「私達の山旅日記」ホームへ

No.234 滝子山(たきごやま・1610m)
平成19年12月12日 晴れ

滝子山・略図
朝の中央線(初狩駅付近)の車窓から撮影
滝子山

森も沢も美しい!
スミ沢を登る

小さな鳥居と祠
白縫神社(鎮西ヶ池)

西側を除きほぼ300度の大展望!
滝子山の山頂

ブナも少し交じります
ミズナラ林を下る


いつも間近で眺めていた憧れの山…

JR中央本線笹子駅〜稲村神社〜大鹿峠分岐(道証地蔵)〜三丈の滝〜大谷ヶ丸分岐〜鎮西ヶ池〜滝子山〜檜平〜藤沢集落〜中央本線初狩駅 【歩行時間: 6時間30分】
 → 国土地理院・地図閲覧サービスの該当ページへ


  中央本線が大月駅の西隣りの初狩駅を通過する辺りで、その北側に立派な山容を見せているのが滝子山だ。 多くの山好きな方が密かに「私の山(マイン・ベルク)」として慈しんでいる山でもあるらしい。 車窓から見るにつけ、よい噂を耳にするにつけ、この山への憧れは募るばかりだった。
  東京から近くて、交通の便もいいのに何故今まで滝子山へ行かなかったの? と誹りを受けそうだが、鈍足で根性のない私達夫婦にとっては、日帰りのコースタイムが6時間を越える山登りは、とってもきついのだ。 “なるべく楽をして山歩きを楽しむ” という他人にはあまり自慢のできない私達のポリシーがある。 しかし、その偏固なポリシーを一蹴する期待感の確かさがこの滝子山にはあった。 前回の大菩薩連嶺最北端の黒川鶏冠山がとてもよかったので、今回はその最南端の滝子山にがんばって登ってみましょう、といった妻の前向きな意見も今回の山行決定の後押しになった。
  初冬の午前8時半、私達はウキウキして、標高約600mの笹子駅から歩き始めた。

  アスファルトを1時間近く歩き、テクニカルコースとして人気の高い寂ショウ尾根(滝子山の南稜)コースを右に分け、尚も砂利道の林道をだらだらと登る。 妻の意見を全面的に取り入れて一般登山道のスミ沢コースを登路に選んだのだ。 大月市の指導標がしっかりしているので、先ずは安心する。 水量の多いスミ沢の流れは限りなく清らかだ。
  道証(みちあかし)地蔵から山道へ入り、沢に沿ってまずスギ・ヒノキの植林地帯を進む。 やがて間もなくコナラ、クヌギ、シデ類、カエデ類、ミズナラ、ヤマザクラ、ケヤマハンノキ、ケヤキ、アオハダなどの天然林へ移行していく。 「三丈の滝」や「もちヶ滝」を間近に眺めながら、歩みは快調だ。 滝が多いから滝子山と呼ばれているそうだ。 急傾斜の足場の悪い箇所にはトラロープが張ってある。
  何時の間にか里山(雑木林)の主役でもあるコナラやクヌギなどは姿を消していた。 カラマツ林も交じるけれど、その殆どはミズナラ林だった。 大量の落ち葉を踏みしめながらその他の樹種を推察する。 イタヤカエデ、ハウチワカエデなどのカエデ類やハリギリは葉の形に特徴があるので見てすぐにそれと分かる。 顔を上げるとウラジロモミなどの針葉樹も疎らに交じっているのが分かる。 しかし今回の私にはじっくりと樹木の観察をしている余裕は全く無い。 息が切れ、零度近い気温だけれど汗が額から滴り落ちてくる。
  道がなだらかになり、左手(北)の樹林の隙間から谷を隔てて大谷ヶ丸の可愛らしい三角形の山頂部が見え始めた。 後ろの彼方には白い峰が見え隠れしているが、あれは八ヶ岳だ! 地形が複雑でしかも見通しが良く、なんかわくわくするロケーションだ。
  ブナが目立ってきたなと思っていたら、小さな鳥居と祠(白縫神社)が現れてそこが鎮西ヶ池だった。 保元の乱に破れた鎮西八郎為朝と妻の白縫姫らが隠れ住んだという伝説の処らしい。 直径2メートルあるかないかぐらいの意外と小さな池だった。 ここからはひと登りで滝子山の山頂だ。
  狭くて細長い山頂からは近くの大菩薩連嶺や中央沿線の山々は勿論のこと、奥多摩や奥秩父などの山々、八ヶ岳、南アルプス、道志や御坂の山々、富士山などが展望できた。 アンパンを齧りながら楽しい山座同定のひととき。 やがて先客の中高年グループが去ると辺りは静寂に包まれた。 寒さも忘れて山頂になんと約1時間、私達は至福の時間を過ごした。
  しかし、時間が気になりだした。 鞍部へ戻って軽く登り返すとそこが山頂より約20m低い2等三角点峰1590mだが、樹木に囲まれて展望もあまりないのでさっさと通り過ぎる。 私達にしては珍しく快足だ。
  この下山路(初狩コース)の延々と続く明るい林相も素晴らしいものだった。 ミズナラ、ブナ、ツガ、トウヒ(イラモミ?・バラモミ?)などにリョウブ、アブラチャン、カエデ類、ツツジ類、アカマツなどが交じる自然林だ。 檜平付近のミズナラの純林などはもうため息が出るほど美しかった。
  尾根を外れて植林地帯のこれも清らかな藤沢川の枝沢へ下る。 薄暗くなってきて足元が見えにくい箇所が出てきたりして、私達は内心ヒヤヒヤだった。 殆ど休憩を取らずに歩き続け、何とか日があるうちに林道へ出て藤沢の集落へ入った。 子供たちが笑顔で挨拶をしてくれる。 すれ違う大人達も会釈をしてくれる。 故郷へ帰ってきたような、とても気分の良い山里だ。
  変化のある素晴らしいコースに大満足して、閑散とした初狩の駅に着いたのは午後4時半頃だった。 振り返ると、三つの頭の大きな滝子山が、夜の帳に包まれようとしていた。

* 滝子山の標高について: 滝子山は麓から眺めると山頂が3つ見えることから“三つ丸・三つ森”などとも呼ばれているという。 そのうちの一番東寄りのピークに1590mの2等三角点があるが、真ん中のピークが最も高くて山梨県の山頂標識には「標高1620m」と書いてあった。 しかし三省堂の「日本山名事典」によると1610mで、山と渓谷社の「日本の山1000」及び「山名・用語辞典」では1615mとなっている。 国土地理院の2万5千分1地形図の等高線を読むと、滝子山の最高点(中央峰)は1610m以上で1620mより低いことになっているようだが…。 この山の標高もナゾが多そうだ。



楽しい山座同定のひととき
滝子山の山頂から北面を望む(大谷ヶ丸〜ハマイバ丸〜黒岳〜雁ヶ腹摺山)

ブナ交じりの素晴らしい森だった
ミズナラの純林を下る

このページのトップへ↑
No.233「黒川鶏冠山」へNo.235「大野山」へ



ホームへ
ホームへ