原の散策に出かける。周遊コースがないので、木道を放射線状に行ったり来たり、草紅葉や池塘の景色を思う存分楽しんだ。
収容人員35名の遊仙閣のこの日の泊り客は50〜60名で、二畳に三人強と、やや窮屈だった。少し離れて隣接する苗場山自然体験交流センター(山頂ヒュッテ)は100名の収容力をもち、宿泊料金は7,000円(2食付き)で、遊仙閣より200円ほど高いけれど、湿原などの眺望にも恵まれているようで、「ヒュッテにすればよかったかしら」 などと佐知子とひそひそと話し合ったものだ。でも多分それは「隣の芝生」だったと思う…。
小屋での夕食(美味しいカレーライスで私も佐知子もお代りをしてしまった)を済ませ、日の沈みかけた外へ出てみた。雲がすっかり取り払われて、茜色に染まる西の空にくっきりと黒の輪郭で北アルプスが横たわっていた。
寝る前に再び外へ出てみた。寒くて木道は凍っていたけれど、満天の星空だった。天空には天の川、北の空には地平線上にカシオペア座と北斗七星。西の空には三日月がなりをひそめている。今夜はステキな夢が見られそうだ…。
第2日目(9/23): 未明、外へ出てみた。まだ「夜空のシャンデリア」だった。オリオンやスバルなどの冬の星座を、思いがけず観察してしまった。徐々に明るくなってきて、湿原の先の雲海から頭を出している谷川連峰の、その真上から朝日が昇ってくる。霜柱があちこちにでき、池塘には厚い氷が張っていた。朝のピーンと張りつめた冷気の中での、この清々しい感動は、山歩きを趣味にしている私達にとってのかけがえのない宝物だ。
小屋で朝食を済ませ、歩き始めたのは午前6時丁度。昨日に引続き広い山頂部の木道を行ったり来たり、四方の景色をゆっくりと見て廻った。
6時45分頃、山頂部南端の崖っぷちからいきなりの急降下が始まる(昌次新道)。要所にはクサリがあり心配はない。間もなく稜線上の比較的ゆるやかな下りになる。ダケカンバやナナカマドが目立つ道だ。
何時しかブナ林となり、フクベノ平を通過。赤湯の「山口館」へ着いたのは午前11時40分頃だった。山口館の優しくて美人の(多分)若女将から、弁当を忘れた私達にカップ麺を提供してもらった。秘湯として名高い川原の露天風呂へ入っていきたかったけれど、まだ長い道のりが残っているし、今夜の予定の宿も温泉(貝掛温泉)だったので、今回はパスした。何時の日か、この赤湯のランプの宿「山口館」をベースに、もっとゆっくりと、再び苗場山を楽しんでみたいと思った。
赤湯では携帯電話は「圏外」なので、山口館の若女将から教えられた通り、約40分間ほど登り返した(この登り返しがけっこうきつかった)ベンチのある展望台からタクシーを予約した。ゲートへ着いたのは午後2時40分、ほぼ同じ時間にタクシーが到着した。じつは、私達はこの「赤湯のゲート」まで車が入れるということを、現地へ来るまでは知らなかったのだ。この先の元橋のバス停までの約2時間の歩行時間を短縮することができてしまって、日没近くの下山を覚悟していた私達は何時になくルンルン気分だった。
迎えに来てくれた湯沢タクシーの年輩の運転手さんは、なんと、昨日越後湯沢から和田小屋まで送ってくれた運転手さんと同じ人だった。で、貝掛温泉までの車中、おおいに会話が弾んだ。最後まで楽しい今回の山旅だった。
* 遊仙閣が営業休止!?: 2009年(平成21年)9月6日に放映されたNHKの「小さな旅(山の歌・ぽっかりと楽園〜苗場山)」をたまたま見て知ったのですが、遊仙閣がそのオーナー(リゾート会社?)の意向により営業休止状態にあることを知りました。ちょっと残念です。[後日追記]
* 遊仙閣は解体!: その後、2012年(平成24年)の秋に遊仙閣は解体されたとのことです。非常に残念です。[後日追記]
貝掛温泉: 赤湯のゲートから越後湯沢駅へ向かってタクシーで約40分、国道17号線からカッサ川(清津川の支流)へ下った閑静な山間に位置する一軒宿の温泉。昔から「目の温泉」として有名、とのことだ。ぬるい湯なので、長っ風呂の私には具合がいい。湯量豊富で、男女別の石タイル貼りの内湯、石造りの露天風呂ともに常にお湯が溢れている。含土類食塩泉(弱アルカリ性低張温泉)。日本秘湯を守る会の会員旅館でもある。山や川の幸を主体にした懐石風料理もとても美味しかった。1泊2食付き一人15,000円は妥当な料金だ。
「貝掛温泉」のHP
翌朝、宿から歩いて約10分(頼めば送迎車あり)の貝掛温泉入口バス停から帰路に着いた。越後湯沢行きのバスの車窓から左手を振り返ってみたら、手前の緑深い山々の後方に、チラッとだけれど、苗場山のあの平坦な山頂部が見えた、ような気がした…。
まったりと苗場山: この後(平成28年10月)、再び苗場山に登る機会を得ました。[後日追記]
苗場山頂の広大な空中庭園
山頂湿原から南面(佐武流山方面)を望む[H28年10月に撮影]
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