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No.260-1 笠取山1953mから唐松尾山2109m
平成21年6月1日(〜2日) 曇り時々雨 マイカー利用

笠取・唐松尾・和名倉山 略図

和名倉山への稜線上から唐松尾山を望む
唐松尾山


奥秩父の深山 Part1

《マイカー利用》 第1日=…中央自動車道・勝沼I.C-《車80分》-二ノ瀬〜三ノ瀬〜中島川橋〜馬止〜水干〜笠取山1953m〜黒槐山2024m(巻き道)〜唐松尾山2109m〜山ノ神土〜牛王院平〜将監峠〜将監小屋 第2日=将監小屋〜東仙波〜和名倉山2036m〜山ノ神土〜三ノ瀬…大菩薩の湯(入浴)…
 【歩行時間: 第1日=7時間 第2日=8時間50分
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 奥秩父の主稜線で私達夫婦がまだ歩いたことがない区間がけっこう残っている。その中の雁坂峠と飛竜山に挟まれた区間に位置する3座がずっと気になっていた。多摩川の最初の一滴が流れる笠取山(かさとりやま・1953m)と多摩川源流域最高峰の唐松尾山(からまつおやま・2109m)と、そして主稜線から北へ大きく外れて聳える怪峰・和名倉山(わなくらやま・2036m・甲州側では白石山)である。

 その3座をつなげて2日間で歩く計画を妻の佐知子とじっくりと練ってみた。乗り合いバスが走っていない地域なので、交通手段にマイカーを使うことは仕方のないことだ。仮に塩山駅や奥多摩駅などからのタクシー利用だとべらぼうな交通費になってしまう。マイカー登山の致命傷は駐車場に必ず戻らなくてはならないということだ…。つまり私達の結論は、それら3山の南麓(一ノ瀬高原の辺り)をベースにした周回コースだった。山中1泊になるが、そのちょうどいい位置に将監(しょうげん)小屋があるのはとても心強かった。

 第1日目(6月1日・曇雨) 稜線はシャクナゲの花盛り!.
 甲州側(中央自動車道・勝沼I.C)から国道411号線(青梅街道・大菩薩ライン)を北へ進み、柳沢峠を越え、左折して林道へ入る。木々の新緑が出揃ったこの季節、青色のマイカーも自分達の肌色の身体も緑色に染まってしまうのではないか、と思えるほどの清々しい初夏の山里だ。
 犬切峠を越え、一ノ瀬高原をくねくねと走り、もうずいぶんと山奥だなぁ…と思ったころ、二ノ瀬の民宿「しゃくなげ荘」の広い駐車場にぽつんと車を停める。駐車料金のこともあり、母屋の玄関口の呼び鈴を鳴らしてみたがし〜んとしていた。玄関前の足元にはここの標高が1244mであることが書かれてある。2日間駐車させていただく旨を備え付けの連絡ノートに書き込んでから、歩き始めたのは午前6時45分頃だった。私達の足音を聞いて沿道の飼い犬がしきりに吠えている。高度を上げるにしたがって一之瀬・二之瀬・三之瀬と地名を微妙に変化させるこの過疎の地は…、悲しい“歴史”のある山村であるらしい。
トウゴクミツバツツジが咲く黒エンジュ尾根
ミツバツツジ咲く山道

多摩川の最初の一滴が流れていた
水干にて

雨の雫がステキなアクセント
アズマシャクナゲ

この左右にも満開のシャクナゲ!
笠取山の山頂

唐松尾山へ向かう尾根道
整備された縦走路

ガスってしまった
唐松尾山の山頂

ササ原の「山ノ神土」
山ノ神土を通過

草原の片隅に鎮座する将監小屋
将監小屋へ到着

 少し進んで、三ノ瀬の登山口(牛王院下)へ続く道を右へ見送る。その道から、明日の夕方には下山する予定なのだ。静かな山里のアスファルトをさらに約25分間だらだらと登り、道標に従って中島川橋の登山口(中島川口)から山道へ入る。ヒガラやヤマガラやウグイスたちが盛んに歌っている。マタタビの白くなった葉っぱが緑の風景にアクセントをつけている。
 暫くはヒノキやカラマツの植林地帯を歩く。地籍は山梨県だが、この辺り一帯の山域は東京都の水源涵養林になっている。その管理のためもあって、この山域の山道(巡視道)は驚くほど整備されている。東京都水道局の立派な説明板があって、この森を複層林へ誘導していることが書かれてあった。

* 複層林: 林冠が上下段違いに2つ以上形成されている森林のこと(EICネット・環境用語)。樹齢・樹高の異なる樹木で構成される人工林のこと(excit.辞書)。スギやヒノキなどの単一樹種による一斉林(いっせいりん・あるいは単層林)と対をなす単語。
 中島川橋の登山口から少し進んだ処に「崩れにくい森づくり」と題した東京都水道局の説明版が立っていました。その内容を要約すると次の通りです。→『・・・昭和57年(1982年)の台風10号による山崩れの原因が一斉伐採(皆伐)したことによることを教訓に、一部の木を残して伐採し、その間に苗木を植える方法を採用した。・・・生きた木の根が土砂の移動を抑え、台風などでも崩れにくくなると考えた。・・・』


 馬止の分岐を直進して、まっすぐ笠取山へ向かう。人工林に交じりミズナラ、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、ヤマザクラ、ハリギリ、リョウブ、ナナカマド、ダケカンバなどの自然林も頻繁に顔を出す。林床の主はササ(スズタケ?)で、高度が上がってくるとミヤコザサが優先する。常緑の木ではモミやツガなどの針葉樹が、数は少ないが、自己主張している。毒があるのでシカが食べない低木のアセビもあちこちで赤い新葉をだしている。オオカメノキが大きな丸い葉の上に白い装飾花を咲かせ、トウゴクミツバツツジも紅紫色にまだ咲いている。この時季の森は本当に美しい。
 黒槐(くろえんじゅ)尾根を辿り、山腹に並行する巡視道を右へ分け、枝沢をトラバースしてからシラベ尾根をさらに登る。ダケカンバやコメツガやミネカエデなどの亜高山型の樹種が目立ち始め、いよいよ奥秩父の深山らしくなってきた。
 笠取山の山頂直下に水干(みずひ)と呼ばれる水神社への分岐(水干尾根分岐)があり、私達は迷うことなく往復約10分の寄り道をして、多摩川の源頭を見物した。水干は斜面上の少し開けた処にあり、木製のテーブルとベンチなどが置かれた休憩場にもなっていた。ガレ岩の隙間から、実際、最初の一滴がポツリポツリと流れ落ちている。その上部に水神社の祠があるとのことだったが、ちょっと見では確認できなかった。

この水干にも東京都水道局の説明板が設置されていて、『…水干とは沢の行止りの意味…。この流れは水干沢→一ノ瀬川→丹波川となり奥多摩湖に流れ込み、そこからは多摩川と名を変え、138キロメートルの長い旅を経て東京湾に流れ込んでいる…』 と書かれてありました。

 足元の岩が白っぽく見えたのでよく見てみたら、どうやら花崗岩のようなものであるらしい。そんな岩っぽい稜線を急登していると、ついにシャクナゲ(アズマシャクナゲ)が現れ始めた。今が花の旬のようで、満開の花が次から次へと群落して咲いている。今年は当たり年のようだ。 「ラッキー♪」 と思わず私達は叫んでしまった。シャクナゲの花は数年(3年くらい?)に一度しかよく咲かないのだ。
 こじんまりとした笠取山の山頂にも、ダケカンバやコメツガやトウヒやリョウブに交じって満開のシャクナゲが咲いていた。あいにくの曇り空ですっきりとはしないが、南・西方面が開けていて大菩薩連嶺の一角が見えている。その昔、甲州と武州の見廻り役人が笠をとって挨拶した処、というのがその山名の由来であるらしいが、はたしてこんなに狭い処で本当に挨拶を交わしたのだろうか。などと愚にもつかないことを話し合ったりしながら、私達は山頂標識の傍でまったりと時を過ごした。
 しかし…、天気予報は外れたようで、徐々に厚い雲が天空を覆ってきている。何気に、遠くでカミナリが鳴っている…。恐々と空を見渡していたら、すぐ近くに花の終わりかけたヤマザクラの木があることに気がついた。その芽吹きの赤っぽい新葉が灰色の空に映えて、日本画のような美しさだった。
 笠取山から唐松尾山へ向かう稜線上のシャクナゲも見事だった。その花色は、蕾の赤色から咲き始めのピンク、そして落花直前の白色まで多彩なバリエーションがあって見飽きない。ため息をつきながらの雲上のプロムナードを楽しみ、黒槐ノ頭の辺りで、苔生した倒木にレジャーシートを被せ、そこに座ってまた大休止。コッフェルに野菜とソーセージと玉子をたっぷりと入れてラーメンを茹でる。それをふーふーしながら食べ終わると、とうとう雨が降り出した。食事中に降らなくてよかったね、などと云いながら、慌てて雨ガッパを着た。幸いにも明るい雨空で、落雷の心配はなさそうだ。
 天然のカラマツやコメツガの深い森を通る。ガスっているからなおさら幻想的な風景だ。鞍部からは歩きやすい登りが続き、その終点が多摩川水源の最高峰・唐松尾山2109mの山頂だった。樹林に囲まれた地味な山頂で、三等三角点の標石と樹木に巻きつけた小さな山頂標識が景色に調和している。ここから北尾根を少し進んだ処に展望のよい岩場があるらしいが、この雨空では行く気になれない。こちらのシャクナゲは殆ど花芽をつけていないようだし、早々に退却して主尾根(埼玉県と山梨県の県境尾根)を更に東進する。
 唐松尾山を25分ほど下った処に微かな分岐があった。見過ごしてしまいそうな手作りの小さな道標には“西御殿岩・15分”と記されてあった。この西御殿岩も展望のよい処らしいが、今回はパスして先を急ぐ。
 しかし嬉しいことに、この頃から雨は上がって再び明るくなってきた。日の射し込むカラマツ林やなだらかなササ原の山ノ神土(かんど)や牛王院平(ごおういんだいら)を通過する。そして将監峠(しょうげんとうげ)からゴルフ場のフェアウェイのような草原(防火帯)をドスンと下ると、そこが将監小屋だった。午後3時45分、ほぼ予定通りだ。

 この日(日曜日)の将監小屋の宿泊客は私達を含めて4組8名、何れも中高年のカップルで、明日のコース予定も同じ和名倉山、というのがなんか面白いと思った。2食付きが私達の他にもう1組いて、その方たちと食事時などに色々と情報交換をし合った。自炊の2組の様子などを鑑みても、この小屋には山慣れたハイカーが多いと感じた。夕食は定番のカレーライス。小屋番さんは無口で控え目な人で、食事時も含めてめったに顔を見せない。軽自動車が裏庭に停めてあったので「車が入れるんですね」と声を掛けたら「あぁ…、うーん…」と答えてくれたが、小屋蕃さんとの会話はこれっきりだった。まぁ、山ではこれくらいがちょうどいい、と私は思っているのだが…。
 寝不足と疲れで早々に床に入り、まだ薄明るい6時半頃には、佐知子も私もぐっすりだった。

* 将監小屋: 将鑑峠下の南斜面上の小平地、標高約1800mに位置する、収容人員約70名の立派な山小屋。シーズン中は管理人が在住する。小屋前が水場になっていて、常に冷たい水が滾々と流れ出ているのが何よりだ。その前方一帯の草原の斜面がテント場になっていて、そこからは南側の大菩薩連嶺方面や富士山が展望できる。

  奥秩父のシャクナゲ・写真集 大きい写真でご覧ください。

次項 和名倉山(奥秩父の深山Part2) へ続く


笠取山から唐松尾山への稜線上で
私達が見たスゴいもの!
唐松尾山の山稜にて
幽玄の原生林
笠取山の山稜にて
満開のアズマシャクナゲ

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