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No.182 富良野岳から十勝岳美瑛岳
平成17年7月8日〜9日 ガスったり雨が降ったり第2日目の朝は晴れました マイカー利用


十勝岳 略図北海道の山旅・のほほん24日間 [3/8]
花と活火山の空中散歩

《マイカー利用》 第1日(7/8)=…十勝岳温泉(前泊)〜富良野岳1912m〜三峰山1866m〜上富良野岳1893m〜上ホロカメットク山1920m〜上ホロカメットク山避難小屋(上ホロ小屋) 第2日(7/9)=上ホロ小屋〜十勝岳2077m〜(鋸岳1824m)〜美瑛岳2052m〜雲ノ平〜望岳台〜白金温泉(泊)…
 【歩行時間: 第1日=6時間50分 第2日=7時間30分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページ(十勝岳)へ


  地元のハイカーたちは連峰最高峰の十勝岳よりもむしろ富良野岳に登るという。 富良野岳のほうが花が多い、というのがその理由らしい。 現地へ行ってみて気がついたのだけれど、標高既に1280mの十勝岳温泉から歩程にして3時間強で山頂に立つことができる、というのも富良野岳人気の理由の一つかもしれない。
  活火山の十勝岳は花が少なくて富良野岳には花が多いという話は、じつは田中澄江さんの「花の百名山」を読んで既に知っていたはずの私達夫婦だった。 それをすっかり忘れていたのは「深田百名山」にこだわりすぎていた私達の怠慢だ。 現地で聞いて思い出した私達は、急遽予定のコースを変更して、まずその富良野岳へ登り、それから十勝岳〜美瑛岳と縦走することにした。 それは十勝連峰を満喫できる、全く素晴らしいコースでもあった。

 7月8日(曇・雨): まず富良野岳へ登る 十勝岳温泉〜富良野岳〜上ホロ小屋  
  一宿の恩にあずかった十勝岳温泉の駐車場に車を置いて、歩き出したのは午前4時50分頃。 上空には霧が立ち込めているけれど、時々その霧がかすれて、富良野岳や上ホロカメットク山などの山頂部が辛うじて見えてくる。
既に森林限界を超えています
安政火口へ向かう

ガスってしまいました
富良野岳山頂

翌朝の撮影です
上ホロ小屋
  まず安政火口(旧噴火口)までの幅広い散策路を辿る。 既に森林限界を超えていて、ネマガリダケなども交じるが、ひねたダケカンバとハイマツの世界だ。 そんな中で、ウラジロナナカマドやイソツツジは白い花を咲かせ、ウコンウツギは淡黄色の長細い花を横向きにつけている。 道端のゴゼンタチバナやサンカヨウが可愛らしい。 徐々に高度を上げると、私達の身体は霧の中に溶け込んでいく。
  雨が降ったり、晴れ間が出たり、霧が出たり、と、山の天気だ。 カッパはなかなか脱ぎづらい。 雪渓を登り、大きくトラバースして稜線へ出る。 エゾノハクサンイチゲ、チングルマ、エゾノツガザクラ、ベニバナミネズオウ、ミヤマアズマギク、メアカンキンバイなどがあちこちに咲いている。 稜線の分岐から富良野岳山頂まで、ザレた急坂を往復する。
  案外と狭い富良野岳山頂は薄霧だった。 石ゴロの中に山頂標識と1等三角点がポツンと立っていて、周囲はハイマツに囲まれている。 南麓に湿原植物の宝庫という原始ヶ原があるとのことだが、今日は霧に閉ざされていてその景色は見下ろすことができない。 時折霧の隙間から南西方向の前富良野岳1625mがぼんやりと見えるだけで、この十勝連峰から大雪山、夕張、日高、東大雪まで見えるという大展望には恵まれなかった。 私達はそそくさと山頂を辞した。
  分岐まで戻り、左右のお花畑を愛でたり、5〜6の雪渓を横切ったりして、三峰山、上富良野岳、上ホロカメットク山とアップダウンを繰り返しながら北東へ進んだ。 上ホロ小屋へ着いたのはお昼の12時45分で、鈍足で休憩だらけの私達にとっては上出来だが、もしかしてコースタイムが少し甘いのかも…。
  広い稜線の鞍部に建つ30名収容の無人小屋上ホロ小屋: 正確には「上ホロカメットク山避難小屋」…、ウーン、なんて長いネーミングなのだ。舌がもつれてしまいそう…)は快適だった。 この日は金曜日で、何組かの団体も入っていたりでけっこう混んでいたけれど、それでも3畳の広さに2名ほどのスペースで、ゆっくりとくつろげた。 毛布が用意してあったのは嬉しかった。 水場は南へ向かって大きな雪渓を150mほども横切った処にある。 太陽の出入りとともに寝起きする山小屋の生活は案外忙しい。 小屋の中でココアを沸かしたりしてのんびりとしていたら、すぐに夕餉の時間になってしまった。
  満腹になって小屋の外へ出てみると、あたり一面は濃い霧に包まれていた。

 7月9日(晴・曇): 展望が開けた 上ホロ小屋〜十勝岳〜美瑛岳〜白金温泉  
  小屋の窓が薄っすらと明るくなった。 慌てて起きて空を覗くと、朝靄の切れ目から星が瞬いている。 小躍りして眠り姫の佐知子をたたき起こした。 寝ぼけマナコで、上ホロ小屋前の広場から少し歩いて稜線に立つと、霧が完全に晴れていた。 十勝岳の右手、雲海の彼方に頭を出している山々が見えた。 東大雪の辺りだろうか。 その上空が美しい朝焼けに染まっている。 後方眼前の上ホロカメットク山が朝日を受けて輝きだした。 山の朝の景色の移り変わりは神秘的な動く絵画だ。 熱いコーヒーを飲んでから、ワクワクしながら急いで支度して、朝飯も食べずに歩き始めたのは午前4時50分頃だった。
十勝岳の右手に美しい朝焼け
朝焼け

左後方は美瑛岳
十勝岳の山頂

十勝岳の北斜面(下山路)から撮影
美瑛岳(左奥)と鋸岳

ここからガスってしまいました
美瑛岳の山頂

下山路にて
雪渓を渡る

霧雨に濡れています
メアカンキンバイ
  徐々に植生が乏しくなり、火山特有の赤茶けたザレの稜線になってくる。 左手眼下に安政火口の荒涼とした景色を眺めながら高度を上げる。 大砲岩を過ぎ、上ホロ小屋から正味1時間強の登りで十勝岳の山頂に立った。
  十勝岳山頂は感動だった。 旭岳やトムラウシなどの大雪の山々、日高、東大雪の峰々、そして知床の山々まで、大展望が開けた。 振り返れば昨日登った富良野岳が朝霧をかき分けて緩やかな三角形を作っている。 行く手には鋸岳の左奥に美瑛岳がどっしりと聳えている。 左手前の前十勝付近では、新火口から盛んに噴煙が上がっている。 それらの景色を眺めながら、小岩の陰でスープを沸かして朝食を摂る。
 「すごい景色だね。十勝岳は生きているね」 と私が言う。
 「その噴火被害で、過去に何回も大勢の人々が死んだのね」 と佐知子が言葉を返した。
  山頂標石には「光顔巍々」(こうげんぎぎ:顔が気高く輝く様)と彫られてあった。
  北海道へ来てから初めてのスッキリとした晴れ間に私達は至福のひとときだったが、その「至福の晴れ間」も長くは続かなかった。 富士山の砂走りのような斜面をフワフワと下り、鋸岳を過ぎ、広大な山稜を北へ進む辺りから霧が出てきてしまった。 メアカンキンバイや咲き始めたイワブクロなどが足元を飾る。
  霧の美瑛岳山頂で暫しの休憩。 ここも狭い石ゴロで、一本の標柱と2等三角点がひっそりと置かれている。 富良野岳も十勝岳も、4日前に登った後方羊蹄山もそうだったが、山頂の“飾り付け”が地味で、それはとてもよいことだと思った。 信仰対象の山頂を除いては、山頂には山頂標識の一本が立っているだけで充分だ。 それ以外の説明板や飾り物はその山の品位を損なうだけだ、と少し辛口の云い方かもしれないけれど、私は思う。
  登山道沿いに咲いているエゾハクサンイチゲ、チングルマ、エゾノツガザクラ、メアカンキンバイ、イワウメ、イワヒゲ、ミネズオウ、マルバシモツケ、エゾコザクラ、シラタマノキ、イワブクロ、イソツツジ、ウコンウツギ、ゴゼンタチバナなどの花を観賞しながら、いくつかの雪渓を渡ったりして、ひたすら下る。 ハイマツの雲ノ平をトラバースして暫らく進むと、広大な泥流跡の緩斜面が広がり、遥か前方に望岳台や白金温泉の建物が見えてくる。 左手には十勝岳避難小屋も見えている。 ツアー客などの人影が急に多くなる。
  十勝連峰の眺めがよい望岳台は、大きな駐車場のある観光地だった。 売店で私はビールを飲み、佐知子はソフトクリームを食べた。 ここから白金温泉へ下る遊歩道は「ウグイス谷コース」と「望岳台(白金)コース」があるが、距離の長いウグイス谷コースは何故か閉鎖されていた。
  ダケカンバ、細身のシラカンバ(マカンバだったかも?)、トドマツなどに囲まれた広く平らな望岳台コースを歩き出すと再び静かになった。 林床はネマガリダケだ。 下山後に白金温泉「銀瑛荘」のご主人さんから聞いた話しだが、この道はかつてのスキー林間コースを改修したものだとのことだった。 歩いていたのは私達だけで、勿体ないような、なだらかで歩きやすい森林浴コースだ。
  望岳台から正味50分の歩程で、白金温泉へ着いたのは午後3時30分頃だった。
  白金温泉「銀瑛荘」のご主人さんはとても親切な方で、「十勝岳温泉に置いてきたマイカーをとりに行きたいのでタクシーを手配したい」 と云ったら、「タクシー代は高いので宿の車で送ってあげましょう」 と答えてくれた。 ご好意に甘えてご主人さんといっしょに約12Kmの距離にある十勝岳温泉へ向かった。 時折エゾリスや痩せたキタキツネが車道を横切る。 この車中、そのご主人さんから当地の色々なのことを教えてもらったのだ。 心付けに金銭を支払おうとしたら受け取ってくれない。 「気持ちですから…」 と云ったら、やっと受け取ってくれた。 ご主人さんの背後に後光がさして見えた。
  マイカーを運転して宿の部屋に戻ったら、佐知子は湯上りの浴衣から湯気を立てていた。

* コースについての補足説明: 当初私達はトムラウシから十勝岳を経て白金温泉に下る大縦走コースを計画していた。 美瑛岳の北東、十勝岳連峰の北端に聳えるオプタテシケ山2013mにも登ってみたい、というのがその主な理由だったが、前項後方羊蹄山にも書いた日程的な問題や、やっぱりクマが怖い、という理由で取り止めにした。 本コースの縦走路から少し足を延ばしてオプタテシケ山を往復する、という手もあったのだが、私達の鈍足では自信が持てなかった。
  下山コースについて、じつは、望岳台の手前から吹上温泉を経由して十勝岳温泉へ戻る周遊コースがある。 吹上温泉から十勝岳温泉までは約90分の車道歩きになるが、総歩行時間については本コースとたいした差はない。 マイカー利用ならこちらのほうが便利だと思う。 私達は歩いている途中でそれに気がついたのだが、なりゆきで真直ぐに下山してしまった。 山ではこういうこと(分かっているのにそうしない)が何故かあるものだ。 あとで考えると不思議に思うが、それが“実践心理”というやつかもしれない…。
  なお、白金温泉と十勝岳温泉の中間に位置する吹上温泉の露天風呂は、宮沢りえがテレビドラマ「北の国から」のワンシーンで入浴してから益々人気が出てきた、とのことだった。 まぁ、どうでもいいことだけれど…。

 7月10日(曇・雨): 休養の移動日 白金温泉…新得  
  ゆっくりと白金温泉の宿を発ち、望岳台などから再び十勝連峰を眺めたりもした。 それから石狩山地の西南部をぐるっと半周して、富良野から狩勝峠を越えて新得町へ向かった。 北海道の自動車道は何処も彼処も閑散としていて、緑あふれる真直ぐな道を気持ちよく走ることができる。 都会の喧騒がウソのようだ。
  明日はマイカーを新得の駅前旅館に預けて、バスでトムラウシ温泉へ行く予定だ。


十勝温泉「カミホロ荘」 十勝岳温泉「カミホロ荘」: 上富良野から車で約30分(町営バスで40分)、上ホロカメットク山の西側中腹、標高1200mに位置する民営の国民宿舎。 アカエゾマツの原生林に囲まれた静かなロケーション。 2000年に再建されたという建物は立派だ。 その建物の正面から富良野岳が大きく見えるとのことだったが、生憎の曇天で私達は見ることができなかった。 内湯・外湯ともオール木造り(総ヒバ仕上げ)で、気分は最高、いい湯だった。 カルシウム・マグネシウム・硫酸塩泉。 微かに茶褐色。 口に含むと酸っぱい味。 食事もとても美味しかった。 朝弁・昼弁の用意など、ハイカーにも配慮が行き届いているのが嬉しかった。 1泊2食付一人(1室2名)13,180円は、納得のいく料金だ。 この少し上にもう一軒の宿、老舗の「湯元凌雲閣」がある。
 外部サイトへリンク 「カミホロ荘」のHP

白金温泉「銀瑛荘」 白金温泉「銀瑛荘」: 美瑛駅から車で約30分(バスで40分)の白金温泉には道路を挟んで数軒の宿があり、閑静な温泉街の風がある。 私達が望岳台から遊歩道を歩いて舗装道路にひょっこり出たとき、その目の前が「銀瑛荘」だった。 親切なご夫婦が管理する家庭的な温泉宿だ。 ほどよい広さの内湯と外湯は何れも石貼りで、微かに薄緑色に濁った湯が常に湯船から溢れ出ている。 現在は素泊りのみで、自炊施設はあるが、私達は近所の食堂へ出かけた。 風呂上りの浴衣で、サンダル履きの散歩もいいものだ。 宿泊料は一人3,650円(2名1室)。 超割安だ。

白金温泉「大雪山白金観光ホテル」 白金温泉「大雪山白金観光ホテル」: 理由を書くと超長くなりそうなので、そのいきさつは割愛するが、十勝岳から下山した5日後(トムラウシ登山の後)に再び白金温泉を訪れた。 このとき利用したのが前々から予約のしてあった「大雪山白金観光ホテル」だった。
  施設の整った、温泉プールやサウナなどもある、所謂観光ホテルだ。 富良野石を配した大浴場や大露天風呂は立派で、褐色に濁る硫酸塩泉は掛け流し。 広い遊技場などもあったりして、子供連れで来るにもいいかもしれない。 ホテルへ着いた途端のドァーボーイの機敏な対応といい、食事の美味しさといい、何の不満もあるはずが無い。 山旅の私達には少しデラックス過ぎたかも…、と思ったけれど、1泊2食付一人13,725円を支払ったとき、割安だな、と感じた。
 外部サイトへリンク 「大雪山白金観光ホテル」のHP

次項 トムラウシ山(前編) へ続く



十勝岳山頂部近景
荒涼とした山稜にピョコンと頭を出す十勝岳
平ヶ岳(十勝岳の北東)から
「サン・ドッグ」現象かも・・・
大砲岩(十勝岳の南西)付近から

「北海道の山旅・のほほん24日間」の写真集大きな写真でご覧ください。

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