No.130-2 まったりと 苗場山2145m 平成28年(2016年)10月13日〜14日 |
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【歩行時間: 第1日=4時間30分 第2日=3時間】 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ 山の仲間たち(山歩会)との10月定例山行に苗場山を選びました。最近、この山を日帰りで登るのが主流のようですが、それではやっぱりもったいないと思うのです。 苗場山頂ヒュッテを利用した今回の2日間コースは、足腰の弱った中高年ハイカー(私のことです)にとっては無理なく楽しめる、ステキなコース設定だったと自画自賛しています。 第1日目(10月13日): 東京発7:00の上越新幹線(Maxとき303号)で越後湯沢まで行き(8:10着)、駅前から和田小屋前までは予約のジャンボタクシーを利用します。タクシー料金は8,090円でしたが、ちょうど乗客定員の9名で効率が良く、一人当たり約900円でした。これもグループ登山のよいところです。 なにやかやで、和田小屋前(かぐらスキー場)から祓川コースを歩き始めたのは9時頃でした。この日は殆どガスっていて展望がなかったのが残念でしたが、明るい(成熟した)ブナ林から亜高山型のオオシラビソ・ダケカンバ林へ変化していく様子(森林の垂直分布)を楽しんだり、「股スリ岩」などのちょっとした岩場で緊張したりして、飽きませんでした。要所は木道になっていて、以前歩いたとき(→苗場山・H13年9月)よりも大分歩きやすくなったような印象を受けました。木道に小さく貼り付けられているプレートには「平成21年施行」とか「平成24年施行」とか書かれてあり、比較的最近にできたものであることがわかります。 神楽ヶ峰を越えて、そして急坂を登り返して、あのアッと驚く大湿原の山頂部・神々の田圃に着いたのは15時頃でした。私たちとしては至極順調な初日です。 この日の苗場山頂ヒュッテ(苗場山自然体験交流センター)は、平日(木曜日)だったこともあり、ゆったりと過ごすことができました。缶ビールやジュースなどを飲みながら歓談したりして過ごし、18時からの(カレーライスの)夕食後はそそくさと部屋に戻り、19時頃にはほとんど全員がもう眠っていました。 第2日目(10月14日): 朝の気温はマイナス2〜3度で、都会の夏のけだるさになれた身体にはかなり寒く感じました。しかし気合を入れて、御来光を見るために、ザックに入れてきた衣類を全部着込んでヒュッテ近くの展望場へ行きます。霧が晴れて東の空が薄っすらとオレンジ色に染まっています。見渡す限りの山頂湿原の景色には、やっぱり感動せずにはいられません。やがて5時50分頃、谷川連峰の辺りでしょうか、雲の隙間からお日様が昇りました。山の朝って、ほんとうにいいものです。 6時からの朝食後、モルゲンロートに映える草紅葉の空中庭園を愛でながら、木道をゆっくりと歩き始めます。前方には、南へ連なる佐武流山などの信越国境の峰々が、大湿原の上に横たわっているように見えています。 今回は信州側の小赤沢コースで秋山郷へ下る、という計画です。龍ノ峰へ続く木道を正面に見送って、右へVターンします。暫く進むと九合目に位置する小粋な湿原(坪場)を通過しますが、この辺りから眺めた西面の山岳風景が秀逸でした。とんがり帽子の鳥兜山の右側には妙高〜火打が案外と近く、左側の奥には北アルプスの錚々たる峰々が連なっています。ため息をつきながら小休止を繰り返し、湿原の外れ(坪場の北西)から、いよいよ本格的な下山道です。 岩っぽい箇所にはクサリが張ってありますが、殆どそれに頼ることなく下ることができます。クサリ場を過ぎて暫く下ると傾斜は穏やかになり、ブナ・モミ・ネマガリダケ群落の林相を楽しみながら、ぬかるんだ道がちょっと歩きづらいですが、和気藹々と歩を進めます。 11時少し前に大駐車場のある三合目登山口に到着すると、約束のワゴン車が待っていてくれました。栄村秋山地区内での観光や登山の客を対象にした「公共無料送迎サービス」で、今年の8月6日から(11月13日まで)の試験運行を利用させてもらったのです。たまたまネットで知って申し込んでみたのですが、これは大ラッキーでした。 泥んこだらけになった靴をトイレ裏の小川できれいに洗ってから、栄村役場の好青年が運転するそのワゴン車に乗り込みます。好青年が途中の名所・小赤沢川を流れ落ちる「大瀬の滝(大ゼンの滝)」の近くに停まってくれたので、数日前までの雨で水量の増した、迫力のある滝をゆっくりと見物することができたのも嬉しいサプライズでした。 小赤沢温泉「楽養館」に着いたのは11時40分頃。栄村の好青年に何度もお礼を言いました。じつは、この秋山地区無料送迎サービスの存在を知ったのは本山行の数日前で、それまでは三合目駐車場からは山道を歩いて下山する予定でした。なので、当初の計画と比べると随分と時間に余裕ができたのです。まったくそれは嬉しい誤算でした。温泉にのんびりと浸かったり秋山郷総合センター「とねんぼ」民俗資料室などをゆっくりと見学したり…、下山後もまったりと、日本の秘境・秋山郷を散策することができたのです。予約の段階でお世話になった栄村地域おこし協力隊の岸幸一さん、そしてワゴン車を運転していただいた好青年には感謝感激です。 これっきゃないという小赤沢16:32発の路線バスに乗り、帰路につきます。津南へ至るそのバスの乗客は私たち9名だけでした。優しい運転手さんは、青く澄んだ中津川(信濃川の支流)の絶景ポイントで、私たちのために車を止めてくれました。なにもかにもがラッキーでファンタスティックな、今回の山旅でした。 小赤沢温泉「楽養館」: 長野県下水内郡栄村の、苗場山の西麓(秋山郷)に位置する日帰り療養温泉です。郷愁を呼び覚ます木造の建物や、鉄分の赤褐色がしっとりとなじんだ木枠の浴槽など、なんともいい雰囲気でした。外湯は無いけれど、内湯だけでも十分。もちろん源泉掛け流しで、泉質は含鉄・ナトリウム・カルシウム・塩化物泉。間欠泉のように噴出す源泉は摂氏45度とのことで、湯船では肌にちょうどいい温度です。湧出口では無色透明ですが、浴槽内で酸化して赤褐色になるとのことです。口に含むと甘しょっぱくて金気臭のある、如何にも効きそうな感じの濃い温泉です。 入浴後、食堂で岩魚の塩焼きをつまみに生ビールを飲んで極楽極楽〜。仕上げに食べた“きのこ蕎麦”も具がたっぷりでとても美味しかったです。この食堂のガラス戸からも風呂場のテラスからも、緑深い山里の景色が一望できるのもステキです。身体も心も温まる、私好みのシブい温泉施設です。なお、一般の入浴料は500円ですが、私たちは苗場山頂ヒュッテで購入した割引料金券のおかげで400円でした。 栄村・秋山郷の公式ホームページ 佐知子の歌日記より 苗場山のうっすら霜の木道に滑ってはしゃぐ六十女は 汽車ぽっぽのように肩寄せ足踏みし日の出を待てり六十女は チョコや飴を山の空気はおいしいと残さず食べる六十女は 赤茶色の湯の花が浮きじわじわと温まってく小赤沢の湯 山深く谷の険しい秋山郷 追っ手のがれた落人が住む |