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No.184 雄阿寒岳(おあかんだけ・1371m)
平成17年7月17日 薄晴れ マイカー利用

阿寒岳 略図
北海道の山旅・のほほん24日間 [5/8]
緑やさしい「男の山」

《マイカー利用》 トムラウシ登山…阿寒湖畔温泉-《車5分》-滝口〜太郎湖・次郎湖〜五合目〜雄阿寒岳[往復]…(翌日)雌阿寒岳へ 【歩行時間: 6時間】
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  阿寒湖を挟んで対峙する雄阿寒岳と雌阿寒岳の山頂間の距離は、五万図で測ったらおよそ15Kmだった。 この距離が“東京駅⇔池袋駅”の直線距離のほぼ2倍であることを考えると、両山の位置はかなり離れていることが理解できる。 阿寒湖観光の景色にはなくてはならないこの両山だけれど、やはりそれぞれは全く別の山として考えた方がいいと思った。
  当初私達夫婦は、なんとはなく両阿寒岳をいっしょにして考えていた。 一日で両方の山に登ることができる、と思っていたのだ。 実際、2座を同日に登るラッシュタクティクス(思いっきり身軽になって、スピードを上げて日帰り登山を狙う)のハイカーも、現地で見聞きした範囲では、けっこういるにはいたのだが…。 しかし、地形図をじっと眺めれば眺めるほど、私達の鈍足では無理であることが分かった。
  成層火山で死火山の雄阿寒岳(ピンネシリ・男の山)と活火山の雌阿寒岳(マチネシリ・女の山)。 それぞれに個性のある両方の山を、私達は別々に丁寧に登ることにした。

 7月17日(薄晴): 大きなフキにびっくり 阿寒湖温泉−雄阿寒岳−阿寒湖温泉  
  学生の頃(昭和44年)に一度訪れたことのある阿寒湖畔は、矢張り随分と変わってしまっていた。 ひなびた感じはなくなり、温泉宿のビルや土産物店が立ち並ぶ近代的な街になっていた。
  その阿寒湖畔温泉の目抜きから車で5分(徒歩だと30分)ほど東へ行くと湖畔の南東端に出て、急にひっそりとしてくる。 ここ(滝口)は阿寒湖と阿寒川との接点でもあり、その水門の手前に雄阿寒岳の登山口がある。 阿寒湖や太郎湖などを水源とする阿寒川は、ここからほぼ一直線に南下して、釧路湿原の西側を通って太平洋に注いでいる。
バカでかいフキです(アキタブキの一種)
ラワンブキ?

美しい林でした
トドマツの純林

後方が雄阿寒岳山頂部です
八合目付近にて

ガレ岩の山頂
雄阿寒岳山頂
  私達が滝口の登山口から歩き始めたのは午前4時35分。 狭い駐車場にはまだ先着の1台しか停まっていなかった。 少し進むとバカでかいフキ(蕗)が生い茂る太郎湖の脇を通り抜ける。
  下山後、この背丈2メートル以上はあろうかと思われる大きなフキのことを宿(阿寒湖温泉)の大女将に聞いたら 「それはラワンブキと云って、今あなたが食べているのがそうですよ」 と教えてくれた。 アイヌ伝説に登場する小人コロポックルが住む処でもあるらしい。 ラワン(螺湾)というのは足寄町にある地域名のことで、ラワンブキは当地の(螺湾川に沿って自生する)特産物なのだそうだ。 南西側の(40Km以上は離れていると思われる)隣町の特産物が、たまたま太郎湖畔に群生していた、ということなのかな。 アキタブキの一種であるらしいが、普通のフキと比べるとクセが無く、やわらかくて美味しかった。
  右や左に大小の湖を眺めながら高度を上げる。
  大きなフキにびっくりして目を白黒させたと思ったら、今度はトドマツの純林に目を細めた。 ちょっと色の濃い(本州中部・亜高山帯の)シラビソ林、といった感じで、垂直な樹幹群の縦の線がとてもきれいだ。 このトドマツの美林は二合目辺りまで続いたが、苔生した倒木の様子などが奥秩父の山奥にも似ているようで、なんか、なつかしい感じがした。 登山道沿いにはゴゼンタチバナが群落して咲いている。 時折、遠くのトラツグミが「ピー」と口笛を吹いている。 「ピーヒャラ、コロコロ」と、どんな小鳥なのかは分からないが、美しいさえずりも聞こえている。
  しかし暑い。 身体中から汗が滴り落ちる。 例年になく涼しかった7月上旬の北海道も、いよいよ本格的な夏を迎えているようだ。 エゾマツ、ダケカンバ等の針広混交林帯を、休み休み、北東へ向かってひたすら登る。
  2羽のホシガラスが樹林の間を飛び回っていたので、歩を止めて暫らく観察していたら、もう1羽がやってきて「ギャー」とか「ビー」とか、やかましい声で3羽が乱れ飛び始めた。 「あれぇ? もしかして三角関係かなぁ」 と云った私の声に反応して佐知子が笑っている。
  徐々に樹高が低くなり、ハイマツが現れる。
  一合目の表示はなかったように記憶しているけれど、二合目から九合目までは標柱が立っていて分かりやすい。 しかし、この合目表示がなんか変だった。 登山口から山頂までの標高差は約960mで、普通に計算すると一合あたり96mなのだが、何故か五合目までは平均すると一合あたり160m以上になる。 視界の開ける五合目の標高は既に1194mで、五合目から頂上までは一合あたりの平均標高差が約35mなのだ。 まぁ、分かってしまえばそれまでの話なのだが…。
  荒廃してほとんど廃道化しているオクルシュペコースを右に見送って、ハイマツ、ミヤマハンノキ、ウラジロナナカマド、イソツツジ、ガンコウラン、コケモモなどの高山型の低い樹木たちの、明るく開けた気持ちのよい道を進む。 気象観測所跡がある八合目を過ぎ、山頂部の丘を越え、今は緑に覆われている火口跡を登り返すと2等三角点のある雄阿寒岳の山頂へ着いた。 五合目までが大変だったのに比べて、そこから山頂まではあっという間だった。
  山頂は晴れてはいたが薄霞がかかっていた。 原生林に囲まれた阿寒湖やパンケトウ、ペンケトウなどの湖の景色はよく見えていて、フップシ岳1225mや雌阿寒岳1499mなどの阿寒の山々も辛うじて見えていたけれど、大雪山系や斜里岳から先の道東の山々は霞の中だった。 遠望ができなかったのが残念と云えば残念だったけれど、それでも眺望は充分素晴らしかった。
  山頂の小岩に腰掛けて、阿寒湖温泉の宿で作ってもらったオニギリを食べていると、足元では大きなアリがウロウロし、目の前には羽アリやハエが飛び交っていて、それがちょっとうっとおしくて落ち着かない。 花はマルバシモツケなどが僅かに咲いている。 五合目から山頂部にかけては、ハクサンチドリ、マルバシモツケ、イソツツジ、イワブクロなども咲いていたけれど、この雄阿寒岳は、全体的に高山植物は少ないと感じた。
  来た道を辿り、滝口登山口へ戻ったのは午後1時40分頃。 三連休の割には静かな山だった。

  阿寒湖温泉には昨日から今日にかけて2連泊した私達だった。
  昨日の午後は阿寒湖畔の「自然探勝路」を歩き、間歇的に泥湯が湧き出ている「ボッケ」近くの小さな船着場から雄阿寒岳を眺めたりして悦に入ったものだ。
  今日は思ったよりも早く下山できたので、宿で一風呂浴びてから、阿寒湖観光の遊覧船に乗ってマリモ見物や眺望を楽しんだりして午後を過ごした。 湖上からの風景の主役は矢張り雄阿寒岳で、その金字塔は東の湖面に映えてスックと聳えていた。 そして南西の遠くには雌阿寒岳が薄ぼんやりと見えていた。

阿寒湖温泉「旅館芳友荘」 阿寒湖温泉「旅館芳友荘」: 阿寒湖畔の遊覧船乗り場やバスターミナルにも近い目抜き(温泉街)には大小10軒以上の温泉宿があるが、私達が2泊お世話になった「旅館芳友荘」はその阿寒湖畔温泉街のほぼ中央に位置している。 大型ホテルとは少し趣きの違った、規模も中くらいのリーズナブルな温泉旅館で、釣り客やハンティングのお客も多いようだ。 風呂はタイル貼りの内湯のみで、窓が高くて景色は望めないが、充分な広さで、湯は一晩中湯船からあふれ出ていて気持ちよく入浴できた。 泉質は単純泉(中性低張性高温泉)。
  ご主人は面倒見のいい親切な人で、何かにつけ相談に乗ってくれる。 洗濯機と物干し場を無料で使わせてもらった佐知子はえらく感謝していた。 夕餉も地元の山菜や魚料理などの家庭的なもので、「おかあさん」と呼びたくなるような大女将(かなりのご高齢と拝察したが…)のおさんどんで、当地の昔話を聞いたりして、和やかに夜が過ぎる。 1泊2食付一人7,150円。

次項 雌阿寒岳 へ続く

* ラムサール登録湿地: マリモ生息地の阿寒湖は、この年(2005年)の11月に、新たにラムサ−ル条約に登録されました。
  ラムサール条約というのは「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」として、1971年2月、イランのラムサール(Ramsar)で採択されたものです。[後日追記]
 外部サイトへリンク ラムサール条約と条約湿地 環境省自然環境局の該当ページです。




六〜七合目から阿寒湖を望む
阿寒湖に向かって下山
湖上からの風景の主役は雄阿寒岳
阿寒湖から雄阿寒岳を望む

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