No.185 雌阿寒岳(めあかんだけ・1499m)
平成17年7月18日 登り始めは高曇りそれからは雨と風と雷 マイカー利用

阿寒岳 略図
前日に撮影
阿寒湖から雌阿寒岳


北海道の山旅・のほほん24日間 [No.6/8]
激しく燃える「女の山」

《マイカー利用》 雄阿寒岳(前日)…阿寒湖畔温泉-《車25分》-雌阿寒温泉・登山口〜雌阿寒岳〜阿寒富士分岐〜オンネトー〜雌阿寒温泉 【歩行時間: 5時間10分】
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  雄阿寒岳は死火山で大人しい山だけれど、雌阿寒岳は荒々しい活火山でその背丈も雄阿寒岳より128m高い。 それなのに何故「女の山」なのか、阿寒湖の遊覧船から二つの山を見比べてその答えが何となく分かった。 富士山型の雄阿寒岳のほうがスックと立っているのに対して、阿寒富士を従え起伏のある山頂部をもつ雌阿寒岳はなだらかに見えるのだ。 距離が近いので、雄阿寒岳のほうが高く見えるということも影響しているかもしれない。 阿寒湖畔のアイヌコタン(集落)の人々が、雄阿寒岳をピンネシリ(男の山)、雌阿寒岳をマチネシリ(女の山)と呼んでいたことが、不思議ではなくなった。
  しかし実際に両方の山へ登ってみると、雌阿寒岳のほうがはるかに雄々しい山だった。 今も活動を続け、山頂部の新火口から激しく噴煙を上げているゴツゴツとした火山。 その雌阿寒岳を三宅修氏(山岳写真家)は「花で装い激しく燃える女の山」と表現した。 当を得て妙だと思う。

 7月18日(曇・雨): 雷が一番怖い 阿寒湖温泉〜雌阿寒岳登山〜雌阿寒温泉  
  阿寒湖畔温泉の宿から雌阿寒温泉(野中温泉)までは車で約25分だった。 左脇にある登山道入口には登山カード提出用のポストと、その手前に説明板があって、目の前の林がアカエゾマツの純林であることが書かれてある。 よく観察すると、確かにその樹皮がエゾマツより僅かに赤いような気がする。 「すると、今までエゾマツだと思っていた木の中にアカエゾマツが含まれていたかもしれないね」 と謙虚に云ったら、「どっちでもいいんじゃない?」 と妻の佐知子が眠そうに答える。 「それは、そうだけど…」 とブツブツ云いながら、歩き出したのは午前4時35分だった。
まずアカエゾマツ林を登る
アカエゾマツ林

野中温泉コース三合目の手前にて
背の高いハイマツ

メアカンキンバイの傍に咲いていました
メアカンフスマ

風と霧雨です
雌阿寒岳山頂
  雄阿寒岳の登山道と違って、こちらのほうは登山道入口と山頂までの標高差約800mをきっちりと十等分した合目表示のようで、いろいろと見当がつきやすい。
  アカエゾマツ林を抜けて二合目になると背丈より高いハイマツ林が現れる。 こんなに背の高いハイマツを見るのは初めてだ。 三合目辺りからそのハイマツの樹高が普通になり、森林限界を抜け出た。 北海道の山は本当にすごい。 標高900m〜1000mで、もう(本州中部の)高山の様相だ。
  四合目から展望が開け、五合目でフップシ岳1225mの端正な三角形が左手に見えてくる。 後方眼下にはオンネトーの湖面が薄ぼんやりと霞んでいる。 天気予報では、今日は寒冷前線が通過するらしい。 風が強いので帽子を脱いで、日本手拭を広げて頭に被って結びつける。
  八合目辺りから硫黄の臭いがしてきた。 山頂部から噴煙が流れているのだろう。 砂礫地の足元にはこの山で発見された花、メアカンフスマやメアカンキンバイが小群落して咲いている。 メアカンキンバイは今までの北海道の山旅でもよく見かけたが、メアカンフスマを見るのはここが初めてだ。 流石に本家本元だと思った。 鳥海山や月山に分布するチョウカイフスマに酷似するが、その5弁の純白の花がやや小さめで、一層可憐に見える。 ツメクサと似ているのも無理はない。 同じナデシコ科の花であるらしい。 イワブクロ(タルマイソウ)やマルバシモツケなどもきれいに咲いていて、思わず何回も足を止める。
  しかし、花に見惚れている場合ではなかった。 ガスが出てきて風も益々強くなってきた。 山頂手前で、とうとう雨も降ってきて、油断できない状況になってきた。
  火口壁の上を辿って石積みの方位盤がある山頂に立つ。 吹き飛ばされそうな風にチラッと不安がよぎる。 野中温泉へ引き返したほうがいいのか、このまま進んでオンネトーへ下ったほうがいいのか、内心迷った。 しかし即断して、予定通り阿寒富士の北裾を通るオンネトーコースへ歩き出す。 佐知子は黙って私の後についてくる。 ガスが一瞬引くと、右手前方の火口から霧と噴煙がごっちゃになって湧いているのが見える。 前方には阿寒富士が、霧の中に大きく浮かび上がる。 相変わらずメアカンキンバイやメアカンフスマが群落して咲いている。 コマクサも少しだけれど咲いている。
  オンネトーコースの八合目(阿寒富士分岐)から森林限界付近の五合目辺りまでの間はいったん雨が止み、霧も晴れていた。 それは後から考えると私達にとって非常にラッキーであった。
  四合目から三合目へ向かって下っているときだった。 遠くで雷の音が聞こえてきた、と思ったら、あっという間に豪雨になり、辺りは真っ暗になってしまった。 雷の音が段々と近づいてくる。 ヤバイ! と思った私達は大木から離れた登山道の真ん中にしゃがみこんで、じっとしていた。 目の前にゴゼンタチバナが咲いている。
  暫らくすると、つい先ほどすれ違った親子連れの4人が、お父さんを先頭にして慌てて引き返してきた。 ろくな雨具も持たずに山に入ったようだ。 最後尾の母親が恥ずかしそうに小さな声で私達に挨拶をした。 「動かないでじっとしていたほうがいいですよ」 と云おうと思っていたら、走るように遠ざかってしまった。
  物凄い雨と稲妻と落雷音だった。 雨は見る見るうちに小川になって登山道から左下の沢へ向かって流れている。 雷は私達の真上を通過しているらしい。 落雷音が稲妻の閃光とほぼ同時に鳴ったときなどは生きた心地がしなかった。 これが、あの開けた山稜上だったらと考えるとゾッとする。 山ではクマよりもカミナリのほうが、私は怖い。
  それは30〜40分の間だっただろうか。 やがて落雷音は遠のき雨も小降りになってきて、登山道の雨水も引いてきたので、私達は再び歩き出した。 下山口のオンネトー国設野営場の駐車場のワゴン車の中で、衣服を着替えている先ほどの親子連れを見かけたときはほっとした。
  閑散としたオンネトー茶屋の店先のベンチを借りて早めの昼食。 例によってラーメンとモチとソーセージだ。 それからオンネトー湖畔の車道を辿って今日の私達の宿、野中温泉へ向かった。 車道沿いにはあの大きなアキタブキがたくさん生えていて、神秘的な湖の左正面には阿寒富士を従えた雌阿寒岳がぼんやりと見えていた。 まだ小雨だったけれど空は明るくなってきて、私達の気持ちも明るかった。
  雌阿寒岳はいい山だった。 登山道は変化に富み、高山植物や展望にも恵まれていた。 雷雨のオマケがあったのはご愛嬌かもしれないが、実際、「花で装い激しく燃える女の山」 を実感させられた。 やっぱり女は怖い、としみじみと思った。
  野中温泉へ着いたのは午後1時頃。 私達に与えられた部屋は間もなく物干し部屋なった。

野中温泉別館:右側は野中温泉 雌阿寒温泉「野中温泉別館」: 雌阿寒岳の西麓、標高708mに位置する民営の国民宿舎。 建物の壁も床も浴室も全て木造り、なのが嬉しい。 客室はアカエゾマツ、内湯の浴槽は釘を使わない総トドマツ造り、など、適材適所に木材を使い分けているそうだ。 その内湯や石を積んだ露天風呂などは手作りとのことで、ご主人のこだわりが伝わってくる。 硫黄の臭いのする湯(硫黄泉・41.5度)は湯量豊富な源泉掛け流し。 ほとんど透明の、新鮮な源泉がどんどん流れている。 シャンプーも石鹸も置いていないが、元々そんなものは必要のない泉質だ。 飲むと微かに苦味があり甘酸っぱい。 アカエゾマツの自然林を眺めたり小鳥の囀りを聞きながらの野趣あふれる入浴はとてもグー。 食事は地元の山菜料理など、とても美味しかった。 何故か裏庭でポニー(子馬)を飼っていて、風呂上りに、その可愛らしい仕草をずっと眺めていた。 1泊2食付一人6,982円(入浴のみは350円)は安いと思った。
  近く(と云っても徒歩1.4Km)に、「オンネトー湯ノ滝」という国の天然記念物にも指定(H13年)された秘湯があるとのことで、触手を伸ばしたのだが、そのときは何んだか面倒臭くなって、行かずにいてしまった。 少し後悔している。

次項 斜里岳 へ続く



右奥が阿寒富士:三連休でツアー客がいっぱい
オンネトーから雌阿寒岳(前日撮影)
オンネトーコースへ下る
霧が晴れ、阿寒富士が眼前

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