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No.273 伊予ヶ岳337m
平成22年(2010年)3月19日 殆ど高曇り多少は晴れ間もあった マイカー利用

伊予ヶ岳 略図
天神社の頭上に伊予ヶ岳:右下は狛犬です
登山口の天神郷

シイ、カシなどの自然林です
まず、照葉樹林を登る

平群の里が眼下に広がる
クサリ場を登り切ると…

バックは富山
南峰の山頂にて

2等三角点がある
北峰の山頂

小さな石鎚山みたい・・・
北峰より南峰を望む
石鎚山に似ているかも…


ちょっとスリル! 展望の軽ハイキング

《マイカー利用》 …東京湾アクアライン…富津館山道路・鋸南富山I.C-《車20分》-平群・天神郷(登山者用駐車場)〜富山分岐〜見晴台〜伊予ヶ岳・南峰〜北峰[往復] 【歩行時間: 1時間40分】
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


  昨年の初夏、森田健作氏が千葉県の知事に当選したおかげで「東京湾アクアライン」が随分と使いやすくなった。 普通車で3,000円していた通行料が平日でも800円になったのだ。 この料金引下げはETC車を対象とした期間限定(H21/08/01〜H23/03/31)の社会実験、とのことだが、低所得の我が身にとっては有り難いことだ。 東京都大田区の自宅からは遠いと感じていた南房総が益々近くに感じられるようになったのも、とても嬉しい。
  という訳で、のっけから少しセコイ話になってしまったが、今回のターゲットは今まで行きそびれてしまっていた伊予ヶ岳だ。 房総のマッターホルンとも安房妙義とも呼ばれる、千葉県で唯一その山名に「岳」のついた、“房総屈指の”岩山である。

  いつもの時間に自宅で朝食を摂ってから、ゆっくりと出発する。 朝のラッシュで車の量は多いが、なんとか渋滞を避けて、東京湾アクアラインを東へ快調に走る。 助手席では妻の佐知子が 「♪青春の勲章は〜♪くじけない心だと〜♪知った今日であるなら〜♪さらば涙と言おう…♪…」 などとご機嫌に口ずさんでいる。
  川崎側から木更津側へ東京湾のど真ん中を潜って横切り、そのまま富津館山道路へ進み、鋸南富山I.Cで降りる。 町々の庭先には純白のハクモクレンが満開で、街の外れの畑には菜の花が一面に咲いている。 一般道を約20分、富山(とみさん)やお目当ての伊予ヶ岳が間近に見え始めて間もなく、カーナビの目的地に設定してある平群(へぐり)小学校前に着いた。 その小学校と平群民族資料館に挟まれた処にあるのが平群天神社で、鳥居をくぐって“登山者用駐車場”に車を停める。 ここが伊予ヶ岳の登山口になっているのだ。
  天神社の境内はこじんまりとしていて、狛犬の傍にある樹齢1000年という2本のクスノキが立派だ。 社の頭上には伊予ヶ岳の尖がった山頂部が顔を覗かせている。 伊予ヶ岳の山名は伊予の国(愛媛県)の石鎚山(いしづちさん・1982m)に由来するというが、この景色…、成就社の境内から眺めた石鎚山の景観と似ていなくもない。 スケールは大分見劣りするが…。
  案内図や様々な解説板にざっと目を通してから、歩き始めたのは午前10時10分頃だった。 日の当たる足元にはカントウタンポポやタチツボスミレが咲いている。
  天神社の左奥、平群小学校との境を進み、まずは素敵な竹林(マダケ)を通過する。 それからスギ林を少し登るとスダジイ、アラカシ、タブノキなどの照葉樹林(常緑広葉樹林)になる。 森の脇役(中・低木層)はヤブニッケイ、シロダモ、トベラ、マサキ、カクレミノ、アオキなどで、それらに落葉広葉樹のコナラとクヌギや針葉樹のイヌガヤの幼木などが少し混じる。 かなり“自然”な林相だ。 道端にはマムシグサが群落して咲いている。
  富山方面へ向かう道を左に分けると、間もなく東屋やベンチがある展望の開けた箇所(見晴台)へ出る。 ここからは富山(とみやま)三山が近くによく見える。 つまり、北の方向にこれから向かう伊予ヶ岳の山頂部がチラッと見え、西の方向には富山(とみさん)、東の方向には御殿山が、それぞれかっこよく見えているのだ。 しかしこれは山頂からの絶景に比べたらほんの序の口だった。
  樹木が低く少なくなってきた。 展望を楽しみながら、足元に注意して、ロープやクサリのついた岩っぽい急斜面を登る。 岩質は房総丘陵おなじみの砂岩とか泥岩などの堆積岩のようだ。 休み休みゆっくりと登ったのだが、それでもあっけなく伊予ヶ岳の山頂(南峰)についてしまった。 なんか、全然物足りない。 汗も未だ殆どかいていない。
  しかし山頂からの一点360度の展望は秀逸だった。 富士山が見えるほどのすっきりとした空模様ではなかったが、房総の低い山並みはばっちり望むことができた。 鉄パイプや鎖でガードされている突き出た岩上へ、佐知子と代わる代わる進み出て、遠くの小さな山まで指差し確認して山座同定を楽しんだ。 付近ではモミジイチゴが可憐な花を下向きにつけていて、足元にはベンケイソウの仲間(キリンソウかも)が可愛らしい緑の芽吹きを見せていた。 麓の集落などはまるで箱庭のように見えるし、この山頂部はかなり神秘的な空間だ。 ここに昔は天狗が住んでいたというけれど、もしかしたら今も住んでいるかもしれないね、などと私達は話し合った。
  ちょうどそんなとき、どこからか大勢の子供たちの「ヤッホー!」という声が聞こえてきた。 今どきの子供のヤッホー!なんてめずらしい、と思いながら辺りをきょろきょろしてみたら、「ほら、あそこ!」 と眼下を指差して、そちらへ向かって佐知子が手を振っている。 私も突き出た岩の先端へ出て覗き込んだら、平群小学校の児童たちだろうか、途中の展望台からこちらを見上げて盛んに手を振っている。 私も笑顔で手を振って、心の温もりを感じた。 最近の山では中高年の「ヤッホー!」でさえめったに耳にしない。 中高年のそれはさておいて、子供たちが声をふりしぼった「ヤッホー!」は本当に心地よいものだ。
  その南峰から、咲き始めたヤマザクラの花を楽しみながら、僅か4〜5分を下って登り返すと、そこが2等三角点のある北峰の山頂だった。 こちらのほうが南峰よりも数メートルほど背は高いようで、狭い山頂だが、負けず劣らずの大展望だ。 ここでもたっぷりと時間をかけて休憩して、それから徐に踵を返す。

  下山時にすれ違ったスーツにネクタイ姿の青年。 脱いだ上着を片手に、通勤靴で、物凄いスピードで登っていった。 暫くすると、山頂を極めたその青年が後方から引き返してきた。 追い越されるとき、「早いですねえ〜」 と話しかけたら、彼はニコッと笑って 「昼休みを利用しているもので…」 と返事をしながら、これまた物凄いスピードで下っていった。 よっぽど山が好きで、よっぽど“時間”の無い人だったんだろうと思った。 山頂で「ヤッホー!」と声を掛け合った子供たちは中腹の展望台から引き返していたので、このネクタイ姿の青年が、この日この山ですれ違った唯一のハイカーだった。
  それやこれやで天神郷の駐車場に下山したのは12時50分頃だった。 “昼飯前”だったので、帰路に予定している保田漁港「ばんや」での食事と入浴が楽しみだ。

* 補足: 男性的な山容の伊予ヶ岳は、いかにも天狗が住んでいそうな魅力的な山で、山頂部からの展望も申し分ないが、如何せんその絶対量が小さすぎると思う。 富山や御殿山などと併せて登るか、南房観光のついでに登るか、はたまた私達のように旨い魚貝類を食べる目的と併せるか…、そうするとボリューム的には丁度いいかもしれない。
  伊予ヶ岳は、何れにしても、登ってみてよかったと思う素晴らしい山であることに間違いはない。


素朴な表構えの「ばんやの湯」 「ばんやの湯」: 鋸南町の保田漁港にある入浴施設(入浴料500円)。 宿泊もできるようだ。 内湯のみだが、タイル貼りの明るい浴室だ。 風呂はラムネの味がする「炭酸温泉」と「カジメ(海藻)湯」の2種類で、そう、何れも人工的な「温泉」だ。 天然温泉のみを紹介してきた当サイト(私達の山旅日記)のポリシーに反するのだが、何故あえて掲載したかというと、云うまでもなく、隣接する「お食事処・ばんや」の豪快な魚料理がめちゃくちゃ旨かったからだ。
  おなかの空いていた私達は入浴よりもまず食事をしたのだが、それは予想以上のファンタスティックな料理だった。 ヒラメやイワシなどの刺身は何を食べても新鮮で美味しくて、アオヤギのかき揚げ(680円)などは一人前を二人でも食べきれないくらいの量で、しかもパリッとしてメチャウマだった。 隣の席でオジサン達が食べていた金目の煮付けや太刀魚の焼き物なども、喉から手が出るほど旨そうだった。 …と、きりが無いのでこれくらいにしておくが、「ばんや」が繁盛している理由がよくわかった。 保田漁協の直営店だけのことはあると思う。

* 美味しい魚料理をたらふく食べて、“ラムネ温泉”にも浸かって、気分よく帰路の運転をしていたのだが、夕方の東京湾アクアラインは矢張り渋滞していた。 通行料が安くなったのに反比例して渋滞が酷くなったようだ。 温暖化ガス25%削減の問題といい、さてもさて、喜んだらいいのか困ったらいいのか、私の心境は複雑である。



伊予ヶ岳山頂からの展望(南面)
左端に御殿山・右端に富山
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富山側の登山口から撮影
伊予ヶ岳(左が北峰・右が南峰)
麒麟草:ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草
キリンソウ(?)の芽生え(伊予ヶ岳山頂部)

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