歴史と伝説と奇岩の山
《マイカー利用》 常磐自動車道・高萩 I.C…(米平林道)…二ノ鳥居〜弁天沼〜黒前神社〜竪破山〜太刀割石〜弁天沼〜二ノ鳥居…大子温泉(泊)… 【歩行時間:
1時間45分】
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竪破山は、かつては角枯山(つのがれやま)または黒前山(くろさきやま)などとも呼ばれていたという。紀元前?の黒坂の命(クロサカノミコト)や9世紀初頭の坂上田村麻呂や11世紀の八幡太郎義家(源義家)や17世紀の水戸光圀や…、など、歴史上の錚々たるメンバーのゆかりの地でもあるらしい。この歴史と伝説の、不思議な信仰の山・竪破山は、阿武隈高地の南部を形作る多賀山地の一角、茨城県の北部にひっそりと位置している。
二ノ鳥居の登山口
ひっそりと薬師堂
山頂からの眺望
木々の隙間に竪破山
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車は二ノ鳥居の登山口(標高約450m・トイレあり)まで入ることができる。私達夫婦が歩き始めたのは午前10時半頃。整備された山道の周辺はスギ、ヒノキの人工林がメインだが、落葉広葉樹主体の天然林もけっこう入り交ざる。木々の幹にぶら下がっている名札を、例によってメモってみた。→ ブナ、ハウチワカエデ、イロハモミジ、コシアブラ、クマシデ、クマノミズキ、ミズキ、エゴノキ、コナラ、ホオ、ヤマボウシ、…
コース上の所々に大小の奇岩があり、立札が立っている。これもメモってみた。→ 不動石、手形石、烏帽子石、畳石、舟石、甲(かぶと)石、…
畳石の少し先には昔の小さな炭焼き窯(あかめ焼き窯)もほぼそのままの形で保存されていて、矢張り説明板が立っている。とにかく飽きない。
薬師堂の横手から長い石段を登りきると黒坂の命を祀る黒前神社があり、その少し先が竪破山の山頂だった。ゆっくり歩いたのだけれど1時間足らずで着いてしまい、ハイキングとしては少し物足りない…。
山頂は狭く木々に囲まれているが、螺旋階段の鉄塔に登ると360度の展望が開ける。久慈の山々や八溝山塊、近くの高鈴山、神峰山など多賀山地の山々、遠く北西から西の方向には白装束の那須や日光の山々、南西には薄ぼんやりと筑波山も見えている。人影は少ない。
山頂で暫らく展望を楽しんでから、来た道を少し戻り、今度は太刀割石(たちわれいし)へ向かう。この太刀割石(別名・将軍石)は八幡太郎義家が太刀で割ったとされる直径7mほどの半楕円形の大岩で、一見の価値はある。命名は水戸光圀で、山名の由来にもなっているそうだ。
太刀割石の傍でおにぎりを食べていた時、地面を捜しながらウロウロしている二人のオジサンに出会った。 「コンタクトレンズを落としたのですか?」 と訊ねたら 「イノシシの足跡を捜している!」 との返事。猟銃を持っていなかったのでその訳も訊ねたら、じつは大勢の仲間が同時に山へ入っていて、足跡を捜す係、猟犬を連れてイノシシを追い詰める係、猟銃で仕留める係、などに分かれているとのことだった。「マキ狩り」と云うのだそうだ。急に黙り込んでしまった私達夫婦を相手に、オジサンたちは、その後も、イノシシ猟の仕方についてこと細かく説明してくれた。今年に入ってからも何回も狩りをしているが、獲物にありつくのはナカナカ難しい、とか、今頃のイノシシは旨いよ、とか、言っていた。
私達は思った。確か、日本のイノシシの生息域はここいら辺りが北限だったんじゃなかろうか…(*)、それは貴重な「存在」じゃないかしら、と。でも、「飢えてもいないのに何故猟をするのですか?」 とは、矢張り聞けなかった。
猟師たちが去った後、佐知子の例のキーホルダーのバカチョン温度計を調べたら、気温は丁度摂氏0度だった。風はなかったが何故か悲しくて寒さを感じ、そそくさと下山の途についた。二ノ鳥居へ戻ったのは午後1時頃だった。
車を1時間弱走らせて、この日は大子温泉に宿をとる。明日は茨城県の最高峰八溝山をめざす予定だ。
* イノシシの北限: 最新の情報によると、その生息域の北限は宮城県とされているようだ。これもどんどん北上している。温暖化の影響であるらしい。
なお、狩猟には増え過ぎた動物の個体数を調整する機能もあり、地域の永い歴史の中でそれ自体が“自然保護”になっている場合が多い。近年の日本における山の絶滅危惧種は「猟師」である、とも揶揄されているが…、狩猟については、情緒だけによる短絡的な非難は的を外す場合が多い。私は…、もしかしたら、本項において“的を外して”しまったかもしれない…。
* 風のコンサート: 舟石と甲石と薬師堂のある竪破山の山頂近くの広場で、毎年11月3日の文化の日にコンサートが開かれているらしい。地元の団体が主催する、題して「風のコンサート」。今年で5年目になるらしいが、年々盛況とのことだ。何か面白そうだな。
大子温泉「福寿荘」: 次項・八溝山 を参照してください。
太刀割石(たちわれいし)
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山頂の展望台
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