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No.282 菜畑山(なばたけうら・1283m)
平成22年(2010年)12月14日 前線は通過したのだが・・・ マイカー利用

菜畑山・略図
養豚場の先で豚肉を食べてしまった

《マイカー利用》 中央自動車道・相模湖I.C-《車60分》-菜畑山登山口(林道終点)〜菜畑山[往復]…藤野やまなみ温泉(入浴)…中央自動車道相模湖I.C… 【歩行時間: 70分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  東京の自宅で朝食を摂っていたとき “南関東を前線が通過しているので、今降っている雨はもうすぐ上がり、午後からは晴れるでしょう” とテレビの天気予報が言っていた。 佐知子と顔を見合わせて、それっと支度した。 今日は母のディサービスの日で、父の昼飯の用意だけしていけばなんとかなりそうだ。 * ディサービス→福祉施設などによる在宅老人の介護サービスのこと。
  しかしそれほど遠くには行けないし、それほどきつい山(歩行時間の長いコース)へも行けない。 “安・近・短”の山へしか行けないのだ。 だからといって高尾山のような人だらけの山は、今日の私達夫婦の感性にはそぐわない。 静かで落ち着いた山で、できれば富士山が近くによく見える山がいい。 しかも私達が今までに登ったことのない山…。
H21年12月・鳥ノ胸山の下山地付近から撮影
今倉山〜菜畑山
道志の谷から過日撮影
  そんな条件を満たす半日マイカー登山にうってつけの山、それが林道を行ける所まで行ってから往復登山の、道志の菜畑山だった。 じつは前々から、こんな状況の日に狙っていた“意中の山”でもある。 三省堂の山名事典には「なばたけやま」と仮名がふってあるが、ガイドブックや登山地図の一部では「なばたけうら」となっている。 「…やま」なのか「…うら」なのか、あるいはただの「なばたけ」なのか、この山の呼び名も謎が多そうだ。 本来ならば近くの今倉山や朝日山(赤鞍ヶ岳)などと併せて登る山だとは思うが…。

* 菜畑山の呼び名について: 谷有二氏の「山名の不思議(平凡社ライブラリー)」の該当項を要約すると次のようになる。
 『・・・この山梨県道志の菜畑山はナバタケウラと山の字をウラと読むのが正解である。 「万葉集」などによるとウラはものの末端という意味で、川や沢の末端・先端もウラになる。 木の梢をウラというのもここからきている。 菜畑山については、菜畑という沢の先端であるから菜畑ウラで、ウラは山頂にあたるから、山の字を置いてウラと読ませた。 ウラには浦・上・裏・山・峰などの字が当てられている。 例えば奥多摩の日向沢ノ峰、真名井沢ノ峰、雁掛ノ峰、丹沢山塊の檜洞丸の一名・本棚裏、埼玉県秩父の浦山、川浦谷、木曽御岳の一峰・三浦
(みうれ)山、…などなど。 海にあるべき浦の字が、山の中に見受けられるのも、末端(うら)に対する当て字が原因である。 海岸の浦も大洋の末端にあたるから、海のウラも山のウラも、元は同じだった可能性が強い。・・・』
 * 菜畑→村外れの意

霧が晴れてきた
林道から鳥ノ胸山を望む

左奥が菜畑山の登山口
林道終点(登山口)

3等三角点と東屋がある
菜畑山の山頂

ミズナラ、シデ類、モミジ類などの自然林
ミズナラ林を下る
  朝の天気予報に反してなかなか雨が降り止まない。 中央道の相模湖I.Cから閑静な国道413号線(道志みち)へ出てもまだ降っている。 ワイパーを作動させながら「道志みち」を30分も走った処が道志村の郵便局で、その少し先の曙橋から北(右)へ曲がる。 この頃からようやく雨は上がってきた。 車のバックミラーには、裏丹沢の鳥ノ胸山と思しき山影が霧の隙間から見えてきた。
  少し進むと、数名の飼育係の人たちに追われて数頭の大きなブタが、まるで羊飼いに追われる羊のように、前方をゆっくりと歩いていた。 この辺りは養豚場のようで、豚舎から豚舎へ小屋移動をしている場面にたまたま私達は出っ食わしたらしい。 青紫色の刻印をわき腹に捺されたブタたちは、とてもおとなしく、やさしそうな顔だちをしている。 暫く車を停めてそんな風景をフロントガラス越しに見ていた。
 「多分、ボクは、どんなことがあっても養豚場や屠殺場で働くことはないだろうと思う」 と独り言のように呟いたら、「だれかがやらなくちゃいけない神聖な職業よ。ワタシは、あのひとたちをエライと思う」 と助手席の佐知子が応答した。
  養豚場を過ぎると道はますます細く急になった。 1500ccの私達の小型自動車でぎりぎりくらいの狭さだ。 しかもこの菜畑山の林道は、舗装はされているけれど石ころなどが落ちていたりの悪路だ。 対向車がきたときにバックせざるを得ない場合を想定して、所々のたるんだ処(すれ違い可能な待避スペース)を憶えながら、慎重に運転した。
  しかし、この日この山へ入ったのは私達夫婦だけだったようだ。 すれ違う車はなく、曙橋の分岐から約15分で林道終点の駐車スペースについた。 4〜5台で満車になりそうなスペースだが、今日は私達の車だけだ。 思わずニンマリして、ゆっくりと支度して、歩き始めたのは午前11時30分頃だった。 登山口の右奥には電波塔が建っている。
  今回はこの林道終点から標高差にして約200mの往復で、歩行時間は正味1時間強の手抜き登山(足抜き登山?)だ。 アカマツ交じりのヒノキ林を抜けてから、ミズナラ主体の自然林を急登すると、あっという間の菜畑山山頂だった。 空が幾分明るくなり、時々は太陽も顔を出すのだが、開けている南面の丹沢の山々は霧の中で、富士山方面にも終始厚い雲がかかっていた。 寒冷前線通過後のカラッとした山岳風景を期待したのだが、これは残念だった。
  しかし北面はすっきりと晴れ上がって、樹林だったけれど、その隙間から御坂や大菩薩の山々などを望むことができた。 三ツ峠山の右奥には南アルプスの白峰たちもくっきりと見えている。 それが救いといえば救いだった。
  超軽登山の割には大きくて重たいザックから、コンロやコッフェルなどを出す。 静かな山頂の東屋で、肉と野菜をたっぷりと使って煮込んだ鍋の味は最高だった。 たらふく食べた肉は豚肉だったので、麓の養豚場で出逢ったおとなしいブタたちを思い出していた私達は、その話題(ブタが思いのほか可愛らしかったことやこの鍋の豚肉がとても美味しいということ)には触れないでいた。 ほとんど無風で、12月の割にはポカポカとしていたのはラッキーだったかもしれない。
  昼食後、きつくなった腹を抱えながら山頂付近の樹木を観察した。 この山稜(唐沢尾根)はブナ・ミズナラ林の予想だったが、ちょっと待てよ。 ミズナラは確かにミズナラだけれど、ブナの様子がちょっとおかしい。 茶褐色の枯れ葉を未練がましく梢に残している姿や尖がった冬芽はブナのようだけれど、樹形が株立状で、しかも樹皮がやや黒っぽい。 落ち葉を何枚か拾ってみると本ブナよりも少し薄い感じで、葉脈の数は13対前後だ。 本ブナならばその葉脈は7〜11対の筈だ。 私はそれを「ブナのセブン・イレブン」と憶えている。 う〜ん、ここにある“ブナ”の殆どはイヌブナに違いない、と結論づけた。 南西側の今倉山付近はブナ林だった記憶がある。 北側の朝日山(赤鞍ヶ岳)方面へ足を伸ばしても、その山稜には立派な本ブナの林があるらしいが…、それを確かめている時間は今回の私達にはない。(*
  「ここのはイヌブナだぞぉ〜!」 と大きな声で話しかけたら、東屋でデザートのリンゴを食べていた佐知子から 「だからなんなのぉ〜?」 と返事が返ってきた。 私はそれには答えなかったが、『だから…、ここは本ブナが生育するには気候が暖かすぎるんだよ。それに地形とか地質(土壌)の影響もあるかもしれないし…、ってことがなぜわからない』 と心の中でぶつぶつと云っていた。 足元には咲き終わったリンドウがドライフラワー状態になっている。
  それやこれやで、“安・近・短”で、しかも静かで落ち着いた菜畑山での素晴らしい半日を過ごした私達だった。 林道終点の駐車スペースに戻りついたのは午後2時半頃。 今までで最も歩行時間の短い私達の山旅だったかもしれない。

道志二十六夜山: H14年11月の拙山行記録です。
朝日山(赤鞍ヶ岳): この後(H26年8月)、登る機会を得ました。
[後日追記]

藤野やまなみ温泉 藤野やまなみ温泉: 中央自動車道・相模湖I.Cから菜畑山へ至る道筋には道志温泉「道志の湯」や道志川温泉「紅椿の湯」などの日帰り温泉施設があるが、今回の帰路に立ち寄ったのは相模湖I.Cに近いこの温泉施設だった。 ごく平均的な日帰り入浴施設で、内湯も外湯もその他の設備も特に不満は感じなかった。 泉質はナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉、アルカリ性・低張性温泉。 そのレベルは高そうだが、塩素臭がちょっと気になった。 3時間までの入浴料600円は納得のいく料金だ。
  「藤野やまなみ温泉」のHP

 * 道志温泉「道志の湯」: No.272菰釣山の頁 を参照してみてください。
 * 道志川温泉「紅椿の湯」: No.269鳥ノ胸山の頁 を参照してみてください。



ミズナラの純林を登る
霧が晴れて陽が射してきた ・ 菜畑山の山頂は近い!

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