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No.272 菰釣山(こもつるしやま・1379m)
平成22年2月21日 朝のうちは良い天気だったのだが・・・ マイカー利用

菰釣山 略図
西沢林道を往く
まず林道を進む

この辺りまではトレースがあったが・・・
ブナ沢を登る

いつの間にかササのヤブコギ
ササがうるさい

ひょいと小屋前へ出た
菰釣避難小屋へ到着

辺りはブナ・ミズナラ林
縦走路を進む

太目のブナが印象的
菰釣山山頂に到着

標識を直して記念撮影(証拠写真)
三角点を発見!


上りは「藪漕ぎ」、下りは「冒険の道」

《マイカー利用》 …中央自動車道・相模湖I.C-《車60分》-道志の森キャンプ場(駐車場)〜西沢の登山口(西沢林道終点)〜菰釣避難小屋〜菰釣山1379m〜菰釣山の三角点1348m〜菰釣避難小屋〜ブナ沢乗越〜西沢の登山口〜道志の森キャンプ場-《車15分》-道志の湯(入浴)-《車50分》-相模湖I.C… 【歩行時間: 4時間20分(雪道)】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  道志川の流れる大きな谷を挟んで御正体山1682mと対峙しているのが菰釣山(こもつるしやま・1379m)で、何れも独立峰的な容姿をしている。 北西側の御正体山は云わずと知れた道志山塊の盟主だが、南東側の菰釣山は丹沢山塊に属していて、その最西端の割と地味な存在でもある。 去年の12月に鳥ノ胸山1208mに登ったとき、その山頂から眺めた富士山は、右手の御正体山と左手の菰釣山に挟まれて「道志みち」の奥に聳えていた。 そのときの御正体山と菰釣山の様子は、まるで横綱の富士山を引き立たせる露払いと太刀持ちといった感じだった。 菰釣山は「関東百山(実業之日本社)」で知ったばかりの山だったが、御正体山に負けず劣らないその容量に少なからずびっくりもした。 山容のメリハリはいまひとつで、なんとなくドテッとした姿だが、「不器用な大男=山男」のイメージが私には好ましく思えた。 ブナの木が多いことから、山梨県側では「ブナの丸」とも呼ばれているそうだ。

  じつは、私達夫婦は1週間前に菰釣山の麓まで行って、予想以上の降雪やガスのために登山を断念している。 今回はそのリベンジ戦なのだ。 だから中央高速道の相模湖I.Cから約1時間の「道志の森キャンプ場」までは経験済みのアクセスだった。 道志川に沿って谷間の山里を縫うように走るこの「道志みち=国道413号線」は、何時走っても、渋滞もなく心和む好ロケーションだ。
  午前8時30分頃、閑散とした「道志の森キャンプ場」の駐車場から歩き出そうとしたら、犬と散歩をしている地元の中年男性が近づいてきた。 これ幸いと、駐車料金の支払い方法についてなど訊ねてみた。 すると品のよい優しそうな中年男性は 「500円の駐車料金は管理棟へ行って支払うのですが、今は誰もいませんよ」 と云ってから 「菰釣山ですね。アイゼンはもってきましたか?」 と聞いてきた。 「ザックに入っています!」 と元気よく答えると 「まぁ、そのままとりあえず登山しなさい。運がよければ駐車料金を払わなくて済むかもしれないですよ。アハハハ…」 と笑って云った。 私達も笑い返して、お礼を云って中年男性とすれ違った。 その犬連れの中年男性が、この日この山で出会った唯一の人間だったとは、そのときの私達には知る由もない。
  駐車場の少し先を左へ進むと三ヶ瀬(さがせ)川源流の東沢で、そちらは鳥ノ胸山や城ヶ尾山の登山口方向だが、今回はその分岐を右へ進み、西沢に沿った林道をなだらかに登る。 机上の計画では、とりあえず菰釣山に直接アタックして、時間を見て余裕があるようなら城ヶ尾峠経由の縦走・周回コースを進もうと目論んでいた。 …しかし徐々に積雪が深くなってきた。 凍結箇所も所々に出てきて気は抜けない。 自慢にはならないが、林道などの平坦なアイスバーンで滑って転んで痛い思いをした経験が私達にはたくさんある。 で、どうしても腰が引けてしまい、ゆっくりとしか歩けないのだ。 水は低いほうへ流れるとか…、こうなると私達夫婦は意見がよく合う。 すでにこの時点で周回コースはあきらめて、「往復登山にしましょう!」 ということになった。
  「京急百貨店・はぐくみの森」と書かれた看板のある分岐を左折すると車止めのクサリが張ってある。 そこから10分も進むと道は大きく左へカーブして小さな沢(ブナ沢)を渡る。 歩き始めてから小1時間、2度目の車止めを跨ぐとその右側が菰釣山登山口だった。 「林野庁認定・水源の森百選」とか「西沢林道終点」とかの標柱も乱立する、静かだけれどにぎやかな登山口だ。 そこで休憩を兼ねて6本爪の軽アイゼンを装着する。 久しぶりのアイゼンなので、佐知子も私もちょっと手間取った。 積雪量は約20cmといったところだろうか。
  とっつきの急な丸太階段や所々の凍結気味の箇所ではアイゼンがサクサクと気持ちよく効くのだが、ふわふわした雪を歩くとそれがアイゼンの底にくっついて団子状になってしまい、大変歩きづらい。 ストックの先で靴底を叩いて団子雪を払いながら、ブナ沢の左岸へ渡り、なおひたすら登る。 スギ・ヒノキの人工林は最初の少しだけで、ずっと続くミズナラ、ブナ、リョウブなどの落葉広葉樹林(当地の自然林)が明るくて、とても気分がいい。
  若干の踏み跡(トレース)があったので、それを頼りに登っていたのだが、なんかおかしい。 いつの間にか沢筋を外れて尾根筋を歩いている。 おまけにササ(スズタケ)がうるさくて、ほとんどヤブコギ状態になってきた。 足を止めて、地形図とコンパスを取り出して、緊急夫婦会議だ。 辺りの地形などから察すると、方向はほぼ正しいものの、矢張り正規の登山道ではないようだ。 まぁしかし踏み跡があるのだから、とりあえず進んでみようか、ということになった。
  ササの茎をホールドにして漕ぐように進んでいたら、ひょいと開けた主稜線へ出て、そこが菰釣避難小屋の前だったのには驚いてホッとした。 どうやらブナ沢(登山道)の西側の枝尾根を進んでしまったようだ。 まぁ、結果オーライで、こぎれいな避難小屋の土間を借りて、そこで早めの昼食にした。
  快適な菰釣避難小屋でのんびりしていたら、明るかった空が薄暗くなってきた。 天気は下り坂で、雲量が多くなってきたようだ。 慌てて菰釣山山頂を目指して最後の1ピッチを歩き出す。 城ヶ尾峠方面から中ノ丸や菰釣山を経由して山伏峠方面へ続くこの甲相国境の尾根道は、「東海自然歩道」の一部にもなっている立派な山道だ。 辺り一面はブナ・ミズナラの自然林で、林床の主はスズタケだ。 標高が上がるに従ってブナの割合が増えてくる。 それら冬枯れの木々に張り付いた雪模様(エビの尻尾もどき)が芸術的な美しさだ。
  間もなくすると、木のベンチや山頂標識や諸々の案内板や気象観測装置などがごしゃごしゃしている菰釣山の山頂が、前方に見えてきた。 この山は登山口も山頂もにぎやかだ。
  しかし残念。 その菰釣山の山頂からは、西側に大きく見えるはずの富士山は厚い雲の中だった。 近くの道志や丹沢の山々が、部分的にぼんやりと樹林の隙間から見えている。
  暫く休憩してから、気を取り直して、山頂から離れた処にある三角点を確認するために、その南側の踏み跡を辿ってササの藪を漕いでみた。 標高差にして約30m、時間にして7〜8分ほども下るとその踏み跡が消えてしまい、少しあせった。 この踏み跡の先達者は、多分、三角点の標石を発見することなくここで引き返したようだった。 しかし私達はラッキーだった。 試しにその少し左側を進んでみると、細身の木々に囲まれた展望のない小空間に、裏返って樹幹から外れ落ちている「菰釣山・三等三角点」と手書きされた標識を発見した。 その付近のそれと思しき処の雪を払うと、ヤッター! 三角点標石1348.18mの頭が出てきた。 だからなんなの、というほどのことではあるのだが、それを発見したことに私達は狂喜して満足した。 標識の応急修理をして(持ち上げて向きを直して)から記念写真を撮って、そして早々に踵を返した。
  菰釣山からの下りのルートは正規の登山道を辿ろう、と、登ってきた左方の笹薮を横目で見て、菰釣避難小屋前を直進する。 しかし、そこから少し進んだ分岐(ブナ沢乗越)で、暫し唖然とした。 前に続く城ヶ尾峠方面への縦走路にはいくつもの踏み跡があるのだが、そこから左折してブナ沢を下る方向にはまったく踏み跡が無い。
  「なんとなく道の形があるので…、冒険してみよう!」 と私は男らしくきっぱりと云った。 佐知子はしぶしぶ私の後からついてくる。
  ゆっくりと恐々と、ストックで行く手の雪上を突いて足場を確認しながら、大きくジグザグとブナ沢に沿って下る。 …しかしこれもラッキーなことに、(軟弱で根性なしの私達にとっては)冒険の下山路は、そう長くは続かなかった。 暫くすると、上りに歩いた私達自身の踏み跡が左手の尾根筋から合流してきて、私も佐知子もホッと胸を撫で下ろすのだった。
  「道志の森キャンプ場」の駐車場に戻りついたのは午後2時30分頃だった。 私達の車はしーんとして停まっていた。
  「払いたくても払えないなんて、駐車料金の徴収方法に工夫が必要ね、この有料駐車場は」 と佐知子が靴を履き替えながら云っている。 どうやら、今朝の中年の散歩男性の予想通り、駐車料金の500円は支払わないことになりそうだ…。

* 菰釣山の山名について: 「こもつるし…」とは変わった山名だが、日本山名事典(三省堂)の該当項によると 『天保年間(1830〜44)、甲斐と相模の国境争いのとき、平野(甲斐側)の明主長田勝之進が山頂に菰を吊るして生活し、ここで境界を測定したことからこの名がついた』 とある。 「ブナの丸」の別名があることは本文でも書いたが、山容が丸みをおびていることから「大丸尾」と呼ぶこともあるそうだ。
  山名の由来について、ガイドブックの一部には 『戦国時代、武田信玄が小田原北条氏を攻めた際、この山頂に菰(ムシロ)を掲げ合図に用いたことから…』 とも書かれてある。 これも諸説あるらしい。


道志の湯 道志温泉「道志の湯」: 道志川の支流、室久保川の渓流沿いに位置する村営の日帰り入浴施設。 菰釣山や鳥ノ胸山の登山口にも近い「道の駅・どうし」からは車で10分足らずの距離。 “ちょっとローカルな雰囲気”がなかなか良い。 泉質はカルシウム・ナトリウム硫酸塩泉。加熱、一部循環。殆ど無色透明無味無臭。 大きな窓ガラスの内湯や東屋風の露天岩風呂には御影石を配し、何れからも対岸の美しいアカマツ林が望める。 髪用のシャンプーは無いがボディシャンプーでこと足りる。 入浴料は2時間まで500円。 休憩室や売店、食堂もある。 横浜市との友好都市関係により、横浜市民には料金優待制度があるようだ。
  裏丹沢や道志などへの山行後の入浴には、近くに民営の道志川温泉「紅椿の湯」もあるが、どちらを選ぶのかはちょっと悩ましい。 昨年末の鳥ノ胸山登山の際には「紅椿の湯」を利用したので、今回は「道志の湯」に立ち寄ってみたのだが、僭越ながら、総合的な評価は同レベルだと感じた。



立派なブナがまだ残っていた!
菰釣山の山稜(ブナ林)にて

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