「私達の山旅日記」ホームへ

No.281 石裂山(おざくさん・879m)
平成22年11月13日 黄砂 マイカー利用

石裂山・略図
西剣ノ峰(展望台)より撮影
石裂山の山頂部

株立ち状の2株が寄り添うように立っている
千本桂

双葉葵(ウマノスズクサ科):別名カモアオイ(賀茂葵)
フタバアオイ

加蘇山神社の奥ノ宮
奥ノ宮の洞窟

木祠と石鳥居があった
月山の山頂

紅葉がすばらしい!
下山開始!


おとなのフィールドアスレチック

《マイカー利用》 東北自動車道・鹿沼IC-《車40分》-加蘇山神社下社〜千本桂〜中ノ宮跡〜行者返しの岩場〜石裂岩〜奥ノ宮〜ひげそり岩〜東剣ノ峰〜西剣ノ峰830m(展望台)〜御沢峠〜石裂山879m〜月山890m〜加蘇山神社-《車30分》-出会いの森福祉センター(入浴)-《車20分》-鹿沼IC 【歩行時間: 3時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  山名がなかなか読めない栃木県・前日光の石裂山は、いわゆる「おざく信仰(*)」の山として古くから知られていたという。 現在では信者の数は少なくなっているとのことだが、そのかわり、中高年の“中級ハイカー”に人気のテクニカルコースとして、この山の登山道は人の絶えることがないらしい。 面白そうな山で、東京からも近いので、前々から気になっていた山でもある。
  “春の使者”といわれる黄砂が11月に観測されるのは非常に珍しいとのことだが、その黄砂が日本各地の天空を覆った週末に、私達夫婦は石裂山に登った。

  東北自動車道の事故渋滞が原因で、私達が石裂山の登山口(加蘇山神社の駐車場)に着いたのはお昼も近い11時頃になってしまった。 しかし私達は慌てない。 今日のコースはテクニカルだが距離は短い。 何時もの通りゆっくりと支度して、まず石段を上って加蘇山神社に参拝する。 山奥の割には立派な神社で、樹齢500年とか800年とかのご神木のスギたちも、でっかくて迫力満点だ。 クサリやハシゴが連続するという石裂山登山の安全を祈願して、特に佐知子の参拝はいつになく丁寧だ。
  沢に沿ったなだらかな道を暫く進む。 周囲はずっとスギの人工林だ。 東屋(竜ヶ滝の休憩所)を過ぎて、予定している月山からの下山道を右に分け、少し進むと不思議な樹形(株立状)のカツラが見えてくる。 「千本桂」と呼ばれる、これも加蘇山神社のご神木で、栃木県の天然記念物でもあるらしい。 2株が寄り添うように立っているので「縁結びの桂」とも呼ばれているとか。 まるでスペインのバルセロナに建設中の教会、アントニ・ガウディの代表作の1つ、サグラダ・ファミリアのようだ。 私は写真でしか見たことはないけれど…。 (^^ゞ
  登山道沿いにお目当てのフタバアオイを、ほんの少しだけれど、見つけた。 田中澄江さんの「新・花の百名山」で名を馳せた石裂山のフタバアオイだ。 徳川家の家紋(三つ葉葵)はこの葉を3枚組み合わせてデザインされたものと云われている。 なんかかっこいいので、写真を何枚も撮った。 (盗掘で)もう無いんじゃないかと思っていたけれど出会えてよかった、と本当にそう思った。
  中ノ宮跡の東屋を過ぎると、いよいよクサリ場の連続だ。 しかし、クサリもハシゴもアルミ合金製の立派なもので、ホールドやスタンスはしっかりしていて、おまけに道標も完ぺきだ。 ハシゴには手すりまでついている。 私が慎重に先頭を歩いたが、岩場の苦手な佐知子も難なくついてくる。 奥ノ宮の洞窟も見学して、東剣ノ峰から西剣ノ峰と快調に進み、冒険と紅葉と展望を楽しむ。
  安全な箇所で時々立ち止まって辺りを見まわしてみる。 いつの間にかスギ林からヒノキ林になっていて、それにイヌブナ、コハウチワカエデ、ホオノキ、ケヤマハンノキ、ミズナラ、リョウブ、ヤシオツツジ、アカマツ(少し)、モミ、ツガなどが交ざる。 モミジ類やツツジ類の紅葉が美しく、タカノツメ(ウコギ科)や林床のコアジサイの黄葉も鮮やかだ。 ひときわ目立って白っぽく色づいている5出複葉の樹は、あれはコシアブラだ。 この半透明に黄葉した色合いが油を漉した紙の色に似ているから、というのがその名の由来であるらしい。 (コシアブラの名の由来については、昔、この木の樹脂液をこして塗料に使ったから、という説もあるようだ。)
  ヒノキなどの根っこをホールドにしたりして、御沢峠から登り返すと、案外あっけなく石裂山の狭い山頂に到着した。 山頂標識と3等三角点の周囲には先着の中高年パーティーがいて、ちょうど集合写真を撮っているところだった。 男性は2〜3名で、あとの十数名は女性だ。 カメラマンを引き受けた私が 「ほとんど女性のパーティーですね。すごいなぁ」 と挨拶したら、みなさんが満面の笑みで応えてくれた。
  間もなく大パーティーは去り、山頂はとても静かになった。 北側の日光連山方面が開けている。 黄砂の影響か薄黄色にモヤっている空をじっと眺めていた佐知子が、辛うじて輪郭の確認ができた男体山の山影を指さして狂喜している。 私は先ほどから周囲の木々の観察に余念がない。
  山頂の周辺には五葉のツツジ(ヤシオツツジ)が多く、初夏のその花期はさぞかしきれいだろうと思う。 リョウブ、ネジキ、コシアブラ、クリ、ミズナラ、ブナ、などがそれぞれの秋の色を競っている。 山頂標識を挟んでサクラに似た木が大小2株あったけれど、よく観察してみたらミズメ(カバノキ科・別名アズサ)だった。 樹皮に爪を立てて鼻にあてると強烈なサロメチールの匂いがする。 珍しい樹木(じつはけっこう各地の山に自生している)を同定したことで佐知子が感心している。 私はほんとうは森林インストラクターなんだよ、と言ってやりたい。
  石裂山から北の稜線を10分間ほど登り返すと月山(がっさん・つきやま)の山頂へ着いた。 この月山は石裂山より21m背が高い。 三角点はないが石鳥居と木祠(月山神社)があったりして、山頂としては、良いか悪いかは別にして、月山のほうが立派だ。 ここでも山影の展望を楽しんだりサーモスの熱いコーヒーを飲んだりして中休止した。 一帯には、矢張り五葉のツツジが多かった。
  月山からの下山道にはクサリ場は2〜3ヶ所しかないので、上りよりは大分楽だ。 しかしそのクサリ場で、例の女性パーティーが渋滞していた。 遠巻きにして見ていたが、クサリを下るのが苦手なメンバーが何名かいるようだ。 へっぴり腰で、見ているほうが怖くなる。 思えば、数年前までの佐知子もあんな風だったな…。
  紅葉や黄葉のグラデーションを楽しみながら、休み休みゆっくりと下った。 この石裂山回遊コースは、ちょっとスリルのある大人のためのフィールドアスレチック、といった感じだ。 “安全な冒険”がしたくなったらまた来てみたい、と思えるような小粒の山椒だったね、と私達は話し合った。
  加蘇山神社下社の駐車場に戻りついたのは午後4時10分だった。 日の短いこの季節。 帰路の県道240号線には夜の帳が降りようとしていた。

* 石裂山を開山したのは山岳宗教に一生を捧げた勝道上人とされている。 勝道上人は奈良末期から平安初期にかけて活躍した僧で、日光山(=二荒山=男体山)を開山したことで有名だ。 田中澄江さん(1908-2000)の著書「新・花の百名山」の石裂山の項には “(日光開山の勝道上人は)神仏混淆の修験者として、日光に入る前に、まず石裂山、つづいて古峰ヶ原にと進んでいった…” と書かれてある。

石裂山登山の写真集 大きな写真でご覧下さい

出会いの森福祉センター 出会いの森福祉センター: 石裂山登山の帰路に位置しているから、ということと、一般の客も受け付けている、ということで選んだのが鹿沼市の日帰り温泉入浴施設(高齢者福祉センター)だった。 石裂山登山口(加蘇山神社)からは車で約30分、鹿沼ICまでは約20分。 館内に入るとお年寄りだらけ。 一瞬たじろいだが、冷静になって考えると、まぁ私達もほとんど違和感のない状況ではある。 同じくらいの歳、と感じたらその人は自分よりもずっと年下であるらしいから…。
  明るい浴室に石貼りの浴槽。 大浴場の泉質は炭酸水素塩・塩化物温泉(含食塩重曹泉)。 やや茶褐色でかなりのヌルヌル感。 循環、加温。 真湯の気泡風呂もある。 大広間や軽食コーナー、多目的ホール、自由に使えるマッサージ機等、設備は多彩。 市外者の入館料が600円、というのには若干の割高感を感じた。
  「出会いの森福祉センター」のHP



こんな感じのハシゴやクサリが続きます
長いハシゴが続く
手前に3等三角点の標石
石裂山の山頂でホッと一息
このページのトップへ↑
No.280「雁ヶ腹摺山」へNo.282「菜畑山」へ



ホームへ
ホームへ
ゆっくりと歩きましょう!