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No.233 黒川鶏冠山1716m
平成19年11月21日 快晴 マイカー利用

黒川鶏冠山・略図
これが桶岩・・・?
鶏冠山の露岩


展望も都水源の森も素晴らしい!

《マイカー利用》 …中央自動車道・勝沼I.C-《車55分》-柳沢峠〜六本木峠〜横手峠〜黒川山(展望台1716m)〜黒川山(三角点1710m)〜鶏冠山1700m〜落合分岐〜横手峠〜柳沢峠-《車10分》-丹波村・のめこい湯(入浴)… [歩行時間: 4時間50分]
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  大菩薩嶺2057mから北への字型に連なる主稜があり、その先端(大菩薩連嶺最北端)に位置するのが黒川鶏冠山(くろかわけいかんざん・1716m)で、東京都との国境も近い山梨県塩山市に属する。 の字型主稜中間の西側にあるのが登山口の柳沢峠で、ここが東京新宿と山梨甲府を結ぶ青梅街道(甲州裏街道)の最高地点1470mでもある。 その柳沢峠を通るバス(公共交通機関)の廃止によりマイカーを使わざるを得ないのは不本意ではあるが、まぁこの程度の距離(東京都大田区の自宅から約3時間)ならば、運転嫌いな私にもなんとか耐えることができる。
  初めての山へ出かけるときには、あまり細かく下調べをしてしまうと現地を訪れたときの発見による感動が薄れてしまうので、安全登山の見地から必要最小限の情報だけを携えてその山へ入るようにしている。 事前に調べておく必要最小限の情報とは、ガイドブックと地形図に目を通しておく程度のことなのだが、今回の黒川鶏冠山登山に関してはそれだけでは済まなかった。
  ガイドブックには“黒川山と鶏冠山を合わせて黒川鶏冠山と呼ばれている”と記述されていたが、なんか分かったようでよく分からない。 それならと、地形図(1/25000)をじっくりと眺めると、柳沢峠の北東に「鶏冠山(黒川山)」と標記されている山があり、近くに基準点が二つ(三角点と標高点)があった。 どっちが黒川山でどれが鶏冠山だ? と、なおさらよく分からなくなった。 その東側の山腹(黒川谷源流)に「甲斐金山遺跡黒川金山」と記されているのも大いに気になる。 分からなくて気になるのだから、これはもう禁断の実を齧ることになるが、調べるしかないと思った。
  で、今回は異例だが、事前に数冊の事典類などで調べた黒川鶏冠山についての薀蓄(うんちく)について、まず書くことにした。 例によって私の薄っぺらな薀蓄なので、興味の無い方は飛ばして読んでいただいて一向に差し支えない。

* 黒川鶏冠山の標高の謎について: 1710.04mの3等三角点は黒川山にあり、その西方約250mの展望台に最高点(標高点)1716mがあることはガイドブックの記述や地形図上からも読み取れる。 今では三角点峰をさすが、黒川山というのは本来はこの一帯の総称であったらしい。
  しかし分からないのは鶏冠山の位置とその標高だ。 何冊か調べた本の中でその標高が明示されていたのは「山名・用語事典
(山と渓谷社)」のただ一冊で、その該当頁には “頂稜(三角点)の北東に鶏冠山1700mがあり…” と記述されていた。 地形図をもう一度よく見ると、確かに三角点から直線距離にして約150mの位置に際立ったピークがあり、等高線も1700m以上(1710mより低い)を示している。 う〜ん、これが鶏冠山に違いない。 そしてその標高も多分1700mで間違いはないと思う、が…。 ⇒ 登ってみてわかったのだが、山梨県が建てた鶏冠山の山頂標識には1716mと記されてあった…。 黒川山の基準点(展望台・最高点)と偶然に同じ標高だったのだろうか。 こうなるともう、何を信じたらいいのか分からない。
  鶏冠山の謎についてもう一つ。 この鶏冠山のピークへ至る(約150mの)登山道を示す破線や山頂にあるはずの鶏冠神社奥宮をあらわす鳥居マークが地形図上に記されていないことも不思議だ。 なにか深い理由があるのか、ただ単に国土地理院の記入漏れミスか、これもやはり謎だ。
→この後(H29年9月現在)、その破線が書き足されているのを確認しました。…やっぱり単なる“国土地理院の記入漏れ”だったようです。 鳥居マークは未だに記されてありませんが…。 [後日追記]
  鶏冠山の記述について、「日本山名事典
(三省堂)」にはこう書かれてある。 “…(鶏冠山は)東の丹波山(たばやま・地名)から見ると、山頂がニワトリの鶏冠のようであるための山名。山頂は桶岩という岩峰からなり、その上に黄金の鎧が安置されていたと伝えられる鶏冠神社(黒川権現)の小祠がある。付近は東京の水源林。・・・” …つまり鶏冠山の標高の謎については何も分からない。 また“桶岩は黒川山展望台の岩峰”と記されているガイドブックもあり、これもじつは判然としない。 何れにしても、この山の云々については異同が多いので、注意が必要だ。
  蛇足になるが、鶏冠山の標高を1607mとしているサイトがいくつかあったが、これは黒川山三角点の北側約450mに位置する小さな無名峰と勘違いしたものと思われる。


* 黒川金山について: “鶏冠山の東側の黒川谷源流には昔、黒川金山があった…” というが、その記述に比較的詳しかったのは「日本の山1000
(山と渓谷社)」だった。 同書によると、“…武田信玄のころから、黒川千軒とうたわれた甲州金の主産地であった。金山の秘密を守るため、丹波川の崖に桟敷を作り、遊女を集めて一夜の宴を張った。宴たけなわ、桟敷ごと川に落として皆殺しにしたという。丹波川の谷には、その跡が「おいらん渕」の名を今に残している。…” とのことで、胸を締めつけられるような気持ちだ。 甲州金の埋蔵金伝説といい、ここはなにやら血生臭い地であったようだ。 「日本山名事典(三省堂)」によると “(黒川金山は)大正初期に廃坑となった。…” とある。


  当初、私達夫婦は黒川鶏冠山の北麓・国道411号線上にある落合(標高約1150m)からの往復ルートを予定していた。 “柳沢峠コースを歩く人がほとんどで、落合コースは静かで行程が短いわりには山の深さが味わえる…” というガイドブックの殺し文句(説明文)に惹かれたからである。
  しかし、国道上の落合集落の辺りまで行ってから問題が起きた。 標識が無いので登山口が何処にあるのかよく分からないのだ。 辺りを何回も行ったり来たりして、ガイドブックに記された道路沿いの“駐車スペース”をようやく探し当てたのだが、ここは工事用の車両で満杯で、おまけに数名の工事人たちが辺りをウロウロしていた。 つまり、少なくとも本日に限ってはまったくここは駐車不可能だった。 近くを探してみたけれど、安心して車を留めて置けるようなスペースは無かった。 という訳で、私達はいつものせりふ(まぁいいか〜)を呟きながら、柳沢峠の閑散とした大駐車場へ引き返し、ここに車を停めた。 霜柱を踏み砕きながら歩き始めたのは午前8時を少し回ったころだった。
ミヤコザサです
まず笹原を往く

右奥に富士山・・・見えるかなあ・・・
展望台から大菩薩嶺

樹林に囲まれて展望はほとんどない
黒川山の三角点

岩やヒノキの根っこなどの急坂
鶏冠山山頂は近い!

鶏冠山山頂にある神社:本宮は一ノ瀬高橋にある
鶏冠神社奥宮

横手峠の北側の山道にて
大きなミズナラ
  木々はほとんどが落葉していて、山は初冬の感がする。 天然のミズナラ林の林床には葉縁が白くなったミヤコザサが一面に生い茂っている。 モミのような常緑針葉樹もけっこう交じるが、はっきりとは同定できない。 妻の佐知子がイヤな顔をしているけれど、無視してルーペを取り出して葉っぱを見てみたら、やっぱりウラジロモミだと分かった。
  間もなく柳沢峠の少し先(奥多摩方面側)の柳沢口からの登山道と合流して道は広くなる。 地形図には出ていない遊歩道的な道がいくつかあるようで、随所にある案内板の略図をしっかりと見ておかないとまごつくことになる。
  この一帯は東京都の水源林(水源かん養保安林)とのことで、いにしえの林学博士である本多静六氏(*)の尽力のたまものであるらしい。 然して、黒川鶏冠山は “東京都水道局が管理する山梨県の山” ということになるのだが、その巡視道も兼ねているのだろう、山道ははっきりしていて広くて歩きやすい。 樹木名を書いた名札が所々に掛けてあり、樹木の同定をしないで済むので、私は急に気持ちが楽になった。
  暫らく進むと辺りにたくさんある例の針葉樹にも名札がぶら下がっていて、それには「ウラジロモミ」と書いてあった。 私の同定は正しかったのだ。 佐知子が珍しく 「へぇ〜、森林インストラクターは伊達じゃないわね」 と褒めてくれた。
  大きく右へ回り込み東へ進みだすと、左手(北側)の樹林の隙間からは唐松尾山や飛竜山などの奥秩父主脈東部の峰々が見え始めた。
  六本木峠の辺りからは植林されたカラマツが目立ってくる。 相変わらずなだらかで広くて歩きやすい道だ。 林道を横切ってからも快調に足が進み、横手峠(指導標は横手山峠)を右折して黒川山へ向かう。 何時の間にか右手(南側)に、泉水谷を隔てた(支沢の)大黒茂谷の方向に、大菩薩嶺が形の良い広角三角形を見せている。 何処が頂上だか分からないようなだらしのない山容が大菩薩嶺の個性だと思っていたのだけれど、ここから眺めるとピラミダルで立派な「山」に見えるので、ちょっと見直してしまった。 別名を「大黒茂ノ頭」というそうだが、納得だ。
  黒川山分岐(肩)ではたと足を止めて、道標をじっと睨んだ。 右側に真直ぐに進む山道は鶏冠山の山頂へ続いているようだ。 左側にVターンとも云うべき2本の山道があって、その右側の道のすぐ上が三角点のあるピークで、左側が展望台(黒川山の最高点)へ続いている道だ。 「フーン、なるほど、なるほど…」 と私は機嫌がよい。 事前に学習して記憶しておいた通りだったのだ。
  “肩”からは5〜6分ほどの歩程で岩峰の展望台へ着いた。 快晴のこの日、抜群の展望を暫し楽しむことになる。 北面は北奥千丈岳、木賊山、笠取山、唐松尾山、飛竜山などの奥秩父の山々で、その右手に雲取山が顔を出している。 眼下には青梅街道の一部も見えている。 南面はなんと云っても大黒茂谷を包み込んだ大菩薩嶺が大きく、その右裾の彼方には富士山がぼんやりと白銀の頭を光らせている。 東面は来た道の方向で樹林に遮られて展望は無いが、西面には奥秩父前衛の山々の彼方に南アルプスの白峰たちが少しの雲をまとってずらっと並んでいた。
  風も出てきてちょっと寒い。 キーホルダーのバカチョン温度計によると摂氏約1度だった。 黒川山の“肩”へ戻る道すがら、3等三角点(点名:黒川)の標石を確認した。 樹林に囲まれてひっそりとした“山頂”だった。
  黒川山の“肩”からいよいよ鶏冠山の登りにかかる。 暫らく進み、復路に予定している落合方向への道を左に分けると道は険しくなる。 岩やヒノキの根っこなどの急坂で、ここが今回のトレイルの中で唯一登山道らしい処だった。
  シャクナゲが出てきたと思っていたら、案外あっけなく鶏冠山の山頂へ着いてしまった。 黒川山の展望台と同じように狭い山頂だったが、ここには鶏冠神社奥宮の小祠が建っている。 “格調”はこちらのほうがずっと高い。 その小祠の奥が一段と高い岩場になっていて、周囲が深く落ち込んでいるのでけっこうなスリルを味わえる。 ここも展望が良かったのは云うまでもない。 黒川山では見えなかった東面も望めて、御前山や三頭山などの奥多摩の山々がよく見えている。 おにぎりを頬張りながら、甘露甘露の大休止だ。
  下山路はいったん分岐まで下って(約10分)、落合集落への道標に従って右へ進む。 山の深さを感じながらトラバースして下り、分岐で横手峠方面へ左折する。 胸高幹周が6m以上はあろうかという大きなミズナラが山道沿いに無造作に生えていたけれど、こういうのってすごいと思う。 ミズナラやブナの巨木が交ざるということは、ここが本物の自然林であることの“証”でもあると思う。
  横手峠からは来た道をひたすらなだらかに進み、柳沢峠へ戻り着いたのは午後2時半ころ。 充分に静かで、展望も深林の幽趣も味わった山行だった。

* 柳沢峠から六本木峠までの主な樹木(観察順) ミズナラ、ウラジロモミ、ブナ、ケヤマハンノキ、ノリウツギ、オオバアサガラ、イタヤカエデ、マユミ、ミズキ、リョウブ、ヤマブドウ、ナツツバキ、ミズメ、ハリギリ、オオヤマザクラ、ヤマツツジ、コメツガ、ダケカンバ、カラマツ…

* 本多静六(ほんだせいろく・1866〜1952) 日本の林学博士、造園家。埼玉県菖蒲町生まれ。「公園の父」といわれる。(Wikipediaより)
  昔、多摩川の下流域では洪水と渇水と水不足が頻発して、多摩川の水を利用していた東京市民にとっては悩みの種だったらしい。 本多静六博士の調査報告書を尊重した当時の東京市長・尾崎行雄は、山梨県の大菩薩峠から東側の山を買収し、植林等して水源の涵養を行うと決定した…。 それから百年以上が経った今日、土砂流出量が少なくなったという。 森林が優秀なダムであると云われる所以である。 そんな昔に、森林の公益的機能を的確に掴んでいた本多静六は「偉人」であった。 「国土づくりの神様」とも称えられるのも納得できる。 また、それを行政に生かした尾崎行雄も、立派で偉い人だったに違いない。


* 交通手段について、この後(H23年5月から)、塩山駅からの大菩薩登山口バス便が柳沢峠及び落合まで運転されるようになり(期間・運行日限定)、公共交通機関を利用しての黒川鶏冠山登山が容易になったようです。(後日追記)

丹波山温泉「のめこい湯」 丹波山温泉「のめこい湯」: 山梨県丹波山(たばやま)村の日帰り温泉施設。青梅街道の柳沢峠から奥多摩方向へ車で約10分ほども下った、丹波川(多摩川)沿いの閑静な谷間に位置する。公共交通機関の利用だと、奥多摩駅から丹波行き西東京バスで約55分。パンフレットによると、「のめっこい」とは当地の方言で「ツルツル・スベスベ」というほめ言葉とのこと。郷土の土産物店などのある大駐車場から長い吊橋(ふれあいの橋)を渡って建物に入る、というのがシャレている。1996年に湧出した温泉を2000年に新築オープンしたのが現在の「のめこい湯」であるらしい。男女が日替わりで交代する「ローマ浴場」と「和風浴場」があり、どちらも露天を含む3種類の大浴槽やサウナなどがある。それぞれの浴槽の設定温度が異なっているのも芸が細かいと思った。レストランや休憩室などの設備も立派だ。
  同パンフレットには “単純硫黄泉(アルカリ性低張性高温泉)で白濁を呈し鉄味・硫黄味がする” と書いてあった。しかし、多少のヌルヌル感はあったが、無色・透明・無味・無臭としか私には感じられなかった。毎分160リットルの湧出量とのことだが、男女別の大浴場であんなに多くの湯を使っているのだから、この程度の湧出量では間に合うはずがないとも思う。多分かなりの量を薄めたり循環したりしているんだろうと推察した。薄めるということや加温しているということなどは特に悪いことではないと思う。ただし、その旨はパンフレットや公式サイトには明記すべきだと思う。ロケーションや風呂そのものがとても良かったので尚更、一言云ってみたい。
  同温泉の(丹波村の)公式サイトからジャンプして、入浴料の「割引券」をプリントして受付に提示したら本当に100円安くなって500円(3時間まで)だった。ここではじめて、事前に調べた“成果”がでた。
 → この後、HPからの割引券は廃止されたようです…。[後日追記]
  丹波山温泉「のめこい湯」のHP

黒川鶏冠山の写真集 大きな写真でご覧ください。



 二つの山頂に二つの憩い

前方は奥秩父の主稜
黒川山の最高点(展望台)にて
枯枝の隙間から御前山と三頭山が見えています。
鶏冠山の山頂にて
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