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No.271 赤雪山から仙人ヶ岳
平成22年(2010年)1月27日 快晴 マイカー利用

赤雪山・仙人ヶ岳 略図
この奥が登山口になっている
松田川ダムの大駐車場

丸太階段が続く
スギ林を登る

東屋と三角点がある
赤雪山の山頂

ミズナラとアカマツの縦走路
前方に仙人ヶ岳

ここで休憩した
石祠のあるピーク

そこそこの展望が楽しめる
仙人ヶ岳の山頂

小さくてひっそりとした松田湖
松田川ダム


“あぁ勘違い”のヒヤリ・ハット

《マイカー利用》 東北自動車道・館林I.C-《車75分》-松田川ダム(赤雪沢)駐車場〜名草分岐〜赤雪山621m〜585m峰〜623m峰〜仙人ヶ岳663m…(熊の分岐方面往復:ロスタイム70分)…野山林道終点〜駐車場-《車30分》-佐野やすらぎの湯(入浴)-《車25分》-佐野藤岡I.C 【歩行時間: 5時間30分(道迷いによるロスタイムを含む)
 → 地理院地図(電子国土Web)の該当ページへ


 凡そ日光の南側から関東平野の北側までの山々は、その山地名の呼び方が少々ややこしい。「足尾山地」と「足尾山塊」は、じつは同義語ではないらしい。足尾山地は古峰ヶ原根本山鳴神山などの渡良瀬川東岸の山々を指し、足尾山塊は皇海山袈裟丸山などの渡良瀬川西岸の山々を指すという。しかし、そのすべてを含めて足尾山地としているサイトもあったりする。なおややこしいのは、足尾山地は、その北部(粕尾峠以北?)を「前日光山地」、南部を「安蘇山地」と呼んだりすることもある、ということである。
 だから、赤雪山と仙人ヶ岳の位置を紹介するのにのっけから苦心した。今も苦心している…。で結局、次のように紹介することにした。

 赤雪山(あかゆきやま)と仙人ヶ岳は安蘇(あそ)山地の南部、栃木県の足利市・佐野市と群馬県の桐生市との境界付近の山で、標高が低い割には奥深い山である。何れも栃木百名山(下野新聞社)に選ばれていて、仙人ヶ岳は関東百山(実業之日本社)の一峰でもある。
 ⇒ …う〜ん、いかにもガイドブック的だなあ…。(^^ゞ

 未明に東京の自宅を出て、暁(あかつき)の首都高から曙(あけぼの)の東北自動車道へ入る。やがて前方に朝日を浴びた男体山の金字塔が見え出すと、私達夫婦はいつもウキウキして、都会の喧騒バージョンから山の爽快バージョンに心が入れ替わる。
 羽生PAで安くて旨い“朝定”を食べて一休みしてから、さらに北進する。利根川を渡って間もなく、カーナビに導かれて館林I.Cで降りる。 「ひとつ先の佐野藤岡インターからのほうが早いんじゃないかしら」 と助手席の佐知子が云っている。 「今日は平日だから…、カーナビは高速料金の節約をしたのかなぁ…」 と私が返事をする。
 足利市街の南側を回り込むように進み、渡良瀬川を渡ってその東岸へ出る。前方に石尊山などの低い山並みが近づいてくる。やがて道は細く静かになって、なだらかな谷間をくねくねと上るようになる。
 館林I.Cからは約75分間の運転で松田川ダム(*)の大駐車場(赤雪沢駐車場)に着いた。奥の登山口に設置してある案内図や赤雪山の謂れ(*)が書いてある解説板にざっと目を通してから、おもむろに準備して、歩き始めたのは8時30分頃だった。
* この翌年(2011年3月)に北関東自動車道の(宇都宮〜高崎間の)全線が開通し、赤雪山の登山口のある松田川ダム駐車場までは足利I.Cで降りるのが最も早くなりました。(後日追記)

 今回の周回コースの山行は、じつは、当サイトBBS(掲示板)常連のSKさんの投稿に刺激されたもので、「赤雪山→仙人ヶ岳の左回りのコースのほうが林道を下りに使えて良いと思う」 というアドバイスに従ったコース取りだった。松田川ダムからまず赤雪山へ登るわけだが、そのルートは二つあるようだ。そのひとつは大駐車場から少し下って、湖畔に沿った登山口から山頂へ直接登る尾根コースだ。わずかな距離とはいえ、来た道をいったん下るのもシャクなので、なるべく楽をしたい私達は大駐車場の奥(北側)からの赤雪沢コースを選んだ。そのコースタイムなどは、どちらもそれほど差はないようだが…。
 まずスギ→ヒノキ、と植林地帯を登る。すぐに身体が温まってきて手袋とセーターを脱ぐ。「せせらぎの滝」と書かれた案内板が立っていたので足を止めて、「どれがそれ?」 と辺りを見回した。それが目の前の落差1メートルほどの“滑滝”のことだと気付くまでに暫し時間がかかった。少し先にも「蛇尾の滝」という看板が出ていたが、これも同じように貧弱な滝だった。 「こういうのって、滝じゃなくてただの水流で、それこそ“せせらぎ”よね」 と佐知子は手厳しい。あえて“滝”の名を付けたのには、なにか特別な謂れでもあるのだろうか。
 やがて間もなく稜線へ出て、長石林道(白坂峠)や名草巨石群方面への山道を右に分ける。周囲はいつの間にかミズナラ、アカマツ、ヤマザクラ、リョウブなどの天然林へ移行している。
 丸太階段を上り詰めると、登山口から1時間足らずで、立派な東屋と三等三角点のある赤雪山621mの山頂だった。南・東面が開けていて関東平野へ続く低い山並みが一望でき、その左手奥には双耳峰の筑波山がはっきりと見て取れる。西北西の赤城山が近く、北面には足利山塊や足利山地の山々などが冬枯れの木々の隙間から見え隠れしている。スッキリとした典型的な冬型のお天気に感謝感激!
 西に優しく聳える仙人ヶ岳へ向かって馬蹄形に尾根道を進む。ミズナラやアカマツに交じりネジキやマンサクも姿を見せている。国土地理院の地形図上には山名注記の無い585m峰や石祠のあるピークなどで小休止。岩っぽい処もあるが道はしっかりしている。おまけに立派な道標がちょくちょくあるので道迷いの心配はなさそうだ。南西の彼方には、なんと富士山もぼんやりと見えている。しかし急坂のアップダウンで、気は抜けない。
 栃木県の佐野市と足利市の市境尾根を西へ進み、623m峰(通称・三角山)で左折して、群馬県桐生市と栃木県足利市の県境尾根を南下する。小ピークは少なくとも10以上は越えただろうか。松田川ダム(野山林道方面)へ下る道を左に確認して、いよいよ最後の急登だ。
 分岐のあるなだらかな東峰を経て、双耳峰の仙人ヶ岳の山頂(西峰663m)へ着いたのは12時30分頃だった。ここで初めて2組5人のハイカーに出会った。何れも南側から登ってきた往復登山組のようだった。
 “県境に聳える”仙人ヶ岳の山頂には三等三角点の標石があり、ミズナラやリョウブなどの樹林がそれを囲んでいる。しかしそれらの樹木の間隔が疎で、今が冬枯れということもあり、そこそこに展望を楽しめるのが嬉しい。北面には男体山は勿論、日光白根山や袈裟丸山などもチラチラと見えている。東西に長細い山頂部の西端まで行ってみて、前仙人ヶ岳へ続く山道の確認などもしてみた。その山稜には特にマンサク(*)が多いらしい。

 さて、ここから松田川ダムへ下るルートで私達は道に迷ってしまい、約70分間のタイムロスをしてしまうのだ。その直接の原因は私の大勘違いで、遠因は登山道の書かれていない2万5千図にあった。
 赤雪山や仙人ヶ岳の登山道は割と最近整備されたものらしく、国土地理院の地形図(2万5千図など)にはそれを示す破線の殆どが記されていない。当地のガイドブックも登山地図も購入していない私達が持参したのは、今回の周遊ルートを手書きした2万5千図のコピーだけだった。つまり、仙人ヶ岳の東峰から派生している岩切や猪子峠方面への登山道の存在を、恥ずかしながら全く知らなかったのだ。東峰の道標に「仙人ヶ岳登山口」とだけ書いてあったので、てっきりそれは松田川ダムへ下る道だと私は思い込んでしまった。すこし先の往路(東側の坂下)に分岐があって、小さな道標には「松田川ダム方面・野山林道へ20分」と記されていたことに疑問を感じた佐知子が不服そうな顔をしていたが、南東方向へ続いている道を松田川ダム方面への道だと疑わない私は 「絶対これで大丈夫!」 と自信たっぷりだった。しかしそれはある意味では正しかったのだが、やはり間違っていたのだ。自信過剰はよくない。野山林道へ出る山道は、じつはいったん北東へ向かうのだ。それを地形図で確認して知っていた筈なのに、ほんとうに、私は全く勘違いをしていた。自信をもって間違えてしまったのだ。
 沢を下るはずなのに尾根をアップダウンしている。変だなぁと思いながらもずいぶんと下った。「熊の分岐」の道標が出てきても、このコースを知らない私にはここが何処なのか分からない。少し不安になったが、そのうち沢へ下るだろうと思って、とりあえず左の尾根道を真っ直ぐに進む。何度も取り出して見ているコンパスをここでもまたチェックする。 「うん! ずっと南東方向だ。間違いない!」 と云ってから 「えっ?」 と振り返って、佐知子と目が合った。 「南東方向…? うっそ〜、北東へ下るのよ!」
 分かっていて方向を勘違いすることもあるんだなぁ、と思った。予定の方向とは90度違う南側の、しかも尾根道を私達は進んでいる。 「とにかく戻りましょう!」 「うん、そうだ!戻ろう!」 と声を掛け合って、私達はふりだし(東峰の分岐)まで戻り、来た道の急坂を下って、右折して正しい沢道を下った。下山後に分かったことだが、私達が引き返した地点のすぐ先(561m峰=知の岳?)に松田川ダムのキャンプ場方面へ下る分岐があったらしい。時間が余るくらいにあったからよかったものの、これも道迷いにおけるヒヤリ・ハットの貴重な経験になった。

 稜線の分岐からは標高差にして200mくらいの沢筋の急坂を下った。あっという間にアスファルト(野山林道終点)へドスンと降りて、それからはだらだらとした林道歩きが約1時間。本日の反省をしたりダム湖を眺めたりしながら、のんびりと歩いた。なるほどこの林道歩きは下りに使ったほうがいいと思った。情報提供していただいたSKさんに感謝!
 赤雪沢駐車場へ戻りついたのは午後3時40分頃で、道迷いをした割にはほどよい下山時間だった。まったく、余裕の登山計画というのは、なにかにつけていいものだと思った。負け惜しみで云う訳じゃないが、タイムロスのおかげでちょうど適量の日帰り登山になったのかもしれない。帰路に、予定の日帰り温泉施設へ立ち寄ることもできそうだ。

* 松田川ダム: 1995年に竣工した、栃木県が管理している多目的ダム。“無目的ダム”と陰口する人もいるようだが…。

* 赤雪山の山名由来: (平安末期、妻と不義をしたと思い込んだ)足利義兼の怒りを買った足利又太郎忠綱はこの山中に逃亡した。しかし、雪のため足跡が残っており追っ手に見つかってしまった。従者をはじめ忠綱らは多数の矢傷を負い、白雪を血で染めた。このことから当時名の無かったこの山を「赤雪山」としたという。土地の人は「あけき山」と呼んでいるそうだ。[登山口の解説文を要約]
 なお、足利義兼の妻とは北条時子のことで、あの北条政子の妹にあたる。「足利の蛭子伝説」の一部でもあるこの物語に、興味は尽きない…。

森林インストラクターのTamuです
* マンサク: マンサク科の落葉低木または高木。マンサクはこのコースのセールスポイントでもあるらしい。「まず咲く」からマンサクなんだそうだが、リボン状の黄色い(切り干し大根のような)花を咲かせるのはまだ先のようだった。今はただじっとして、冬芽をつけて春の訪れを待っていた。植物図鑑(日本の野生植物・平凡社)によると分布は関東西部以西とあるが、もしかしたら、日光周辺からこの足尾山地にかけて自生しているマンサクは、その北限(東限?)のものかもしれない。

佐野やすらぎの湯: 赤雪山・仙人ヶ岳登山の帰路に立ち寄るのに便利な日帰り入浴施設は、嬉しいことに迷うほどたくさんある。群馬県側には桐生市の「桐生温泉・湯らら」、太田市の「太田コロナワールド・コロナの湯」、「太田市新田福祉総合センター・ユーランド新田」、「天然温泉・太田安眠の湯」、みどり市の「みどり市温泉施設・かたくりの湯」などがあり、栃木県側には足利市の「足利鹿島園温泉」や、今回私達が立ち寄った佐野市の「佐野やすらぎの湯」などがある。接近して立地するこれらの温泉入浴施設は何れも総合レジャーランド的というかスーパー銭湯的というか、の大規模なもので、それぞれがそれなりに繁盛しているらしい。競争原理が働いているのか、入浴料金がどこも比較的安価というのが面白い。近年、各地方に続々とオープンしている近代的入浴施設群の典型だと思う。
佐野やすらぎの湯 平成9年に開業したという「佐野やすらぎの湯」も大浴場や日替り湯やサウナなどの立派な設備が整っている。「美人の湯」と命名された広い露天風呂は天然温泉(那須馬頭温泉)とのことで、泉質はアルカリ性低張性高温泉。無色透明無味無臭。若干のヌルヌル感があった。湯船から湯が溢れている「つぼ湯」もなかなか良かった。入浴料は時間制限なしで450円。私達は食事と館内着やタオルがセットになったコースで、一人880円だった。これは全く割安だと思った。佐知子は佐野ラーメン、私はソースとんかつ丼だったが、どちらも美味しかった。なおセット料金については土日祝は100円増しになる。佐野藤岡I.Cまでは車で約25分だった。小山市や前橋市にもチェーン店があるそうだ。
* 「桐生温泉・湯らら」については「根本山」の頁を参照してみてください。



落ち葉のほとんどはミズナラ
もうすぐ仙人ヶ岳の山頂だ!
右奥に奥白根山・・・わかるかなぁ・・・
仙人ヶ岳の山頂から袈裟丸山を望む
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