「私達の山旅日記」ホームへ

No.132 新茅ノ沢から烏尾山 (表丹沢・水無川)
平成13年(2001年)12月1日 曇り

新茅ノ沢・略図
大山三峰山にて(H19年10月撮影)
オオセンチコガネ(後日撮影)

沢を登るK君・余裕です
K君 ガンバレ!


30年ぶりの沢登りにヒヤヒヤ

小田急線・渋沢駅-《タクシー10分》-諏訪丸(大倉)〜新茅橋〜(新茅ノ沢 F1〜F16)〜烏尾山1136m〜三ノ塔1205m〜二ノ塔1140m〜富士見山荘〜ヤビツ峠-《バス50分》-秦野駅 【歩行時間: 約5時間】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 仕事の後輩のK君と山登りの話しをしていたら、何故か、表丹沢の沢登りに挑戦するハメになってしまった。初級沢登りコースということで、妻の佐知子も誘ってみたけれど、「怖いから…」 という理由であっさりと断わられた。結婚前(三十ウン年前)には、源次郎沢だったか水無川本谷だったかは忘れたが、確か一度はいっしょに沢を登っている筈だけれど…。

 という訳で、若いK君と朝の8時に小田急線の渋沢駅で待ち合わせ、意気揚々とタクシーに乗り込んだ。のだが、このタクシーの運転手さんは10分ほども走ると、戸川林道の入口から少し入った処で「これ以上は悪路なので行けない」と車を止めてしまった。仕方なくタクシーを降りたが、これで新茅ノ沢の入口(新茅橋)までの1時間強の林道歩きを余儀なくされた。沢登りに備えて体力と時間を温存したかったのだけれど…。 「大倉までバスを利用したのと大差なくなってしまったね」 とK君に八当たりする心の狭い私だった。
 水無川の左岸に沿ってゆるやかに登っていく。まだ私が学生だった頃の冬、毎週のように歩いた懐かしの戸川林道。紅葉は殆ど終わっていて、谷間の冬風が肌に沁みこんでくる。でも、それがとてもさわやかで、林道歩きもいいもんだ、と現金な私でもあった。
 K君が雑木林の中へ入って一生懸命落ち葉を掃っている。何をしているのかと尋ねたら、シカの糞を捜しているとの返事。後で聞いて分かったことだが、このとき昆虫好きのK君は、じつは、シカなどの動物の糞を食するセンチコガネ(ウンチコガネ?)を捜していたらしい。なんでも、ピカピカのとてもきれいな15ミリ程度の甲虫で、シカの多い処、例えば宮城県の金華山やこの丹沢などに多く生息しているらしい。K君は、また、「糞尿処理に困っている山小屋などでセンチコガネを大量に飼ったら問題解決になるのでは…」 とも言っていた。少しクサイ話だが、また勉強になった。
 烏尾(からすお)尾根コースへの入り口を右に見て、なお暫らく林道を行くと、支沢に架かる小さな橋へ出た。多分これが新茅橋だろう、と思ったけれど、橋名などの標板がどこにもなく、確証がなかったのでそのまま林道を進むと、作治小屋へ出てしまった。矢張りあれが新茅橋だったんだ、と慌てて引き返す。
 新茅橋まで引き返した、のだけれど、さて困った。“新茅ノ沢にはこの橋の下から入る” とガイドブックには書いてあったが、何処にも降り口がない。諦めて覚悟を決め、ザックからザイルを出そうか、と思っていた時、K君が、橋のすぐ傍の下流側に沢への降り口を見つけた、と大声で報告してくれた。と何やかやで、沢登り開始は10時半頃になってしまった。
今いる位置が分かりやすい
Fナンバーのプレート

軽登山靴で充分
稜線近くのガレ場

烏尾山荘の奥の山は三ノ塔
烏尾山の山頂にて
 滝にはフォールナンバー(F1からF16まで)があり、F10までは岩盤などに「秦野市丹沢遭難対策協議会」なる団体によるプレートが取り付けられていて、自分たちの今いる位置が分かりやすい。ついでに「コース入口」の道標を設置してくれていたらもっと分かりやすかったのに…、と思ってしまう。
 ガイドブックなどによると “地下足袋、草鞋などの足ごしらえが歩きやすい” とのことだが、私たちは軽登山靴を履いていた。無理をしなければ、この近辺の沢登りコース(水無川本谷、源次郎沢、小草平ノ沢など)では、防水のしっかりした軽登山靴で充分だと、昔(私が若い頃)の経験上、そう思う。
 暗いゴルジュ(大きな岩溝)のF1からF3は、直登はちょっとヤバイので右側から巻く。それでも“三点確保”は必要だ。脚力も腕力も平衡感覚も、昔と比べると随分と衰えているのが分かる。足と心が少し震えだした。
 落差12メートルの、この沢最大のF5大棚が近づいてくる。ヘルメットを被った二人組が右側の直登ルートを登っているのが見えた。小休止の後、私達は勿論、左側の巻き道(それでもけっこうきつい)を行く。登り終えて少し進むと、先ほどの二人組みが河原で小休止をしていた。 「直登したんですね」 と声を掛けたら 「もうビショビショです」 と返事が返ってきた。この日この沢で出会ったパーティーはこの二人組の若者たちだけだった。
 F6からはすべて直登。三点確保に留意しながら、休み休み慎重に登る。沢登り初挑戦のK君は黙々と私の後についてくる。30年ぶりの丹沢の沢登り。郷愁にも似た、えも言われぬなつかしさを感じながら、私も黙々と登った。何時しか足と心の震えは止まっていた。
 F9を過ぎた辺りでいったん伏流していた水流がF10の手前で再び現れる。傾斜が徐々にきつくなり、F15辺りで水流は消え、ゴーロがガレになりそしてザレになってくる。振り返ると、富士山が谷間の彼方に薄っすらと見えている。稜線は近い。
 13時25分、展望の開けた烏尾(からすお)山の山頂広場へ到着。雲は厚くなってきたけれど近景はよく見えている。塔ノ岳へ続く山稜や眼前の三ノ塔などの景色を楽しみながらの昼食。少し寒かったけれど、昆虫青年のK君と至福のひとときを過ごした。食後、山頂直下にある烏尾山荘で、ダルマストーブ(なつかしいね)で暖をとりながら山荘の御主人と言葉を交わす。静かな山頂を辞したのは14時10分頃だった。
 下山は三ノ塔、二ノ塔からヤビツ峠へと、これまた懐かしの表尾根コース。人気のコースだけあって眺望は流石だ。左手前方に大三角形の大山などを眺めながら、急ぎ足で下り、ヤビツ峠のバス停に着いたのは16時05分。土曜日の16時16分発の秦野駅行き最終バスに何とか間に合った。
 バスの車中、日が暮れだして、下界の街に明かりが美しく点り始めた。この道は夜景の名所でもあるらしい…。矢張り疲れたのだろうか。何時の間にか座席の私は熟睡していた。


水量が多くて苦戦!
ゴルジェを通過
烏尾山の山頂で怪気炎を上げる
烏尾山の山頂にて

再び新茅ノ沢へ
平成16年(2004年)10月23日 薄曇り

 この3年後の秋、同コースを仕事の仲間たちと歩く機会を得ました。妻の佐知子も勇気を出して参加して、総勢7名のパーティーでした。
 しかし、この日は2〜3日前の雨台風の影響で沢の水量が多く、おまけに沢登りに慣れていないメンバーもいて、かなり苦戦をしました。ズブ濡れになってしまった人や岩場の途中で足がすくんでしまった人など、一時はどうなることやらと思いました。F5の難所などではザイルを使う羽目にもなりました。学生の頃から何十回と表丹沢の沢を歩いてきた私ですが、ザイルを使ったのは初めてのことです。
 何とか全員無事に烏尾山の山頂に立つことができたときは嬉しくて、ホッとして、みんなで怪気炎をあげました。
 今回の反省点は、水量が多いと難易度が格段に上がるということへの認識の甘さでした。そしてもう一つ。初心者の多い7名のパーティーというのは、このコースに関しては、如何せん人数が多すぎました。
 と云う訳で、今回は沢を登っているときの決定的な写真が少ないです。写真を撮っている余裕は、そのときの私たちにはなかったのです…。



新茅ノ沢・落差12mのF5大棚
同じ滝でも時季によってこんなに水量が違います。直登は初心者にはムリ!
落差12mのF5:直登は初心者にはムリ
H13年12月
白点は滝の飛沫です
H16年10月
白点は滝の飛沫です。
このページのトップへ↑
No.131「檜洞丸」へNo.133「三ツ峠山」へ



ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!