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天狗岩の一角に立つ
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イワベンケイ
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ハクサンイチゲ
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塩見岳(東峰)の山頂
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ダケカンバ林を下る
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最短コースでも遠い山…
《マイカー利用》 第1日=中央自動車道 松川 I.C-《鳥倉林道》-ゲート前駐車場〜豊口山登山口〜三伏峠〜本谷山2658m〜塩見小屋 第2日=塩見小屋〜天狗岩〜塩見岳(西峰3047m・東峰3052m)〜塩見小屋〜三伏峠〜豊口山登山口〜駐車場…鹿塩温泉(泊) 【歩行時間: 第1日=7時間 第2日=6時間30分】
→ 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ
*** 前項 塩見岳(前編) からの続きです ***
第2日目(7/20): 塩見小屋で同宿の人たちは、夜中の雨音で何回も目が覚めた、と云っていたけれど、私達は熟睡していたので何も知らなかった。起床は午前3時半頃。懐中電燈を点けて小屋の外へ出てみると、雨は上がっていたが薄霧が出ている。まだまだ梅雨の真っ最中。今日も昨日と同じようなぐずついた空模様になることが予想された。小屋の朝食は4時頃から始まっていた。睡眠十分で、今日は体調絶好調だ。
午前4時50分、小屋を出て砂礫の斜面を登り塩見岳へ向かう。ハイマツに交じりハクサンシャクナゲが咲いている。尚も暫らく進むとハイマツ帯が終わり、緑色岩とチャートの岩場になる。
天狗岩は塩見小屋と塩見岳のほぼ中間に位置する岩塊の出っ張りだけれど、昨夕、霧の晴れたときに塩見小屋裏から眺めた天狗岩は、左奥に聳える塩見岳よりも立派な岩峰に見えたものだった。登山道はその天狗岩のすぐ近くの右下(南側)を巻いている。矢張り気になって、ちょっと寄り道して、天狗岩に攀じ登ってみた。ガスで何も見えなかったけれど、子供のようにはしゃいで高い処に立つ、って、矢張り気持のいいものだ。
薄霧の中に形の整ったハクサンイチゲが群生して咲いている。ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、シナノキンバイ、タカネシオガマ、コイワカガミ、ミヤマオダマキ、イワオウギ、ミネズオウ、イワツメクサ…、と山頂まで次々と現れる高山植物の花たちを見て、「流石に花の名山。面目躍如ってところだね」
と佐知子と話した。特にイワベンケイの…受精後間もなくの…赤くなりだした花(子房)をたくさんつけて密生して咲く様が、何とも云えず美しかった。岩場に逞しく生きる姿から「弁慶」の名がついたのだそうだ。
途中1回休んで、ハイマツの岩場を登りきり、塩見岳西峰3047mに着いたのは午前6時20分だった。霧がまだ晴れない。南アルプスのほとんどの主峰たちが見えるという展望にはとうとう恵まれそうにもない、と諦めて、二等三角点の傍らで茫然と立ち尽くす。…とりあえず塩見岳最高点の東峰3052mへ向かう。
しかし、私達は多少はラッキーだった。東峰のピークに立って暫らくした頃から、ほんの一瞬だけれど、風に飛ばされて一部のガスが切れ始めた。雲の上に頭を出した間ノ岳や北岳がわずかに見えた。思わずニンマリ。振り返ると眼前の西峰がくっきりと見えてくる。東西両峰間の距離はせいぜい60〜70メートルくらいだろうか。思ったよりずっと近い距離だった。
以前から気になっていた山のひとつに、塩見岳の南東に位置する蝙蝠岳(こうもりだけ・2865m)がある。主稜線から離れているのであまり登山者の訪れない不遇な山、とのことだが、その展望は一級品だという。当初の計画では、天気がよくて展望に恵まれたら、塩見岳から蝙蝠岳を往復(歩程約4時間)する予定だった。しかし天気がイマイチだし、何といっても私達の足では時間的にちょっときつそうだ。少し迷ったが、涙を飲んで断念した。
下山開始は午前6時50分、咲いている高山植物などを復習しながら、もと来た道をゆっくりと、岩稜帯からシラビソ林〜ダケカンバ林とひたすら下る。本谷山近くの標高約2600メートルの稜線でウグイスの囀りを聞いた。「こんなに高い処にもウグイスはいるのね」 と、しきりに佐知子が感心していた。
三伏山付近のツマトリソウの咲く登山道脇で、コンロでお湯を沸かしてチキンラーメンの昼食を摂る。ザックが益々軽くなってきた。三伏峠小屋を通過して再びシラベの樹林帯を軽快に下る。途中、ホシガラスを間近で発見し、暫らくの間観察した。
豊口山登山口に着いたのは午後2時40分。さらに鳥倉林道を歩き、ゲート前の駐車場に戻ったのは3時25分だった。林道沿いの土手には、登りには気が付かなかったクルマユリが美しく咲いていた。二日間たっぷりと山歩きを楽しんで、足腰が少し痛む。最短コースでも、塩見岳は遠くて深い山だった。
山裾を車で下り、今日の宿・鹿塩温泉へ向かう。深い谷間には既に日が落ちて、ヒグラシ(エゾハルゼミだったかも?)がしきりに鳴いている。宿へ着いた途端、本降りの雨が降り出した。塩見岳山頂での迷いを思い出し、矢張り蝙蝠岳往復は断念してよかったね、とそのとき私達は話し合った。
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塩湯荘
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鹿塩温泉「塩湯荘」: 鳥倉林道ゲート前の駐車場から約30分、中央自動車道松川インターからは約40分の距離。地籍は大鹿村鹿塩(かしお)で、伊那谷の秋葉街道から少し溯った典型的なV字谷の塩川沿いにひっそりと位置する。近くに山塩館や日帰り温泉施設などもある。「化石海水」が中央構造線の亀裂から湧き出している温泉、とのことで、泉質は含硫黄・ナトリウム・塩化物強塩冷鉱泉(弱アルカリ性高張性冷鉱泉 PH8.8 12.2℃)、所謂しょっぱい湯だ。塩が貴重だった頃の当地の歴史を紐解いてみるのも面白い。
私達が泊った「塩湯荘」の部屋の窓からは、塩川の限りなく透明な清流が見下ろせた。川床は薄緑色の緑色岩で、なかなか美しい。宿の本棚から借りて読んだ当地の分厚い専門書によると、ここから秋葉街道へ向かって少し下った郵便局のすぐ脇を中央構造線が走っていて、そこを境に地質が全く違ってくる、とのことだった。専門的なことはなかなか理解できないけれど、少なからず地形や地質のことについて興味を持っている私にとって、「プレートテクトニクス」を間近に感じることができたような気がして、大変興味深かった。
浴槽はタイル貼りで2〜3人浸かるにはちょうどいい広さ。夕食は鯉料理や温泉を利用した岩魚の塩湯干しなど、とても美味しかった。民宿的なたたずまいだが、1泊2食付き一人10,000円は割安な料金だと思った。
「塩湯荘」のHP
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奇峰・天狗岩(左奥)
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塩見岳西峰から東峰を望む
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* 塩見岳最新情報(平成18年7月現在): この後、伊那松島と鳥倉登山口の間を期間限定(夏季)で、路線バスが運行されているようです。[→伊那バス TEL 0265-36-2135]
情報提供は本サイトBBS(掲示板)常連の栗坂さんです。栗坂さん、ありがとうございました。
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